政府の環太平洋経済連携協定(TPP)対策本部は、ブルネイで22日から始まる第19回目のTPP交渉会合において、コメなど「重要5項目」を例外と主張することを、見送る方向で調整に入った。具体的な名前を出さずに、10年以内に関税を無くす品目の割合を示す「自由化率」だけを提案するという。
どうやら、交渉初期の段階で具体的な名前を出すと、交渉が難しくなるとの考えからのようだ。NHKは、TPP交渉では、参加した国が関税を撤廃する品目を相互に開示しなくては、他国のリストを見ることができないと報じており、今後いつ、日本がリストを公開するのかにも注目が集まりそうだ。
47ニュースによると、各国は4段階に分けて相互に品目を開示し、交渉を行うとされる。日本は参加が遅かったこともあり、項目の表示は9月中頃まで猶予が認められるというが、全体としては、9月20日までに全品目の95%を関税撤廃の議論のテーブルに載せ、10月の基本合意に向けて交渉を加速したい考えとのことだ。
一口にコメといっても、関税分類上では「玄米」や「もみ」など細かく分かれており、それぞれの品目ごとに関税率も異なる。これらの、細かく分類された品目のことを『タリフライン(tariff line)』と呼ぶ。重要5項目をタリフラインに換算すると約580品目で、全品目に占める割合は約6.5%となる。(日本関税協会のwebタリフ・ベータ版はこちら)
TPPは「高い自由化率を目指す」としているが、この自由化率は90%後半とも言われており、日本が交渉でどのような提案をするのかに関心が集まる。
しかし、交渉の内容は秘密裏に行われ、日本がどのような条件を提示したかは開示されないと言われている。
朝日新聞デジタルは今後の日本の動きについて、下記のように報じている。
次回会合では9千品目について、(1)関税を即時撤廃する品目(2)一定期間をかけて撤廃する品目(3)扱いについて示さない「留保」とする品目、の3種類に分けて交渉にのぞむ。
関税を守る「聖域」扱いを与党が求めている「重要5項目(コメ、牛・豚肉、乳製品、麦、砂糖の原料)」の586品目は、日本が過去に関税撤廃したことがない鉱工業品などとともに「留保」とし、態度を表明しない方向だ。
(朝日新聞デジタル「コメなど重要5項目、態度留保へ TPPで日本政府方針」より。 2013/08/04 08:26)
日本以外にも、自国の製品を守りたい国はある。日本の重要5項目は、例えばアメリカにとっての砂糖や自動車であり、カナダにとっては乳製品である。これらのセンシティビティーは、これまでは基本的に2国間で議論を続けているが、9月20日にこれらの議論の内容が開示され、多国間協議に移るとされる。
日本は第18回目のTPP交渉会合の後、25日にマレーシアのナジブ首相、26日にはシンガポールのリー首相、そして、27日にはフィリピンのアキノ大統領と安倍首相がそれぞれ会談を行なっている。7日には、アメリカ通商代表部(USTR)のカトラー次席代表代行が訪日し、TPP交渉と並行して日米2国間の貿易問題を協議するという。
秘密裏に交渉が行われることもあり、日本が今後どのように交渉するのかがわかりにくい。加えて、ここまで述べた重要5項目については、TPP交渉の21分野の中でも、「市場アクセス分野」の1分野だけにすぎず、更に別の分野の交渉もある。
なお、TPP政府対策本部の資料と、外務省経済局の資料によると、現在日本が各国と結んでいる自由貿易協定(FTA)では、貿易額および品目ごとの自由化率は下記のようになっている。
これまでハフポスト日本版に掲載したTPPに関する記事には、「市場アクセス分野」に関するものだけをみてみても、賛成、反対とするもの多数が寄せられている。興味深い理由が添えられているものも多かったので、一部を紹介する。
わたしは米の自由化に賛成です。
牛肉の自由化が起こったとき、日本の牧畜産業は壊滅的な打撃を受けるといわれていました。
確かに、経営のうまくいかなくなった酪農家は廃業したことでしょう。つらい目にあった方々も多いことかと思います。
その一方で、生き残った酪農家は、日本の牛肉を世界最高のブランド肉に仕立て上げました。海外のどのレストランに行っても、いまや最高の牛肉は和牛です。
わたしは日本の米もそうなってほしいと思います。
食料自給率や安全性については、まさにTPPの交渉でルールを決めていくことであると思います。食料危機の際でも過度に輸出入を制限しない、消費者が安全性を確認できるための表示等が制限されないなどです。
お米と車を同列に論じることはできない。
お米には食料の自給をある程度ささえているという役割がある。海外からの食品への依存度が高まれば高まるほど、食の安全保障が無くなる。
アメリカの巨大な農業は、わずか270万の農場で営まれています。農場の9割は家族経営。
ところが日本の農家戸数は480万戸もあるのです。
現実には農家とは名ばかりの兼業農家(実態は家庭菜園)が既得権益を主張して農業をゆがめています。
よく食料自給率が低いと言われますが生産額ベースで見れば7割近い自給率です。
もっとも生産額が多いのは畜産ですので米以上に重要な農業です。
日本の農業問題の中心は穀物問題と言うべきで、穀物に対してのゆがみが是正されることと、兼業農家に対する既得権のはく奪が、まず求められているのだと思います。
あくまで私の知っているみかん農家に関してですが、TPPがどうなろうと、私の知っているみかん農家は消滅します。
農家のほとんどは60以上の老夫婦。子供はいますが後継ぎはしません。
収入が少ないからでしょう。一緒に住んでいません。
中には老齢でみかん作りを止めてしまった農家もいます。畑は荒れ放題。
近隣の農家にしても年をとっているので、畑を引き受ける馬力がありません。
もう、20年もすれば誰も生産しなくなるどころか、この集落自体なくなっているかもしれません。
みかんに限らず、こういう状態の農家は他にもあるんではないでしょうか。
日本の農業が抱えている本質的な問題とTPPとは直接関係がないように思います。
5品目をTPPで守ったとしても、日本の農業が再生する、つまり20代30代の若者が農業に従事して、集落に子供がたくさんいるような、そんな風景はとても想像できませんね。
生きるための”生業としての食産業”が構造的に成り立たたないのが今の農業の不幸なところです。お嫁さんも不足し、後継者も育たなければ、農業におけるデフレスパイラルが続いてしまうことになります。
JAには、多角化して手を広げすぎた部門を整理整頓し、もう一度、国と農家一緒になって、”食”への原点回帰へと集中して頂きたいのです。
だって、”人”と”良”いという字で”食”という字が成り立ちます。
だから、食を通じて人が良くならなきゃウソなんですよ!!!
9月20日の交渉テーブルには95%の品目がのるとされた。重要5品目が全体の6.5%だとすると、そのうちの何かかが犠牲になる可能性もある。
日本は何が何でも、重要5項目を死守すべきだろうか。それとも、重要5項目の中でも譲っても良いとする項目があるだろうか。引き続きあなたの意見をお寄せください。