体の中に蓄えられた有害な化学物質を排出するデトックス(解毒)作用を求めて野菜ジュースを飲む人は多いかもしれない。その効果は科学的には明らかではないが、デトックス作用を実際に持つと見られる野菜は存在する。
学術誌『Cancer Prevention Research』(ガン予防研究)に2014年6月9日付けで掲載された研究論文(PDF)によると、ブロッコリーの新芽(スプラウト)には、日常環境から体内に取り込まれる毒性物質を、体内から除去する作用を促進する働きがあることが実証されたという。
中国と米国の研究者たちは、深刻な大気汚染で有名な、揚子江デルタ地帯にある江蘇省啓東市で、12週間にわたる研究に参加する住民を募集し、291人を採用した。実験参加者は、ランダムに2つのグループに分けられた。
一方のグループは、毎日コップ半量の「ブロッコリー新芽由来飲料」を飲み、もう一方の統制群はプラシーボとして、パイナップルとライムのジュースを飲んだ。
実験の前と、実験中に採取された尿の成分を比較したところ、実験中は、尿中に含まれる「解毒された物質」の濃度が急速に上昇し、濃度の高い状態が持続したことを示す、統計的に有意な結果が得られた。
ベンゼンやアクロレインは、接着剤やペンキのほか、洗剤などの家庭用の掃除製品、タバコの煙、車の排気ガスなどで汚染された空気などに含まれ、呼吸の際に体内に取り込まれる化学物質だ。過度にベンジンに曝された場合、細胞は正常に機能しなくなる。また、アクロレインに曝された場合、目や気管の炎症を引き起こす可能性がある。
ただし、研究者たちが計測していた別の汚染物質であるクロトンアルデヒドに関しては、ブロッコリー新芽の解毒効果はまったくなかった。
啓東市では、肺ガンの発症率が過去40年で3倍に増加し、深刻な問題となっている。ブロッコリー新芽の効能を示す研究成果によって、体内の発ガン性物質の濃度を低下を促進する、安価で手軽な方法の開発につながる可能性がある(ジョンズ・ホプキンス大学のポール・タラレーらは1994年に、ブロッコリー新芽に含まれるスルフォラファンに、解毒酵素の生成を活性化する働きがあり、がん予防効果があると発表した。この結果、アメリカではブロッコリー新芽のブームが起こり、野菜コーナーに並ぶようになった)。
ただし、科学者がこのつつましい野菜に「抗ガン性」の太鼓判を押すまでには、さらに多くの研究が必要だ。今回の論文著者のひとりで、ジョンズ・ホプキンス大学とピッツバーグ大学医学部の研究者であるトーマス・ケンスラー氏は、アメリカの公共ラジオネットワーク「NPR」で、次の段階の研究について以下のように説明している。
ブロッコリーなどのスーパーフードが、実際に癌やほかの病気を防ぐかについては、研究者はまだ確実なことは言えない段階だ。しかしケンスラー氏は、「体内の発ガン性物質の量が少なければ、ガン発症のリスクも低いと推定される」と述べる。「将来的には、このアプローチを数カ月、あるいは数年間続けた場合に病気を抑制できるどうかを調べる、信頼性の高い試験を行う必要がある」という。
[Anna Almendrala(English) 日本語版:丸山佳伸、合原弘子/ガリレオ]
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