東京都にいるホームレスの人数が過去最小に 海外からは統計方法に疑問の声も

東京都は10月、2014年8月時点での「ホームレス」人数がわずか1697人だったと発表した。これは、2002年に統計を取り始めて以来、最少の記録だというが、この調査が現実とは異なる印象を与えるという批判もある。
Open Image Modal
Brent Winebrenner via Getty Images

東京都は10月、2014年8月時点での「ホームレス」人数がわずか1697人だったと発表した。これは、2002年に統計を取り始めて以来、最少の記録だという(リンク先によると、2004年夏の6731人がピークでそれ以降は基本的に減少してきた)。

東京でホームレスを支援する、ある非営利団体のリーダーは、アメリカの新聞『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)の記事でこう語っている。「われわれが食料を配布しているホームレスの人数は、1990年代にピークを迎え、その後は減少してきた。いまは当時の半分ほどだと思う」

アメリカのニュースブログ「Think Progress」の記事は、世界で最も人口の多い都市とされる東京(人口1335万人)におけるこの数字を、アメリカで最も人口の多い都市(PDF)とされるニューヨーク市(人口840万人)のホームレスの数(約5万6000人)と比べている(同記事によると、ニューヨーク市のホームレス率は「人口1万人あたり67人」だが、東京の率は「1万人あたり1人」。また、アメリカ全体のホームレス人口は60万人、日本全体では7500人だという)。

東京がホームレスを減らすことに成功したカギはどこにあるのだろうか。「Think Progress」は、日本国憲法の保証する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(アメリカ独立宣言は「生命、自由及び幸福追求の権利」を掲げているが、アメリカ憲法には社会権や生存権に関係した規定はない)に根差した社会福祉制度や、日本における家族親族の結びつきがアメリカより強い点を指摘している

また、東京都の担当者によると、当面の住まいを提供し職を斡旋する行政サービスが有効に機能していることや(最長6カ月間、無料で衣食住を提供して就労を促したり、巡回相談を行っている)、ホームレスの高齢化により公共医療サービスを受けられる人が増えたことが、数字の減少につながっているという。

ホームレスをなくすことを目指すアメリカの非営利団体「National Alliance to End Homelessness」が2014年に行った調査によると、2005年以降はアメリカでも全国のホームレスの人数は減少傾向にある。ただし、状況は地域によって異なる。

たとえばヒューストンソルトレイクシティでは、この問題との戦いで大きな成果を上げているのに対し、ニューヨークでは社会的な格差は広がる一方であり、極度の貧困にあえぐ人々に安定した住まいを提供することもままならない状態だ(ニューヨークでは2014年10月はじめ、「ホームレス向けシェルターで暮らす人の数」と「億万長者の市民の数」が、いずれも史上最高を記録した)。

ただし、日本における誰もがこの統計に満足しているわけではない。アラブ系報道機関「アルジャジーラ」の記事によれば、この調査が現実とは異なる印象を与えるとして、批判的な見方を示す人もいる。政府の公式調査は、公園や歩道のような公共スペースで寝ている人をホームレスとしてカウントしており(都内の河川敷や公園、道路などでそれぞれの管理者が目視で人数を確認)、定まった住まいを持たずインターネットカフェや車で夜を過ごす人々を考慮していないという問題があるからだ。

テンプル大学日本キャンパスのアジア研究学科ディレクター、ジェフリー・キングストン教授は、アルジャジーラの記事のなかで、今回の統計報告について次のように語っている。「この統計値についてはわたしは懐疑的だ。急にあらゆることが良くなったかのような話には警戒してしまう」。

この記事は最初にハフポストUS版に掲載されたものです。

[日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]

【関連記事】

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています