開業予定日寸前までつづく豊洲市場の工事 先延ばしは当然だった?

工期通りに工事が進んでいないのか?
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小川裕夫

東京・築地市場の豊洲移転問題は、小池百合子知事が豊洲市場の安全性や費用の増大といった疑問点が解消されるまで移転を延期すると表明し、新施設の土壌汚染対策の盛り土がされていなかったことが発覚するなど、混迷を極めている。

しかし、そもそも豊洲市場の工事自体が完了しておらず、東京都が設定した工期スケジュールにも問題があるのではないかという疑問が浮かび上がってきた。フリーランスライターの小川裕夫氏がレポートする。

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9月24日、豊洲市場の地下に土壌汚染対策として施されているはずの盛り土がなかった問題で、豊洲市場の安全性を検証する専門家会議の座長を務めた平田健正座長が視察をおこなった。

この視察は報道陣にも公開されたが、その後に開かれた記者会見で平田座長は地下空間のたまり水は地下水であると断定。また、たまり水の成分を分析した結果、有害物質は都の定めた基準値以下であることと強調した。

盛り土がなされていないことを共産党都議団が暴露して以降、豊洲市場のニュースは地下空間とたまり水に集約されてきた。

今回の報道公開で明らかになったのは、それだけではない。

報道陣の集合場所は施設管理棟と呼ばれる場所で、私が同行取材した7街区の水産卸売場棟までは約300メートルの距離がある。施設管理棟から水産卸売場棟まで歩いていくと、自然と市場内の建物が目に入ってくる。

小池百合子都知事が先送りを表明する以前、築地市場の閉場は11月4日、豊洲市場の開場は11月7日とされていた。それにも関わらず、豊洲市場内は現在も各所で工事がつづいている。

本来ならば、9月24日時点で開場まで2カ月をきっている。当然、工事は完了していなければならないし、点検や業者の荷物搬入作業が始められる状態になっていなければおかしい。

2015年11月28日、東京都は開場1年前を迎えた工事中の豊洲市場を報道陣に公開している。私はその報道公開にも立ち会わせてもらった。そのときは、茫洋とする建設現場が広がるだけで、市場の全容はつかめなかった。

当時、東京都中央卸売市場の担当者は「1年前の報道公開時に本体工事は3月に終わらせて、その後に内装工事に着手する」と説明している。

1年前と現在とを比べると、確実に豊洲市場は完成に近づいている。しかし、いまだに工事作業は継続している。

これは、工期通りに工事が進んでいないのか? それとも移転先送りになったことで、工期を変更したのか? 東京都中央卸売市場管理部施設管理課の担当者に質問すると「ご指摘の通り、現在も豊洲市場は工事をしています。これらは、外構工事というものです。豊洲の工事がすべて完了するのは10月17日の予定になっています」と言う。

しかし、いまだに外構工事をしているのは、移転先延ばしとは無関係。あくまで移転先送りの判断がされる前から決まっていた日程だという。だから、工事が遅れているというわけではないと担当者は力説する。

ただし、「行政検査については、移転が先延ばしになったこともあって日程を組み直す可能性もあります」と回答した。

東京都にとって20日は十分なタイムスケジュールかもしれない。しかし、築地から移転する業者たちは事情が異なる。

築地から豊洲に移転する仲卸・卸業者たちは、冷蔵庫をはじめとする大型設備をそれぞれの場所に搬入しなければならない。わずか20日で、そうした搬入作業をおこなう。その間も築地の営業を止めるわけにはいかない。築地の全業者に、そんな離れ業ができるとは思えない。

また、業者は新しい市場でターレーに乗って市場内を走行して慣れたり、動線を確認すしたりという習熟訓練も必要になる。移転が先延ばしになったからよかったものの、このタイムスケジュールには無理があるのではないか?

先の担当者は、「習熟訓練は、6月以降から実施しています」と回答し、スケジュールに問題はないとの見解を示した。

しかし、豊洲市場内は工事中の箇所が多く、とてもターレーを乗り回したり、トラックの横づけするような習熟訓練ができる環境にはなっていない。

盛り土がなされていなかったり、豊洲の建設工事スケジュールがタイトだったり、豊洲市場移転にまつわる東京都の計画はあまりにも杜撰だ。築地移転を急ぐあまり、予定通りに移転を強行していたら、豊洲市場は不完全のまま開場することになる。そうなれば、日本の食料流通は機能不全に陥っていただろう。

小池都知事が決断した移転先延ばしは、当然だったのかもしれない。

(フリーランスライター・小川裕夫)

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