年間1億円以上を稼ぐNPOメディア「テキサス・トリビューン」の3つの特徴

テキサス・トリビューンは、テキサスの政治トピックを追うローカルメディアです。加えて非営利という形をとっているのも特徴と言える点です。非営利の背景にはどのような考えがあるのでしょうか。
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「テキサス・トリビューンが論説サイト「TribTalk」をリリース」という記事でも紹介した非営利の地域メディアで知られる「テキサス・トリビューン」。 オースティン・ベンチャーズのベンチャーキャピタリストであるジョン・ソーントン氏が中心となり創設したメディアです。

2009年のスタート前、400万ドル(4億円)の寄付や出資を集め、優秀なジャーナリストらでメディアをつくることに。CEO兼編集長には、テキサスの月刊誌「Texas Monthly」にて18年間在籍し、編集長も務めたエヴァン・スミス氏が就任。

現在ではピューリッツァー賞受賞記者などをはじめ、現在は50名ほどの体制で運営しています(フルタイムスタッフは18名)。この記事ではこのメディアの特徴を大きく3つ紹介します。

1. インタラクティブデータが人気

テキサス・トリビューンは、まちの政治や調査報道はもちろん、インタラクティブなデータベースも作成しており、トラフィックの3分の1はデータページに集まっています。

2013年には、年間で600万人ほどが訪問、4000万ページビューを記録。つまり、1300万PVほどがデータが見られている数字となるようです。ローカルメディアとしてはデータを活用することも珍しいですが、それがしっかり読まれているのも素晴らしいです。

まちの負債や渋滞する道路ランキング、投票結果など、政治を中心に、まちの人が気になる社会課題や暮らしの問題をデータで表現し、公開しています。

2. 年間70回以上のイベントを開催

テキサス・トリビューンのすごいところはその収益にもあります。2013年には120万ドル(約1.2億円)を記録しており、ローカルメディアとしては多額なのではないでしょうか。

マネタイズのひとつはイベントで、毎月平均5回もイベントを開催しています。イベントには企業スポンサーが付くことも多く、直近のイベントではグーグルがスポンサーになっていたり、複数スポンサーが付いているものもあります。

また、ファンドレイジングで300万ドル(約3億円)を集めています。寄付ページをみると、コミットしている人の名前を掲載しているのもエンゲージメントやファン化につながるのでしょうか。

収益の内訳は、企業スポンサーとイベントで半分、4分の1が個人寄付、4分の1が財団からの寄付、さらに4分の1が会員からといった具合です。

3. ローカル&非営利

テキサス・トリビューンは、テキサスの政治トピックを追うローカルメディアです。加えて非営利という形をとっているのも特徴と言える点です。非営利の背景にはどのような考えがあるのでしょうか。

――調査報道は構造的にもうからない?

ハーン 面白いインターネット新聞がテキサスにあります。「テキサス・トリビューン」です。ベンチャーキャピタリストのジョン・ソーントンが昨年夏に立ち上げたNPOで、テキサスの政界動向について独立した視点で報道するのを目的にしています。

調査報道について彼のスピーチを聞いたり、彼から直接話を聞いたりする機会がありました。彼はベンチャーキャピタリストですから、最初に厳密なビジネスプランを作りました。そこで下した結論が「調査報道でカネもうけはできない」でした。

だからこそジョンはNPOを選んだのです。彼自身も資産家ですが、NPOであれば広く寄付を集められます。実際、テキサスの著名な資産家や有力な慈善財団から資金調達しています(「企業乗っ取り屋」と呼ばれたT・ブーン・ピケンズも、テキサス・トリビューンに寄付した富裕個人の1人)。

調査報道NPOのウォッチドッグ創業者インタビュー「ジャーナリズムはビジネスになるのか」 「調査報道は公共サービス」「広告を出すスポンサーなんて皆無です」

上記文章にある「調査報道」。毎月数本のペースで記事がアップされているので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

インタラクティブデータ、 イベント、ローカル&NPO、という3つの特徴を紹介しました。日本でも地域ならではのデータ活用やマネタイズについては今後期待していきたいところです。

テキサス・トリビューンをはじめとする海外のNPOメディア、そして国内メディアの現状について以下にまとめる機会がありましたので、関心ある方はぜひご参照ください。

国内外のNPOメディアの主要事例を紹介ーー社会を変える情報発信のヒント from Sato Keiichi

【参照】

(2014年9月23日「メディアの輪郭」より転載)