自民党では総括の会合が開かれないままの状態が続いており、党内で意見を述べる機会が全くありません。

石破 茂 です。

東京都議会議員選挙から2週間近くが経過しましたが、自民党では東京都連においても、党本部においても総括の会合が開かれないままの状態が続いており、党内で意見を述べる機会が全くありません。

民主党政権が誕生し、我々が野に下って初めての自民党大会でゲストスピーカーの野村克也氏が「負けに不思議の負けなし」という松浦静山の言葉を引用して「試合で負けた時にきちんと総括・反省・改善をしなければ次の試合も必ず負ける。野球も選挙も同じである」と述べられたことが鮮烈に印象に残っているのですが、今回もそうあらねば次回総選挙がかなり厳しい結果となることを強く危惧しています。

加計・森友問題は国政最大の問題ではありません。河合雅司氏が「未来の年表」の中で指摘しているように、我が国内政最大の課題は人類がいまだ経験したことのない急速な少子化と高齢化社会への対応であり、その財源の確保です。地方創生はその一環なのであって、「成功する里山ビジネス ダウンシフトという選択」(神山典士著・角川新書)からはいくつかの貴重な示唆を受けました。

外交・安全保障分野の最大の課題は激変する安全保障環境の変化に対応し得る法制と能力の整備であり、「武力なき正義は無力であり、正義なき武力は暴力(圧制)である」(パスカル)という言葉を今一度よく噛みしめなくてはなりません。

北朝鮮のICBM開発の進展が日本に突き付けているのは、米国の拡大抑止(核の傘)の信頼性に与える影響をどのように考えるかという点です。ICBMはSLBMと異なり、冷戦期の米ソでさえ一度も実験したことのない、考えてみればとても不思議な兵器なのですが、十数年前から既に北朝鮮は米軍基地が所在する岩国・佐世保・沖縄を含む西日本を射程に収めたスカッド・ノドンミサイルを相当数保有していたのであり、ICBMではなくても事態はその時から深刻であったはずです。

その時と現在の相違は「いつ・どこから・どれだけの数を撃たれるかわからなくなった」という点にあり、飽和攻撃への対応も含め、今の機会に明確な解を出す必要があります。「差し掛けられた傘 米国の核抑止力と日本の安全保障」(佐藤行雄元国連大使著・時事通信社)は今までの経緯を詳細に記した好著です。

最近必要に迫られて学生時代の法律学の教科書を読み返す機会があるのですが、40年以上を経て読み返してみると、新たな気付きがあったり、忘れていたことを思い出したりとなかなか有意義な時間です。

憲法改正の国民投票について清宮四郎教授は「(国政)選挙と同時の国民投票では、国民が選挙に気を奪われて、憲法改正の意味をよく意識しないで投票を行うおそれがあり、問題の重要性に照らし、憲法改正問題だけに国民の注意を集中させる『特別の国民投票』の方が望ましい」と述べておられますが(憲法Ⅰ新版 法律学全集第3巻 有斐閣)、然りと思います。

国民投票はあと1年半以内に迫った衆院選と絡めて報道されることも多いのですが、国政選挙と同時に行った場合、有効投票の過半数は得られたが、発議に賛成した勢力は3分の2を大きく割り込んだ、という一種矛盾した奇妙な事態が起こることも可能性としては十分予想されることであり、この点も併せてよく考えなくてはなりません。

週末は、16日日曜日が「時事放談」出演(午前6時・TBS系列・収録)出演。

17日海の日は、水産庁漁業取締船「東光丸」「白竜丸」乗船(午前8時半・晴海埠頭)、茨城県知事候補予定者「大井川かずひこ氏と語る会」にて講演(午後5時・高萩市文化会館・茨城県高萩市高萩)、という日程です。

都心はまるで梅雨が明けたかのような酷暑の日々が続いています。

皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

(2017年7月14日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)