もしハチがいなければ、スーパーマーケットは消えるのか(画像)

スーパーに行けば、チョコレートやリンゴ、レモン、スイカやミルク入りのアイスコーヒーなど、買いたいものがたくさんあることだろう。けれども、そうした食べ物の多くが消えてしまうかもしれない。
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Whole Foods Market / PRNewsFoto

スーパーに行けば、チョコレートやリンゴ、レモン、スイカやミルク入りのアイスコーヒーなど、買いたいものがたくさんあることだろう。けれども、そうした食べ物の多くが消えてしまうかもしれない。 

「ハチがいる場合」「いない場合」の2種類の写真を比較してみよう。

蜂がいる場合、スーパーマーケットは下記のような風景だが…

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蜂がいなくなると…様変わりする。

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もう一つ見てみよう。

蜂がいると…

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蜂がいなくなると…

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 ハチ、甲虫類、チョウといった昆虫は、植物の受粉を助けており、花粉媒介昆虫と呼ばれる。こうした昆虫たちは、人間が食べる作物のおよそ75%を生産する上で欠かせない存在だといわれている。彼らがいなかったら、数多くの食品が消えてしまうのだ。

花粉媒介昆虫は記録的な速さで死に絶えているが、科学者たちはいまだにその原因を解明できていないネオニコチノイド系の殺虫剤のほか、花粉媒介昆虫たちのエサ不足ダニなどが原因として挙げられているが、決定的な説はないとされる。

現在、ヨーロッパに生息するマルハナバチの4分の1が絶滅の危機に瀕していると伝えられている。ほかにも、花粉媒介昆虫の一種で、渡り鳥のように大移動を行ない、人々に愛されている美しいチョウのオオカバマダラ消滅の危機にある

こうしたなかで、かねてから持続可能性の重要性を訴えてきたアメリカの高級オーガニック食品チェーン「ホールフーズ・マーケット」は、2013年に、花粉媒介昆虫に依存する果物や野菜のすべてを売場から撤去してみるというイベントを開催した

同社が行なうハチの保護活動「Share The Buzz」の一環として、花粉媒介昆虫がいなくなった場合に、スーパーはどんな風に変わるのか、その様子を人々に対して突きつけたのだ。

店頭からは237品目、通常の構成商品の52%が取り除かれた。そして同社は今年、花粉媒介昆虫が関係する範囲を果物や野菜だけでなくほかの売り場にも広げ、果物入りヨーグルトやジャムなどを売場から撤去してみた。

ホールフーズ・マーケットは、公開した写真に「ハチがいた場合」「ハチがいない場合」と注釈を添えている。それは、ハチが最も知られた花粉媒介昆虫だからだが、実際には、ハチだけではないさまざまな種類の花粉媒介昆虫がいなくなった場合を想定して、影響を受ける食料品を売場から撤去している(驚いたことに、こちらの資料(英文PDF)によると、チョコレートはハエが受粉するのだという)。

ホールフーズ・マーケットの国際食品調整部門幹部エロール・シュバイツァー氏は、米ハフポストの取材に対して「花粉媒介昆虫がいなかったら、わが社はほとんど仕事になりませんし、人々も現在の生活レベルは維持できなくなります」と述べた。「食料品は70%減少するでしょう。花粉媒介昆虫なくしては、食料システム(食料消費を最終点とする経済活動の総称)が危うくなるのです」

「解決策は複雑なものだとは思いません。オーガニック農場では(除草剤などを使わないことで複雑で多様な生態系が保たれるため)、花粉媒介昆虫たちは天然の食物を得ることができます。(消費者が)オーガニック食品を購入することが大きな助けになることは間違いありません」

生物多様性に欠かせない無脊椎動物の保護を行なう非営利団体「Xerces Society」の事務局長スコット・ブラック氏は長年にわたり、ホールフーズ社と協力しあいながら、消費者教育や、花粉媒介昆虫減少の根本的原因への対応を行なっている。自分たちの活動は、何かと見落とされがちな「食物連鎖の最下段」を守ることだとブラック氏は言う。

「私たちが口にする全ての食料品の3分の1は、花粉媒介昆虫に依存しています」とブラック氏は米ハフポストに述べた。「花粉媒介昆虫は、私たち人間が生命を維持するために欠かせない存在ですが、生態系全体にとっても必要不可欠です。顕花植物の85%は、昆虫などの動物による受粉を必要としています。ハチたちは受粉を行なうことで、ヒバリやスズメ、ハイイログマに至る、すべての動物たちに食料を提供しているのです」

[Nick Visser(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]