アメリカ・ニュージャージー州で、トランスジェンダー女性の女性用トイレ使用への不満を言い続けた妻を撮影していた人たちに、夫がビールを浴びせかけてそれぞれが互いをハラスメントで訴えている。
問題が起きたのは4月24日、あるレストランを訪れたリサ・スモロー氏が、トランスジェンダー女性が女性用トイレを使っていると何度も不満を訴えた。
ニュージャージ州は、性自認による差別を州法で禁じており、性自認に応じたトイレを使うことを認めている。
しかし、リサ・スモロー氏は「男性が、女性トイレに入ってきたんです。こんなことがあっていいわけはない。彼女は男性なんです。それなのにトイレにいた」など、トランスジェンダー女性を男性と扱うような、差別的発言を繰り返した。
別のテーブルにいた人物が、この様子を撮影。近づいてきたリサ・スモロー氏に「ヘイトスピーチは、どこか別の場所でやってください」と伝えると、夫のマイケル・スモロー氏が「これでもどうぞ」と言って、グラスに入っていたビールをテーブルにいた人物に浴びせかけた。
マイケル・スモロー氏は、ニュージャージー州モンマス郡のネプチューン中学校で教頭を務めている。
同氏はその後、AP通信の取材に「感情が高ぶって冷静な判断ができず、不適切な反応をしてしまいました」「私はいかなる暴力や差別も許容しません。何もせずにあの場を立ち去るべきでした。ビールをかけてしまった相手と、不快に感じた全ての人にお詫びします」と述べ、自分の行動を謝罪した。
また、スモロー氏が勤める中学校のあるネプチューン学区は、スモロー氏の行動について「あらゆる人を受け入れ、互いに連携し、敬意を払い、暴力を否定するという私たちの学区が掲げる誓約に沿わない行動だ」と非難する声明を4月に発表している。
この出来事で警察への通報はなかった。しかしマイケル・スモロー氏とビールをかけられた人たちがそれぞれお互いをハラスメント行為で訴えている。
スモロー氏を訴えたのは、デボラ・ハリス氏とロバート・ハリス氏、そしてエレイン・ネルソン氏の3人だ。
他にも、ビールがかかったと主張するふたりも提訴したが、裁判所は提訴理由が十分でないとして、訴えを棄却した。
デボラ・ハリス氏とロバート・ハリス氏の代理人を務めるデヴィッド・シャニーズ氏は、「原告はトランス嫌悪のヘイトスピーチを拒否し、その結果マイケル・スモロー氏がビールをかけ、喧嘩をけしかけ、原告らに対して虚偽で根拠のない訴訟を起こしました。我々は脅しに屈せず、マイケル・スモロー氏に対して、彼のとった行動に対する責任を求めます」と述べている。
両原告の審理は、5月27日に開かれる予定だ。