モンゴル出身の大関・照ノ富士が大相撲春場所14日目(3月25日)に関脇・琴奨菊に勝利したが、この取り組みについて観客のヤジ「モンゴル帰れ」という言葉を見出しにしたニュース記事に対し、外国人に対する差別的な「ヘイトスピーチだ」といった批判が相次いでいる。
問題となっているのは、「スポーツ報知」が3月26日に配信した記事。見出しは「照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!『モンゴル帰れ』」となっている。
3月26日「スポーツ報知」の記事(一部、編集部で加工しています)
25日の取り組みで照ノ富士は、立ち合いで変化。「はたき込み」で琴奨菊を破り、古傷の左膝を痛めた中で1敗を死守。翌日の千秋楽へ優勝の可能性をつないだ(なお、千秋楽の優勝決定戦では横綱・稀勢の里に敗れた)。
照ノ富士(奥)は琴奨菊をはたき込みで下した=25日、エディオンアリーナ大阪
一方の琴奨菊は、敗れて6敗目。大関復帰に必要な10勝を果たせなくなり、1場所での返り咲きを逃した。
取組後、立ち合いで変化した照ノ富士に対し、会場の観客からは激しいブーイングが飛んだ。この時の様子をスポーツ報知は、以下のように伝えている。
観客は驚きで一瞬静まり、激しいヤジが飛び交った。「モンゴルに帰れ!」「恥を知れ!」。期待外れの結末を受け、観客は不満を怒りに変えて大関に浴びせた。協会幹部も落胆を隠せない。土俵下の二所ノ関審判部長(元大関・若嶋津)は「がっかりした。(横綱に)上がる人がね…。ブーイングも分かるよ。優勝したら綱取り? 内容(の問題)もあるしな」と苦い顔。八角理事長(元横綱・北勝海)も「勝ちたい気持ちは分かるけど、大関だからね。お客さんが見てるわけだから。残念」と苦言を呈した。
(照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!「モンゴル帰れ」 : スポーツ報知より 2016/03/26 6:00)
Twitterでは、「モンゴルに帰れ」というヤジが「人種差別」「ヘイトスピーチだ」と問題視する声が出ている。さらに、このヤジを見出しにしたスポーツ報知の記事についても批判が相次いでいる。
2016年6月、外国人に対する差別的な言動の解消をはかるために「ヘイトスピーチ対策法」が施行されたが、これを受けて法務省では「ヘイトスピーチ」の具体例をまとめている。その中では「地域社会からの排除をあおる言動」の例として「○○人はこの町から出て行け」「○○人は祖国へ帰れ」が挙げられている。
ジャーナリストの津田大介さんは「法務省がガイドラインとして『アウト』と示しているのにそれを否定せず(何なら肯定的な文脈で)見出しに使う報知新聞が一番アウトではこれ……」とコメントしている。
「スポーツ報知」では2015年8月、全国高校野球選手権大会に出場していた関東第一高校のオコエ瑠偉選手(現楽天)について、「野性味全開」「本能むき出し」 などと、ナイジェリア出身の父を持つオコエ選手をアフリカの動物にたとえたような表現をしたことで、批判を受けた過去がある。報知新聞社は当時、ハフィントンポストの取材に対し「記事へのご批判があった事実を真摯に受け止め、今後の報道に生かしたいと考えます」とコメント。オコエ選手に関する記事を削除した。
ハフィントンポスト編集部では27日午後2時ごろ、報知新聞社・東京本社に取材を申し入れた。同日午後6時ごろ、改めて報知新聞社・企画本部に質問をメールで送付した。回答があり次第、記事を更新する。
【UPDATE】2017/03/28 14:53
報知新聞社は、ハフィントンポストが質問状を送付した翌日の28日、インターネット上の記事の見出しから「モンゴル帰れ」の部分を削除した。また、記事本文の「モンゴルに帰れ!」「恥を知れ!」などのヤジ紹介部分も削除した。
【UPDATE】2017/03/30 22:04
報知新聞社は29日、公式サイト上で「26日付の紙面およびスポーツ報知HPで掲載した大関・照ノ富士関の記事と見出しで、観客のヤジを記述した部分に、ヘイトスピーチを想起させる表現がありました。人権上の配慮が足りず、不快な思いをされた皆様におわびします」と、「おわび」を掲載した。
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