東京急行電鉄2代目5000系6ドア車フォーエヴァー-田園都市線の6ドア車を4ドア車に置き換える理由-

東京急行電鉄では、2020年を目標に東横線、田園都市線、大井町線の全駅にホームドアの設置を発表。田園都市線用2代目5000系の6ドア車を4ドア車に置き換える。
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東京急行電鉄2代目5000系は、2002年に登場してから早13年。

東京急行電鉄(以下、東急)では、2020年を目標に東横線、田園都市線、大井町線の全駅にホームドアの設置を発表した。ホームドアは東横線や大井町線の一部駅で導入されている「可動式ホーム柵」で、一部駅では「昇降式ホーム柵」の設置も検討するという。

私が注目したのは、田園都市線用2代目5000系の6ドア車を4ドア車に置き換えること。その理由を探ってみた。

■2代目5000系6ドア車の歴史

田園都市線は渋谷―中央林間間を結ぶ路線である。梶が谷以西は東急が「東急多摩田園都市」と名づけ、みずから鉄道の敷設と土地の造成(約5,000ヘクタール)が同時に行なわれた。

現在、東急多摩田園都市の人口は約60万人。田園都市線の列車も増発と増結を繰り返した。また、東京メトロ半蔵門線及び東武鉄道伊勢崎・日光線との相互直通運転が行なわれ、伊勢崎線久喜、日光線南栗橋から田園都市線中央林間まで、最速約2時間で結ばれている。

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2代目5000系6ドア車。

田園都市線用2代目5000系の6ドア車は、混雑緩和と乗降時間の短縮を目的に、2005年2月14日から乗車率が高い5号車と8号車に連結(渋谷駅では、階段の近くに停まるため)。平日朝ラッシュ時の上り急行に優先使用され、始発駅―半蔵門線半蔵門間は座席を格納した。

田園都市線でもっとも乗降客が多い渋谷では、6ドア車の乗降時間が平均6秒、編成全体では平均3秒それぞれ短縮され、導入の効果があった。しかし、平日朝ラッシュ時の上り急行は依然乗車率が高く、乗降に時間がかかってしまい、遅延の原因にもなっていた。相互直通運転先の半蔵門線や東武伊勢崎・日光線にも波及してしまう。

そこで、2007年4月5日から、平日上り朝ラッシュ時のピーク時間帯に限り、速達列車の種別を「急行」から「準急」に変更。二子玉川―渋谷間を各駅停車化した。同区間の通過駅をなくすことで、混雑の平準化を図ったのだ。一定の成果があり、2008年3月28日のダイヤ改正で、準急の運転本数を増やした。

2009年4月1日から順次、4号車にも6ドア車を連結し、遅延抑制と混雑感の軽減をさらに進めた。現在、6ドア車は45両在籍している。

■6ドア車から4ドア車に置き換える理由

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東急によると、2代目5000系全編成の再オール4ドア車化を決めたのは、後述する3つの理由で、田園都市線の混雑緩和が進んだからである。表を御覧いただくとおわかりの通り、2009年度以降の混雑率が180%台まで下がった。

1.大井町線の急行運転開始と溝の口延伸

東急では、田園都市線の混雑を緩和させるため、1993年より大井町線全線と田園都市線二子玉川―溝の口間の改良工事に着手(当初は二子玉川―鷺沼間の予定だった)。同区間の複々線化を「大井町線の延伸」と位置づけた。

改良工事の"目玉"は、大井町線に急行を新設し、大岡山で目黒線上り列車に乗り継ぐことで、都心への新ルートを開拓するもの。東急は田園都市線全線の複々線化が難しいため、既設線の活用を選択した。

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2代目6000系。通勤形電車としては、異例の"急行専用車"となった。

大井町線の急行は溝の口延伸を待たず、2008年3月28日のダイヤ改正でデビュー。各駅停車(5両編成)より1両多い2代目6000系を充当させ、輸送力増強を図った。

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大井町線急行の運転開始により、田園都市線の混雑緩和に貢献。2009年7月11日に二子玉川―溝の口間の延伸開業により、田園都市線同区間の混雑緩和にも一役買う。

例えば溝の口7時41分発の列車に乗り、大手町で降りる場合、田園都市線経由と大井町・目黒線経由の所要時間と運賃を比べてみよう。

○田園都市線経由

溝の口741(各駅停車〔渋谷から急行〕南栗橋行き)→820半蔵門線大手町

営業キロ:20.1キロ

所要時間:39分

大人運賃:440円(東急220円、東京メトロ200円)

○大井町・目黒線経由

溝の口741(急行大井町行き)→753大岡山755(急行〔目黒から各駅停車〕高島平行き)→821都営三田線大手町

営業キロ:20.1キロ

所要時間:40分

大人運賃:440円(東急220円、都営地下鉄200円)

※運賃は券売機で乗車券を購入した場合。

所要時間は田園都市線経由が1分早い程度で、営業キロと運賃は同じである(定期代については省略)。

2.「早起き応援キャンペーン」の実施

東急は田園都市線混雑緩和の一環として、2008年から2012年にかけてピーク時間帯前後(オフピーク)に急行を増発したほか、2009年12月1日から18日までの平日に限り、「早起き応援キャンペーン」を実施。当時は事前にメンバーを募集し、抽選で選ばれた5,000名が参加した。

当選者は各駅の「早起き設定時刻」までに事前登録したPASMOで自動改札機にタッチすると、携帯電話のメールアドレス宛てにクーポンが配信される。当日の午前中に限り、飲食チェーンやフィットネスクラブの指定店舗、東急セミナーBE渋谷校で特典を受けられるので、メンバーから好評を博した。

このキャンペーンは、2010年以降も実施され、事前申込制の変更や特典も充実。2011年夏の第4回から東横線、目黒線、大井町線、池上線、東急多摩川線にも拡大。2013年からは年間通しての実施となり、Suica(モバイルSuicaも含む)の利用も可能になり、参加しやすい環境を整えた。

3.渋谷駅の乗り換え動線の変化

東急によると、東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転が開始された2013年3月13日以降、渋谷駅における乗客の乗換動線が変化し、車両ごとの混雑の分散が進んだことにより、6ドア車の効果が以前より薄れつつあるという。

かつて、田園都市線と東横線の乗り換えは、一旦改札を出なければならず、不慣れな人にとっては、駅がどこにあるのかわかりづらいものがあった。しかし、先述の相互直通運転により、改札内乗り換えとなった。東横線の列車が地下ホームの発車に変更されたからだ。これにより乗り換えしやすくなった。

■港北ニュータウンから都心への新ルート開拓により、田園都市線の混雑緩和に貢献

田園都市線が首都圏の大手私鉄で屈指の混雑路線となったのは、東急多摩田園都市及び港北ニュータウンの人口増加と、こどもの国線の通勤線化が影響している。

港北ニュータウンは、1983年から入居を開始。当時は横浜市緑区と港北区にまたがっていたが、両区の行政再編成により、1994年11月6日から所在地が都筑区となった。

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横浜市交通局の市営地下鉄ブルーラインあざみ野―新横浜間が1993年3月18日に延伸開業すると、街の開発がさらに進んだ。住宅の整備だけではなく、大型ショッピングセンターの相次ぐ開業も相まって、"住みやすい街"に変貌してゆく。それを象徴するかの如く、都筑区の人口は現在も右肩上がり。1990年代後半に入ると、港北ニュータウンの中枢をなすセンター南駅の利用客も急激に増えた。

港北ニュータウンから都心へは、市営地下鉄・バスなどから田園都市線に乗り継ぐしかない状況だったが、2008年3月30日にグリーンラインが開業すると、終点日吉で東横線に接続。同年6月22日に目黒線武蔵小杉―日吉間が延伸開業した。

ここでセンター南7時30分台発の列車に乗り、渋谷、大手町で降りる場合、ブルーライン経由とグリーンライン経由の所要時間と運賃を比べてみよう。

1.センター南―渋谷間

○ブルーライン経由

センター南731(あざみ野行き)→738あざみ野745(準急〔渋谷から急行〕久喜行き)→817渋谷

営業キロ:22.2キロ

所要時間:46分

大人運賃:490円(市営地下鉄240円、東急250円)

○グリーンライン経由

センター南734(日吉行き)→747日吉754(急行〔小竹向原から各駅停車〕小手指行き)→817渋谷

営業キロ:21.8キロ

所要時間:43分

大人運賃:490円(市営地下鉄270円、東急220円)

2.センター南―大手町間

 

○ブルーライン経由

センター南731(あざみ野行き)→738あざみ野745(準急〔渋谷から急行〕久喜行き)→835半蔵門線大手町

営業キロ:53.1キロ

所要時間:64分

大人運賃:690円(市営地下鉄240円、東急250円、東京メトロ200円)

○グリーンライン経由

センター南734(日吉行き)→747日吉751(急行〔目黒から各駅停車〕浦和美園行き)→809武蔵小山811(各駅停車高島平行き)→832都営三田線大手町

営業キロ:48.4キロ

所要時間:58分

大人運賃:710円(市営地下鉄270円、東急220円、都営地下鉄220円)

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距離はグリーンライン経由が短いうえ、東横線と目黒線は田園都市線に比べラッシュ時の混雑率も低い。しかし、東横線の混雑率は2009年度以降減少が続いており、従来の「ブルーライン&田園都市線ルート」が根強いことがうかがえる。

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一方、目黒線は大井町線の急行運転開始も相まって、利用客が増加した。横浜市交通局と東急が「グリーンライン&目黒線の乗継による都心への新ルート」のPRポスターを共同製作していたことも大きく、田園都市線の混雑緩和に貢献した。

■より安定した鉄道ネットワークの形成を目指す

東急によると、輸送障害の約8割は列車との接触事故だという。特に東横線、田園都市線は、大規模な相互直通運転を行なっており、輸送障害が発生すると、他社線に波及してしまう。より安定した鉄道ネットワークの形成を目指すべく、ホームドア設置のスピードアップを決めた。

一方、東急と相互直通運転を行なう東京メトロでも、全線全駅のホームドア設置を目指している。今回の田園都市線オール4ドア車化は、"半蔵門線のホームドア設置と関係しているのではないか"と思い、同社に問い合わせたところ、3社(東京メトロ、東急、東武鉄道)での協議上ではなく、東急の社内協議で決めたという。

いずれにせよ、半蔵門線もホームドア設置の障壁がなくなった。

【協力:東京急行電鉄、東京地下鉄】

Yahoo!ニュース個人より転載)