「トヨタのプリンス」豊田章男社長に海外紙が注目 その功績と今後の課題とは
トヨタ自動車の第2四半期(7-9月)の営業利益は前年同期比で74%上昇、来年3月期の利益見通しは13%上方修正された。急激な増益の背景にあるのは、アベノミクスの副産物である円安だ。
東京モーターショーの開催時期に記録的な利益を上げ、レクサスの新型セダン「IS」は6月の販売開始以来1ヶ月で目標の約10倍販売。過去最高の売上記録が予想されているという。
【波乱含みの門出から、若いトヨタ社長の快進撃】
ブルームバーグは、業績好調なトヨタ自動車の“プリンス”豊田章男社長の手腕について報じている。
豊田氏は2009年6月、リーマンショックの影響が残る中、53歳で社長に就任した。就任から8ヶ月目には、「恐らく私は社長として1年もたない」と考えていたのだという。
就任から2ヶ月後、トヨタの最大市場であるアメリカで、一家4人がブレーキの不具合で死亡する事故が発生。世界で1000万台以上がリコールされ、トヨタの名声は危機的状況にあった。
しかし豊田社長は、米議会公聴会で自身の責任の所在を強調し、直後に自らの判断で現地の人気番組「ラリーキング・ショー」に出演するなど、リーダーシップを発揮。
その後も、自分より年上のベテラン副社長を招き入れたり、米ゼネラルモーターズ(GM)の元副社長マーク・ホーガン氏を同社初めての社外取締役とするなど、社内改革を進めた。
以降、カーラインナップの改善にも着手し、世界累計販売台数4000万台の大衆車「カローラ」も改良。アメリカで9月に販売された新モデルについて米自動車雑誌「カー&ドライバー」は、「スタイリッシュという言葉をまとっている」と評価した。
【中国市場とリコール問題など課題は残る】
ただし、多くのハードルがまだ残っているとブルームバーグは報じている。
世界最大の中国市場で、トヨタのシェアは約5%である。一方、GMは約10%、ドイツのフォルクスワーゲンは18%だという。昨年、尖閣諸島問題をめぐって反日デモが起きた後、上海と北京にレクサス販売店を開く計画を棚上げせざるを得なかったことなども影響しているという。
また、エアバック問題で数百万台のリコールを実施しており、ギアシフト問題でもミニバン80万台以上、シートベルト問題でもスポーツ多目的車21万台をリコール対象としていることも指摘されている。
【逆風を乗り越えた社長は「今後10~15年間は健在」との声も】
豊田社長は「年間販売台数1000万台を成し遂げる最初の自動車メーカーとなるだろう」と「Automotive News」に語った。ただ、最終目標は数字ではなく、持続可能な成長を目指すことだという。トヨタを「ファン・トゥ・ドライブ」のブランドにするため、「今まで以上によい車をつくろう」「楽しみを提供できなければ車でない」と発信し続けることにも言及している。
ブルームバーグは、「今後10~15年間、章男氏は健在と考えるのが妥当だ」「彼は若い。すぐに引退しないだろう」というアナリストの見解を紹介している。
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