スタジオジブリの永遠の名作『となりのトトロ』。作中に登場するトトロたちに台詞はない。大トトロがメイとクスノキの根元で初めて会うときに、「ト〜ト〜ロ〜」と聞こえるような大声を出すくらいだ。一体、なぜトトロは作中で一言もしゃべらないのだろうか。
その謎を解くヒントが、徳間アニメ絵本『パンダコパンダ』の解説に書いてあった。『パンダコパンダ』は、後にスタジオジブリを設立する故・高畑勲さんと宮崎駿さんがタッグを組んだ1972年のアニメ映画だ。子どもたちの間で人気を博して、翌73年に続編が上映された。
パンダ親子がミミ子という少女の家にやってくるという設定。父親のパンダ「パパンダ」は能弁で「特に竹やぶがいい」の名台詞で知られている。
この本の解説の中でアニメ映像評論家の池田憲章(いけだ・のりあき)さんは、「『パンダコパンダ』は宮崎駿さんにとっては『となりのトトロ』のルーツのような作品」と論評。その上で次のように振り返った。
<『パンダコパンダ』の二本では、ベテラン俳優の熊倉一雄さんにパパンダ役として存分にしゃべってもらったので、『となりのトトロ』では、宮崎さんは「トトロにひとことでもせりふをいわせたら、トトロの神秘性とふしぎさは消えてしまうので、セリフはいわせなかった」といっている>