[東京 8日 ロイター] - 東芝が2014年度決算をようやく発表した。テレビ、パソコン、白物家電が赤字で、原子力事業の低収益性が目立つ一方、半導体メモリーに依存する事業構造があらためて鮮明化した。だが、7日の会見で室町正志社長は「半導体1本足」からの脱却シナリオを提示できなかった。7人の社外取締役から大胆な「選択と集中」の対応策が出てきた場合、どう意思決定するのか。東芝は再スタートの当初から、正念場を迎える。
14年度の連結営業利益は前年比33.7%減の1704億円。内訳は、テレビ・パソコン・白物家電のライフスタイル事業が1097億円の赤字で、原子力事業など電力・社会インフラ事業の営業利益も195億円にとどまった。
一方で、NAND型フラッシュメモリーを中心とする電子デバイス事業は2166億円の営業利益で「半導体メモリー1本足」の収益構造が浮き彫りとなった。
こうした半導体メモリーへの依存体質は、不正会計が発覚する以前から歴代の東芝社長にとっての経営課題だ。相談役を辞任した西田厚聡元社長は2006年、原子力事業を2本目の柱に育成することを目指して米ウエスチングハウスを買収し、半導体と原子力の「2本柱」を打ち出した。東日本大震災後の原子力事業の伸び悩みを受けて、2013年に就任した田中久雄前社長は、医療関連(ヘルスケア)事業を「3本目の柱」に位置づけた。
だが、7日の記者会見で室町社長は「私は3本柱という表現は控えたい。依然として収益の柱は半導体で、原子力とヘルスケアは見劣りする」と指摘。ヘルスケア事業の拡大計画については「原点に戻って見直す」と述べ、田中前社長が掲げた2017年度の売上高を1兆円にする目標を撤回する考えを明らかにした。
<事業構造の変革は「白紙」>
室町社長は、テレビ・パソコン・白物家電、メモリーを除く半導体の「不採算事業」の整理については「年内に方針を打ち出す」意向だ。撤退・売却についても「今の段階では言及することは控えたい」としながら「各事業部やカンパニートップと様々な話し合いをしている」と述べ、選択肢として否定はしていないことも示唆している。
一方で、原発事業について東芝は依然として強気の姿勢を崩していない。市場関係者が懸念する米原発子会社ウエスチングハウス買収時に発生した関連資産(14年3月末で「のれん代」3200億円)は、14年度決算の監査でも「減損は不要」との結論に至っている。
東芝は9月30日に開く臨時株主総会で、11人の取締役のうち社外取締役が7人を占める新経営体制を発足させる。だが、コーポレートガバナンス改革や企業風土の改善に向けた対策が優先され、半導体メモリーに次ぐ事業の柱をどう打ち立てるか、その方針が見えていない。
室町社長は7日の会見で、東芝のポートフォリオの入れ替えについて「まだ白紙の状態だ」と認めた。「社長が交代したからといって別のポートフォリオは頭には入っていない」と述べた上で、具体的な対策については「新経営体制で社外取締役が7人いるので、ディスカッションして会社の方針を決定していきたい」と述べるにとどめ、事業構造の変革には時間がかかるとの認識を示している。
三菱ケミカルホールディングス
(村井令二 編集:田巻一彦)