[編集部注釈]※TPA法案は6月24日、アメリカ上院で可決されました。
環太平洋経済連携協定(TPP)が成立に向けて大きく前進しました。
その理由はTPPの合意に必要な米大統領貿易促進権限(TPA)法案の成立が、ほぼ確実となったからです。
同法案は、既に下院を通過し、昨日、上院でも議事打ち切りに必要な最低票数を60対37で獲得しました。残るは上院における本投票だけですが、それには単純過半数(51票)をクリアするだけで良いので、これはほぼ間違いなく実現すると思われます。
TPAは通商法案の交渉を「ファスト・トラック扱い」にするための法案です。もっとわかりやすい言い方に直せば、「TPP交渉は大統領が仕切ってください」ということです。
米国議会の総意として、協定内容に賛成ですよということを、一回のみ意思表示できるというのがファスト・トラックであり、これは議員さんたちが「各論」を持ち寄り、法案を何度も修正することで、議会が紛糾し、本来、決まるものも決まらなくなってしまうことを避ける立法手法です。過去において1979年のGATT東京ラウンド、1993年のNAFTAなどは、いずれもファスト・トラック扱いにすることで成立してきました。
TPPは世界の経済成長率を押し上げるのに貢献すると期待されています。なぜなら貿易の振興こそが経済成長率を押し上げる、一番、お手軽な処方だからです。
その世界の貿易額は、リーマンショック以降、トレンドラインを大幅に下回っています。
それではなぜ貿易を振興することが世界の経済成長を加速させるのか? ということですが、これに関してはカウンシル・オブ・エコノミック・アドバイザーズのジェイソン・フォアマン議長が「貿易の振興はR&Dの特化、専門家をもたらし、それがイノベーションを加速するからだ」という議論を展開しています。言い換えれば、各国は、それぞれ得意なことに専念することで成長を加速できるというわけです。
TPPが成立した場合、米国の石油会社は原油を日本へ輸出できるようになります。これはいままでアメリカ国内でだぶついていた原油に新しい市場が出現することを意味します。(現在の法律では原油の輸出は禁止です。ただし精製し付加価値をつければOKです。またNAFTAのような貿易協定締結国には例外的に輸出できます。TPPが成立すると、当然、TPP加盟国への禁輸は解かれます。)
(2015年06月24日「markethack.net」より転載)