内部告発サイト「ウィキリークス」は1月15日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉における環境関連の内部資料を公開した。その内容に、環境保護団体は厳しい非難を加えている。
TPPの交渉参加国は、アメリカ、日本、メキシコ、カナダ、オーストラリア、マレーシア、チリ、シンガポール、ペルー、ベトナム、ニュージーランド、ブルネイ。これら12カ国が、国際的な議論となっている数々の通商問題を協議している。
このたび公開されたのは、昨年11月19日から24日にユタ州ソルトレイクシティで開催されたTPP首席交渉官会合の資料(PDF)だ。この資料から、TPPには環境に関する数多くの取り決めが盛り込まれるが、それらには強制力に欠けていることがわかる。
環境分野の条文案からは、海洋資源の乱獲、木材製品取引、野生生物の密猟や密売といった違法行為、違法伐採などの問題へ取り組む姿勢は読み取れる。しかし、盛り込まれた方策は、義務的というよりむしろ自発的行為を促す内容であり、違反に対する罰則や刑事処罰は含まれていない。取り決めを順守するか否かの判断は、参加各国にゆだねられている。
ウィキリークスは資料公開に伴うプレスリリースの中で、「TPPにおけるその他分野の条文案と比較すると、環境分野に関する義務的条項や有意義な強制措置が抜け落ちている点は注目に値する」と述べている。
環境保護団体も、同様の非難を展開している。WWF(世界自然保護基金)のカーター・ロバーツ会長兼CEOは、「(条文案には)法的強制力のある環境保全策が欠落している。交渉各国は、自然環境を保護し、再生可能で持続可能な資源の合法的取引を支援できる絶好の機会を、みすみす逃そうとしている」という声明を発表した。
このほど公開された11月の会合資料は草案に過ぎない。しかし、これがそのままTPPの環境分野最終条文となった場合、オバマ政権の環境にかかわる通商実績は「ジョージ・W・ブッシュ政権を下回る」ことになるだろう、と述べるのは、米自然保護団体「シエラクラブ」のマイケル・ブルーン事務局長だ。「この条文案は、海洋環境、水産資源、野生生物、森林などを保護するわれわれの取り組みを、ひとつ残らず挫く内容だ。それどころか、過去に結ばれた自由貿易協定における進展を後退させるだろう」
ウィキリークスは今回、条文案を作成したTPP環境分野作業部会の報告(PDF)も同時に公開している。その内容から、多くの条項において、参加各国間に大きな意見の隔たりが存在していることがわかる。例えば、「無駄な消費を助長する」ような化石燃料助成金を「合理化し、段階的に廃止していくこと」を求める条項に、ベトナム、ペルー、マレーシアが反対している。また、気候変動に関する条項の文章に対してアメリカとオーストラリアが異議を唱えている、と報告には記載されている。
TPP交渉が始まったのは2010年だが、議論の内容は一切公開されていない。ただ、2013年12月上旬に内部文書がリークされ(日本語版記事)、多国籍企業に対して、アメリカの国内法に優越しうる権限を(仲裁機関を通じて)与えること(ISD条項)をオバマ政権が容認することを示す内容があったため、同政権はすでに批判を受けている。
[Kate Sheppard(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]
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