東京メトロの車内空調-地下区間の昼間は、暖房を使わなくても「寒い」と感じない-

今回乗車した2つの列車とも、冬季は車内気温20度で暖房以外の空調を使用している。"地下鉄は地上の鉄道に比べ、車内の気温管理に神経を使う乗りものだ"と肌で感じた。
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東京メトロ03系。旧営団地下鉄の"車両冷房元年(1988年)"に登場した。

札幌市交通局が2014年11月下旬、「今冬は地下鉄の暖房を原則使用しない」と決め、大きな反響を呼んだ。地下区間の冬季は、原則暖房が必要ないのか。「東京メトロ」こと東京地下鉄の2路線で検証してみた。

■昔の地下鉄は「夏は涼しく、冬は暖かい」

東京メトロ(東京地下鉄)では、2010年代から乗務員が空調使用の案内をしている。

東京地下鉄道(現在の東京メトロ銀座線)開業当時は、「夏は涼しく、冬は暖かい」をアピールしていたが、戦後は乗客の増加による列車の増発や増結により、車両の排熱量が増え、トンネル内(駅構内も含む)に熱気が充満した。さらに地下水が減った影響も大きい。

車両冷房が導入されるまで、扇風機の使用及び窓を開けて風を入れていた。駅員も車両の外から窓を開けていたこともある。

■車両冷房は通年使用

東京メトロでは、車両の冷房については通年使用している。冬の場合、厚着の乗客が多く、車内の気温や湿度が上昇しやすい環境になるので、体調不良を起こさないよう、きめ細かな調節をしているという。実際、11月でも冷房を使用していたが、意外と快適だった。

車両の暖房は、10月15日から4月30日まで使用。地下鉄とはいえ、日比谷線の北千住―三ノ輪間と恵比寿―中目黒間、東西線の中野―落合間と南砂町―西船橋間など、地上に建設された区間や、他社線との相互直通運転も行なわれており、必要なアイテムだ。

なお、駅の冷暖房については、使用期日を設定しておらず、駅の判断に任せている。

■車内に暖房がなくても問題なし

銀座線01系の初期車(車両の前面、側面、車内に表示される5ケタ数字のうち、下2ケタが「01」から「23」までの車両)は、冷房だけではなく暖房も搭載されなかった。地上区間が短いことや、冬場であってもトンネル内は低温にならないからだ。のちに冷房のみ搭載された。

実際に01系の"暖房装置未搭載車両"に乗って、車内の気温と湿度を検証してみよう。

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私が乗車したのは、渋谷14時33分発の浅草行き。自宅から持参した家庭用のデジタル式温度計を使用して計測する。14時31分に入線した直後の車内は、気温が16.9度、湿度が62.9%で、発車時には17.5度、63.5%まで上昇した。このときは冷房、除湿とも使用していない。

渋谷ヒカリエを通過すると地下へ入り、車内の気温と湿度の上昇が続く。青山一丁目で乗車率がさらにあがり、発車すると20.0度の"大台"へ。車掌は「温度調節のため、除湿を使用いたします」と車内放送を入れる。

除湿を入れたことで、車内の気温と湿度の上昇がゆるやかになった。日本橋で空席が多くなると、車内は涼しくなり、終点浅草へ。電車を降りると、ホームの気温が23.7度、湿度が74.6%まで上昇した(駅の暖房を使用していたのかは不明)。

■冬季の送風、除湿、冷房の目安は気温20度と見た

順番が前後したが取材日の午前は、日比谷線中目黒行きを利用した。

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北千住始発の中目黒行きが入線。乗車すると、車内はすでに弱めの暖房がかかっていた。11時11分に発車すると、車内の気温や湿度が徐々に上昇したが、暖房は弱めのままだ。

南千住を発車すると地下へ。八丁堀発車後、車掌は空調を弱めの暖房から送風に切り替える。車内の気温が20度の"大台"に達したのだ。霞ケ関停車中、除湿に変わり、涼しくて心地よい風が吹く。

恵比寿を発車すると再び地上へあがり、東京急行電鉄東横線に合流する。北千住発車時に比べると、車内の気温は7.4度、湿度は13.4%それぞれ上昇し、終点中目黒に着いた。

今回乗車した2つの列車とも、冬季は車内気温20度で暖房以外の空調を使用している。"地下鉄は地上の鉄道に比べ、車内の気温管理に神経を使う乗りものだ"と肌で感じた。

【協力:東京地下鉄】

Yahoo!ニュース個人より転載)