3歳からは運動量も増えることから、国の動向を含め研究はしたいと思うが、まずは2歳児以下を対象とした小規模保育所で考えていきたい
14日、文京区子ども子育て支援調査特別委員会が開催され、待機児童解消に向けた審議の中で、小池都知事が、2歳児以下を対象にした小規模保育所の年齢制限の撤廃を国に求めたことについて、文京区の評価をたずねた際の答弁です。
小規模保育所は、マンションの一室でも開設が可能なもので、活動が活発になる3歳からを考えると、そうした環境がはたして子どもたちの育ちにふさわしいか?には大きな疑問があり、その点をないがしろにしない文京区政であることにホッとします。
3歳児以上の子どもについて、学校教育法の幼稚園設置基準では以下のような目標を掲げています。
- 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
- 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
- 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
- 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
- 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。
そして、こうした目標を達成するために、園地、園舎及び運動場について以下のように定めています。
第八条 園舎は、二階建以下を原則とする。園舎を二階建とする場合及び特別の事情があるため園舎を三階建以上とする場合にあつては、保育室、遊戯室及び便所の施設は、第一階に置かなければならない。ただし、園舎が耐火建築物で、幼児の待避上必要な施設を備えるものにあつては、これらの施設を第二階に置くことができる。
2 園舎及び運動場は、同一の敷地内又は隣接する位置に設けることを原則とする。
3 園地、園舎及び運動場の面積は、別に定める。
もちろん、保育園にも同様の考えが求められます。
子どもの経験や発達の保障に格差があってはならないものであり、2歳以下のまだ活動が活発でない子どもと3歳以降に求められる環境とは大きな違いがあります。
国は、最低でも、認可保育園同様の保育環境が整備できている小規模保育所に対してのみ3歳以降の保育も認めるという規制緩和であるべきです。
保護者の就労保障に向けて、待機児童の解消は待ったなしで進めるべきですが、子どもの生涯を考えた時に、子どもが主体的に遊びを選び、深めて広げられ、知的好奇心を十分に満たしていける環境があるかないかは、人格形成にも大きな影響があると言われているだけに、慎重に慎重をきして、子ども達が伸びやかに遊べる環境を、国として財政的に保障していくことが重要であると思います。
さて、国が発表した各自治体の「隠れ待機児童」によると文京区は356人です。
国がこうしたことを公表したことについて文京区としての評価を質問したところ、
356人の内訳は、
育児休業 159人
認証保育園等に入園 145人
家庭的保育 14人
休職活動の停止 5人
第一希望のみで待機する 33人
「文京区としてはすでに公表していることであり、国が隠れ待機児童と位置づける子ども達を含む待機児童の解消に向けて取り組んでいる」
とのことでした。
心強いことです。であれば、なおのこと、区の積極的な姿勢を区民にわかりやすく伝えるためにも、今後、待機児童の定義に隠れ待機児童も含めて、この356人を加えた人数をベースにして、子ども子育て会議での今後の認可保育園の新設数を検討していくことが重要であると求めました。
委員会では、「文京区保育所待機児童解消緊急対策等の進捗状況」
について審議を行った中で、私は上記の他に、「保育の質」に重点を置いて審議をしました。
審議では、文京区の元教育委員でもある東大・秋田喜代美教授がセンター長である「東京大学発達保障実践政策学センター」が、子どもの発達を支える「保育の質・向上」のために、「保育の量の拡充」・「保育の質の保障」・「保育の質の向上」という3つの観点から行った「今、日本の保育の真実を探る ―保育施設と自治体に対するアンケート調査」を参考にしました。
「文京区保育所待機児童解消緊急対策」における、保育の質の確保に関する部分には、区内の認可保育園で保育環境の格差が出ていることに対しての言及がありません。もちろん、区としてはそうしたことも認識しています。
施策を実行していく指針となる文書の中できちんと文章化して、携わる全員が共通認識を持つことは、実行段階で視点が欠けたり方針がぶれたりしないためにも非常に大切であり、もったいないことです。今後記載していくことを求めました。
来年4月に開園する4園も園庭が確保できるのは1園のみです。都心で園庭を確保する難しさはあります。現在の私立認可保育園ではホールを園に設けるゆとりがないところもあり、子どもがのんびりと過ごせる場所がとりきれていない園もあります。
また、近隣の公園は、園庭のない保育園児であふれ、お互いに時間をずらしあって利用している状況で、子どもたちが外で遊びたいときに、十分に遊びきれる時間的なゆとりもないのが現状です。
そうした状況を区が認識している以上、園庭やホールのない保育園の子どもたちが存分に遊びきれる施設を区として新設し、園庭やホールがある区立認可保育園等の子ども達と、体験や発達の保障に格差が生じないようにすることを求めました。
また、教育委員会に対しても、学校施設をこれまで以上に提供し、そこを活用することによって、実質、体験や発達に格差が生じかねない保育環境である実態を補完することについて尋ねたところ、
「子どもの発達そのものが飛び級はできない。乳幼児期からの発達で体験していないことは後に必ずどこかの段階で取り戻すような行動がでるというのが通説となっているので、年齢に応じた発達を保証していくということが重要。子どもの発達に寄与するようにさらに努めていく」
との答弁がありました。
子どもたち一人ひとりが、通う園の保育環境の格差に制約されず、幼児期でなければできない体験を存分にできるようにすることが、未来への確実な社会投資であることを共通認識にして、縦割りではなく全庁をあげて取り組んでいくように応援していきたいと思います。
子どもは家庭環境によって大きな影響を受けます。子どもはある意味、親の気分や余裕の有無によってその日一日が違ってくるといっても過言ではないと思います。みなさんも経験上ありませんか?
地域で孤立したり、経済的な不安や体調を崩したりしている保護者がいれば、子どもの健やかな育ちを担保するためにも、保育園はそうした家庭に早期に気付き、解決に向けてソーシャルワーカーや子ども家庭支援センター等と「つながる力」も保育の質として必須だと思っています。
さらには、虐待を早期に「発見する力」も求められています。そうした力を、区立保育園だけではなく、等しくどの園もが活かせるように、私立保育園へも区の責任を発揮することと、研修を行うことを求めました。
学童保育や学校についても同様の力が必要です。同様の研修をしていく必要性について言及しました。
「保育の質」を担保しつつ待機児童の解消を行うことは、容易なことではありません。都庁や区役所の一部門のがんばりだけで解決できる課題ではありません。その意味では、上で述べたような子どもの健やかな育ちを担保する保育園だけでなく、行政の側にも「つながる力」が必須です。
従来のような縦割りではなく、他部門や他自治体、あるいは多種多様な事業者、関連団体、区民等々、との連携を通じて、広く知見や知恵を結集する必要があると思います。また、そうやって、広い視点を持ち、認識と情報を共有することは、課題を早期に「発見する力」にも繋がるはずです。
いまだに決め手がみつからない「待機児童解消問題」に取り組むには、まず行政をはじめとした大人側が変わることが先決なのかも知れません。