そろそろ、年の瀬の足音が聴こえるようになってきました。毎年11月に神社やお寺などで行われる酉の市に出かけてみませんか?
■酉の市って何?
毎年11月の酉の日に浅草の長國寺や、全国の大鳥神社で開催される酉の市。酉の日とは、中国の十二支を日にちに当てはめたもので、12日に一度巡ってきます。
通常、11月の酉の日は2回で、1回目の日に開催される酉の市を「一の酉」。2回目を「二の酉」といいます。
しかし、年によっては11月に3回も酉の日が回ってくることがあり、「三の酉」が開かれることも。
2015年は一の酉が11月5(木)、二の酉が11月17(火)、そして三の酉も11月29(日)に開催されます。
三の酉まで開催される年は、例年に比べ火事や異変が多いという言い伝えがあります。
酉の市が始まったのは江戸時代で、東京都足立区にある大鷲神社で地元の農民が行った収穫祭が起源だと伝えられています。このお祭りに江戸中から参詣客が集まり、次第ににぎわいを増していきました。
当初、神社の境内の露店では農産物や農具が売られていたのですが、次第に熊手が豪華になり、縁起物も多数売られるようになって、開運招福や商売繁盛を願うお祭りに変化していきました。今ではお正月を迎えるための祭りとして、いちはやく年末を感じさせる風物詩となっています。
■豪華絢爛な熊手
酉の市の見ものといえば、豪華絢爛な熊手です。
なぜ、酉の市で熊手が売られているのかというと、このお祭りの起源が収穫祭だったからです。農具の熊手が次第に「運を鷲掴みにする」ということで、実用的な農具からおかめや七福神などを載せた縁起物に変化していったのです。
色とりどりの縁起物がたくさん載った熊手は、店によってデザインが違い、見て回るだけで楽しいもの。酉の市は夜にも開催されているため、夜はぎっしり並んだ熊手が灯りに照らされる様子は、豪華絢爛です。活気のある境内を歩くだけで、景気のよい気分になってきます。
商売をしている人は、商売繁盛を願って熊手を買うのですが、この買い方には独特の作法があります。
熊手屋さんに言われた値段で買うのは野暮というもの。必ず値切り交渉を行い、いざ商談成立となったら値切った分のお金はご祝儀として熊手屋さんに渡すのが粋な買い方なのです。
威勢のよい熊手屋さんとの駆け引きを楽しむのも、このお祭りの醍醐味です。
ちなみに、熊手は年ごとに大きいものを買っていくのがよいとされています。もし買うのなら、最初は小さいものを買いましょう。
買った熊手は高々と掲げて持ち帰り、玄関や神棚に飾ります。そして、翌年の酉の市で古い熊手を納めに行きます。
「自営業じゃなので、熊手はちょっと…」という人でも、お祭りは楽しめます。インテリア感覚で小さい熊手を買ったり、「頭の芋」や「切山椒」などといった酉の市ならではの縁起物の食べ物を買ったりするのもいいですね。
木枯らしが身に染みる季節ですが、酉の市に足を運んでみれば、身も心も、そしてなんとなく懐もほかほかになりそうです。
(気象予報士・ライター 今井明子)
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