中国:酒のラベルをつくって、「国家政権転覆扇動罪」?

27年前のことを記憶し、犠牲者を追悼しようという平和的な行為が、一体どんな罪に該当するというのか。

Open Image Modal

天安門事件を記念する酒のラベル。いくつかのパターンが作られたという。

■ 天安門事件から28年 今も自由に語れない

1989年6月3日深夜から翌4日未明にかけて、重装備の部隊と数百の装甲車が続々と北京市内に入った。民主化を求めて中国北京の天安門広場やその周辺に集まった学生や市民を、政府の命令を受けて排除するためである。部隊は民主化運動参加者や見物人に向かって銃を乱射、さらに、動けなくなった市民を装甲車で轢き殺した。殺された者の中には、子どもや老人もいた。

Open Image Modal

Copyright - Stuart Franklin:Magnum Photos

同年6月末に中国政府が発表した報告書では、一連の「反政府暴乱」の中で3,000人以上の市民が負傷し、36人の学生を含む200人以上が死亡、数十人の兵士も死亡したとされている。しかしアムネスティは、もっと多くの人々が殺害され、中国全土で数万人が逮捕されたと推測している。

この「天安門事件」から28年。事件について公に自由に語ることは、中国ではいまだに許されない。犠牲者に追悼の意を表そうとすることすら、時には「国家政権転覆扇動」の重罪に問われることがある。

■ 白酒のラベルで犠牲者の追悼を考えたが...

符海陸(Fu Hailu)さん(当時29歳)は四川省の省都、成都市在住。軍を除隊したのち、警備員などをしていた。

天安門広場で民主化運動が弾圧を受けていた頃、成都でも同様の弾圧があった。符さんはそのとき2歳6カ月。様子を覚えているはずはないが、2011年に浙江省温州で起こった大規模な鉄道衝突事故をきっかけに、さまざまな時事問題、政治問題に関心を持つようになり、1989年6月4日の出来事についても関心を持つようになったという。

符さんと陳兵(Chen Bing)さん(当時47歳)、張隽勇(Zhang Zinyong)さん(当時46歳)、羅富誉(Luo Fuyu)さん(当時41歳)の男性4人は、昨年(2016年)の天安門事件27周年を前に、事件の犠牲者をみんなで追悼する方法はないか、考えていた。

いろいろ考えた結果思いついたのが、事件を記念するラベルの「白酒」(パイチュウ)を作ること。白酒は中国で乾杯の際によく飲まれる蒸留酒である。

4人は、9,000元(15万円くらい)で酒とボトルを仕入れた。そして、事件があった1989年6月4日を表す「8964」と同音の読みをする「八酒六四」と言う文字を入れ込んだ「銘記八酒六四」のラベルを作り、ボトルに貼り付けた。「銘記」とは、日本語と同じく「心に刻みつける」という意味である。

そして5月26日、符さんと張さんはネットでメッセージを発信し、2本で89.64元の値をつけて販売した。「89.64元」と言う値段ももちろん、「1989年6月4日」にちなんだものである。このメッセージは、多数の人たちに転送され、この酒は数十本売れた。

■ 4人の即時無条件の釈放を

Open Image Modal

「国家政権転覆扇動」容疑で起訴された4人。左上から時計回りに、陳兵さん、符海陸さん、張隽勇さん、羅富誉さん。

27年前のことを記憶し、犠牲者を追悼しようというこの平和的な行為が、一体どんな罪に該当するというのか。しかし中国当局はこれらの行為を、「国家政権転覆扇動」にあたるとした。

4人は同年5月から6月にかけて逮捕された。拘束当初は3カ月もの間、弁護士との接見も許されなかった。そしてその後、今年(2017年)の3月になって、「国家政権転覆扇動」の容疑で正式に起訴された。

アムネスティはこの4人は、誰もが有する「表現の自由」を行使したがために拘束された「良心の囚人」であると考えている。彼らは罪に問われてはならない。即時無条件に釈放されなければならない。

中国では、彼らのように天安門事件にまつわる言動を理由に、またそれとは別の理由でも、表現の自由をはじめとする基本的な権利を行使したが故に、拘束・投獄されている人が多くいる。

こうした人たちのことを知り、救援のための活動に参加してほしい。

▽ 参考記事:中国の人権状況について

(アムネスティの国別人権状況レポート2016/17」より)

(アムネスティ・インターナショナル日本)

--------------------------------

■ 私たちにできること

アムネスティでは、記事で紹介した4人の自由を求めるキャンペーンを行っています。28年前の天安門事件で何があったのか思い出してみてください。そして中国では、天安門事件の犠牲者を追悼することなど、事件について公に語ることが今でも許されていないことにスポットを当て、キャンペーンに参加しましょう!キャンペーンの参加方法は簡単です!

SNSで広める

アムネスティも、天安門事件を題材にしたお酒のボトルラベルを作りました。この画像を使って、@amnesty_china がメッセージを発信するので、それをシェアしてください!または、ご自身がお使いのSNSで、ハッシュタグ #toasttoremember をつけて、下記のような写真とメッセージを投稿して広めてください。

Open Image Modal
  1. お酒を注いだグラスを手に持ち、乾杯のポーズを取った写真を撮る。
  2. 表情は、ちょっと怒った顔で。なぜなら、私たちは天安門事件の真相究明がまったく進んでいないこと、天安門事件を白酒のボトルにデザインしたことだけで符海陸さん、陳兵さん、張隽勇さん、羅富誉さんが罪に問われていることを怒っているからです。
  3. 天安門事件に関する思いや、4人にエールを送るメッセージをつけて投稿する。

中国当局に手紙を書く

下記のサイトを参考に、白酒ラベルを作成した4人の即時無条件釈放を求める手紙を、中国の当局者に送ってください。

**************************************************************

▽ アムネスティ・インターナショナル日本 公式WEBサイト

▽ アムネスティ・インターナショナル 公式Facebook

▽ アムネスティの資料を請求する

※人権に関するさまざまな話題を取り上げた情報誌をお届けします。

▽メールマガジンを読む(毎週木曜日・無料配信)

**************************************************************