[東京 7日 ロイター] - 証券取引等監視委員会は7日、東芝の不正会計問題で、同社に過去最大となる73億7350万円の課徴金納付命令を出すよう金融庁に勧告した。監視委は不正会計の根本原因に同社のガバナンス(経営管理)体制の不備があったとし、今後一定期間はガバナンス体制などを検証していく方針を明らかにした。
監視委が勧告した課徴金額は、これまでの最高額である約16億円(2008年のIHI)を大きく上回った。不正会計問題を受けて東芝が訂正した有価証券報告書は、2010年3月期からの6期分だが、監視委が「重要事項の虚偽記載」に当たると認定したのは12年3月期と13年3月期の2期分となった。
さらに、10年12月から13年12月にかけて調達した合計3200億円の社債発行に伴う開示書類も対象となった。虚偽記載した発行書類で投資家を募集したとして、課徴金額が膨らんだ。
東芝の歴代社長を刑事告発する可能性については「個別の案件であり、今の時点では言えない」(監視委幹部)とした。
会見した監視委の佐々木清隆事務局長は、東芝が世界的企業であるうえ指名等委員会設置会社にもかかわらず、ガバナンスが機能していなかったなどとし、「表面的な会計上の問題にはとどまらない重大な事案」と説明。その上で、不正会計の原因として、1)歴代社長による予算達成要求と内部の財務・経理部門のけん制機能が働いていなかった、2)コーポレートガバナンスの不備―─の2点を指摘した。
監視委は今後、東芝に対して開示体制など不正会計の根本原因の改善を金融庁とともに求めていく。具体的な手法は今後詰めるが、「単に(財務諸表の)数字を直せばいい、課徴金を払えばいいという問題ではない。根本原因を治さないと問題が再発する」(佐々木事務局長)と説明した。
東芝に対しては、東京証券取引所がすでに同社株を特設注意市場銘柄に指定しており、東証が開示などについて厳しく指導している。東芝は、金融庁・監視委からも指導を受けることになる。
東芝問題を受け、監視委は法定開示書類の検査のあり方を見直す。開示検査にあたっては、虚偽記載の分析のみならず、根本原因の究明にも力を注ぐ。また、中国経済の減速や原油安などマクロ経済の動向を開示書類の分析に生かす方針。
(和田崇彦)
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