内部告発サイト「WikiLeaks」は11月13日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の「知的財産権」分野の条文案とみられる文書を公開した。TPP交渉は秘密厳守となっており、これまで各国の交渉内容を記した条文案は公表されていない。今回公開された文書には、権利者の告訴がなくても著作権侵害を取り締まることができる「著作権侵害の非親告罪化」に、日本とベトナム以外の10カ国が賛成していると記載されている。もしこうした交渉が事実であれば、日本は著作権法の改正が迫られる事態にもなりそうだ。
「非親告罪化」とは、著作権を侵害する犯罪について、著作権者の告訴がなくても検察が起訴できるというものだ。現在、日本の法律では、著作権侵害は「親告罪」とされているため、著作権者が告訴しなければ、警察や検察が動くことができない。しかしTPPによって「非親告罪化」されれば、第三者による通報をきっかけにして、警察の独自判断で摘発できるようになる。そうなれば、「グレーゾーン」とされてきた漫画の二次創作やクラブミュージックのDJなどが、どんどん検挙される恐れがあると指摘されている。
WikiLeaksは「TPPの詳細について知る機会を提供するものだ」として、8月30日にブルネイで開かれたTPP交渉会合の首席交渉官協議での配布資料だと説明している。英文で全95ページの内容。時事ドットコムでは、以下のように報じている。
著作権侵害をめぐっては、権利者の申請なしに当局が法的措置を取る「非親告罪化」が提案されたとあり、「日本とベトナムが反対」、「米国、ニュージーランドなど10カ国が賛成」と記してある。知財は著作権のほか、医薬品特許でも米国と新興国が対立し、交渉が難航。各国は19日から米ソルトレークシティーで開く首席交渉官会合で妥協点を探る見通しだ。
(時事ドットコム「ウィキリークスがTPP秘密文書を公開=知的財産権の条文案か」 2013/11/14 09:16)
著作権問題に詳しい弁護士の福井健策さんは「極めて導入可能性が高まっている」と、ツイッター上で警鐘を鳴らしている。
このほか、日本では死後50年となっている著作権保護期間の延長問題についても文書に記載があった。朝日新聞デジタルによると、全12カ国中6カ国が反対しており、こちらは決着がつくまで難航しそうな気配だ。
著作権保護の期間については、米国やオーストラリアなど6カ国が提案し、日本やカナダ、ニュージーランドなど6カ国がその案に反対している。提案されている期間は「著者の死後少なくとも70年」や「最初の公表から少なくとも95年」など。日本、カナダなど6カ国は「著作権保護期間はそれぞれの国内法と参加する国際合意に基づいて決められるべきだ」と提案するが、米国やオーストラリアなどは反対している。
(朝日新聞デジタル「ウィキリークス、TPP文書を暴露 知財分野協定案か」2013/11/14 05:00)
【※】「著作権侵害の非親告罪化」がTPPに盛り込まれことについて、読者の皆様はどのように感じますか?全てが秘密になっている交渉経緯も含めてコメント欄にご意見をいただければと思います。
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