二十四節気の一つ「啓蟄(けいちつ)」 冬眠していた動物たちが活動し始める春へ

上巳(じょうし)の節句・ひなまつりも過ぎ、3月5日は、二十四節気「啓蟄(けいちつ)」。七十二候では「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となりました。
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上巳(じょうし)の節句・ひなまつりも過ぎ、本日3月5日は、二十四節気「啓蟄(けいちつ)」。七十二候では「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となりました。徐々に気温があがり、時にぽかぽかと降り注ぐ春の陽気に誘われて、土の中で冬を過ごした虫たちが姿を現し始めます。寒暖の差も激しい折、体調管理にもいっそう気を配りたい時節がやってきました。

地中に籠っていた虫や小動物が、新しい活動へ目覚めるころ「啓蟄(けいちつ)」

二十四節気の一つ「啓蟄(けいちつ)」は、旧暦では2月の節。太陽暦では3月の5日か6日(今年は5日)に当たり、天文学的には太陽の黄道が、345度になったときをいいます。

七十二候も本日より、「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」となりました。

「啓蟄」と「蟄虫啓戸」の意味合いをひもとくと、

「啓(けい)」とは、「ひらく」の意。「蟄(ちつ)」とは、「虫や動物が土の中などに隠れて冬籠もりをする」という意味で、

......蟄伏(ちっぷく)していたものが、啓(ひら)かれる。

すなわち、土の中でちぢこまって冬眠していた小動物、蛇や蛙、虫などが再び地上に姿を現し、活動を開始するころをさすのです。

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この時節に鳴る「春雷(しゅんらい)」のことを「虫出しの雷」と言ったりも

春めいてくると、気候もどこか不安定になり、大風が吹き嵐になったりしますね。春によく見られる雷は、寒冷前線が通過するときに生じるもの。「春雷(しゅんらい)」と呼ばれ、春の季語にもなっています。

立春を過ぎてから初めて鳴る雷のことは、「初雷(はつらい)」。さらに「啓蟄」の頃によく大きな雷が鳴ることからも、このころの雷のことを、昔の人は「虫出しの雷」と呼んでいました。

時に雹(ひょう)を降らせるこの雷の合図にびっくりして、冬ごもりの虫や小動物たちが眠りから覚め、活動を始めると考えられていたようです。

実際に小さな生き物たちが冬眠から目覚め活動を始めるのは、その日の気温が5度以下に下らないことが条件だとか。雪が舞う北国ではまだまだ先の話になりそうですね。

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植物が芽を出す「木の芽(このめ)どき」。不調も多い季節の変わり目です

虫たちが穴からはい出てくる頃は、ちょうど「木の芽どき」。樹木や草が、新しい芽を吹くころでもあります。

季節の変わり目は常に体調の変動が起きやすいものですが、この「木の芽どき」は、一年で最も体調を崩しやすい時期かもしれません。

新しい芽が出てくる春は、人の体も冬の寒さから開放されて、新陳代謝が盛んになってきます。そこで多量に必要になってくるのが、ビタミンやミネラルなどの栄養素。けれども自然の食べ物は、前年の秋に実ったものが多いうえに、春は発芽を迎えるので、どうしても栄養分が低下してしまいます。そんなことからも春の倦怠感が生まれる原因になっているのでしょう。

さらに、冬の寒い時期に体内に蓄積した老廃物や翼血(おけつ)などが、気温が高くなるとともに体表に出てきやすくなることから、アレルギーなども発生しがちです。また、気候の変動、環境の変化も多いため、自律神経失調や精神的なアンバランスも生じやすい「木の芽どき」。のぼせやすくもなりますので、頭寒足熱を心掛け、できるだけゆったり過ごすことが大事なのかもしれませんね。

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蕨(わらび)やぜんまい、ウド、つくしなどもにょきにょき地上へ伸びてきます

この時期の不調を癒すために、昔から私たち日本人がしている生活習慣が、春の若草をいち早く摘んで食べること。

フキノトウ、蕨、ゼンマイ、タラの芽...栄養分のバランスを整えるためにも、解毒のためにも、ほろ苦くエグ味のある山野菜や緑のものを努めて食べたいものですね。

なかでも蕨は、山奥に入らなくてもちょっとした山や野で採れる、比較的身近な山菜。

万葉集で志貴皇子(しきのみこ)が

~~石激る垂水の上のさわらびの 萌え出づる春になりにけるかも~~

と詠んだように、蕨の新葉は「早蕨(さわらび)」と言い、古くから食用とされていたようです。

また、悠久の都・奈良の若草山は蕨が採れることでも有名ですね。ちなみに鹿たちはお腹をこわすらしく蕨は食べないそうなので、人間たちがこぞって春の恵みをいただけるというわけです。

漂ってくる陽気に誘われ、地上にあふれる生命力。

すべてが生き生きと活動を始める「啓蟄」の時節がやってきました。

※参考・出典/春の食養生(惠木弘著)

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ゴトウヤスコ

ライター

広告コピー、雑誌記事、インタビュー記事などを多数執筆。カルチャー、ビジネス、日本の伝統文化・ものづくり、食など多岐にわたる分野に守備範囲を広げ、言葉で人と人をつなぎ、心に響くものごとを伝える。