在宅勤務、30〜40代の男性にとっても必須の働き方に

専門家は今後、30〜40代の男性にとっても在宅勤務制度が必須となる時代が来ると分析している。
|

在宅勤務の普及に向けて、政府が本腰を入れはじめた。政府自らが手本となって在宅勤務の推進を行うほか、在宅勤務を導入しやすい制度整備も検討する。

在宅勤務は決して、子育て中の女性だけが対象の話ではない。専門家は今後、30〜40代の男性にとっても在宅勤務制度が必須となる時代が来ると分析している。

■政府自らがお手本となって在宅勤務を推進

消費者庁は7月1日から9月までの3カ月間、管理職全員に週1回の在宅勤務を義務付けると発表した。課長・室長以上の管理職にタブレット端末を支給し、業務を自宅で行えるようにする。子育てや介護中の職員が在宅勤務をしやすくなるよう、管理職の理解を広げることが狙いで、9月以降は段階的に対象を広げる予定だ。

このような取り組みを行うのは、実際に在宅勤務を利用する人が日本全体でも少ないという状況を打開するためだ。政府自らが手本となることで、企業に対しても推進に発破をかけられる。

安倍政権は2013年6月、週1日以上終日在宅で就業する雇用型在宅型テレワーカー(在宅勤務者)の数を、2020年に全労働者数の10%以上にすると宣言した。2013年度の在宅勤務者の数は全国でも260万人。全就業者の4.5%に過ぎず、これをどのように増やすかが課題となる。

■「在宅勤務」と「在宅ワーク」は別の言葉

在宅勤務が普及していない現状について、専門家は用語が整理していないことをひとつの理由にあげている。企業に対して在宅勤務導入支援を行っている、テレワークマネジメントの田澤由利さんは、「『在宅勤務』や『在宅ワーク』『テレワーク』などの複数の言葉が、ごちゃごちゃに理解されており、誤解が生じている」と分析する。

在宅勤務は、安倍政権が推進している「テレワーク」の一つの形を表す。テレワークは、ITC(情報通信技術)を利用することで、会社や店舗などから離れ、場所や時間にとらわれずに柔軟に働くことを意味する造語。このテレワークは在宅勤務を含め、4つの型に分類できると、田澤さんは説明する。

Open Image Modal

会社の社員として雇用されて働く「雇用形」なのか、自営で働く「自営型」なのか。さらに、基本的には自宅で仕事をする「在宅型」なのか、それとも、自宅ではなく移動が伴う「モバイル型」なのか。これらの特性によって、次のように分けられる。

(1)企業に雇用されつつ移動しながら業務に従事する「営業担当」や出張の多い社員。

(2)企業に雇用されながら自宅で業務にあたる「在宅勤務者」。

(3)自宅だけでなくコワーキングスペースやカフェ、取引先などを移動しながら自営で仕事をする「SOHO」や「ノマド」、「フリーランス」で移動の多い人。

(4)会社に属さず、外に出にくい状態であるため自宅で仕事を行う「在宅ワーカー」

この分類がわかっていないと、「在宅勤務は主婦が行うもの」だとか、「在宅勤務になると会社を辞めなくてはいけないのではないか」など誤った認識のもととなってしまう。

■在宅勤務は30代、40代の男性にも必須の働き方になる

Open Image Modal
構想日本のフォーラムでテレワークについて説明する田澤さん(2014/06/24)

在宅勤務の普及については、社員の管理が難しいと考える企業側の懸念や、在宅勤務によって過重労働になるのではないかと考える雇用者側の懸念も壁になっていると田澤さんは話す。しかしこれらは、ITCの発達により解決できるものでもあり、そのITCを導入するための補助金も、2014年4月から拠出される制度ができた。

在宅勤務を負い目に感じることや、在宅勤務を許さないような雰囲気、自分には関係ないとする考え方があることも、在宅勤務の普及を妨げている大きな原因だ。田澤さんは、在宅勤務は決して子育て中の女性だけが対象の話ではなく、現在30〜40代の男性にとっても、在宅勤務が必須の制度になるような時代が来ると指摘する。男女雇用機会均等法の施行によって男性とともに女性が社会に出て働くようになったことで、親の介護を担う人が変化することが考えられるためだ。

「50代の方ならば、妻に親の介護をお願いできる人もいるでしょう。しかし、共働きが増えている30代、40代の人は、妻も働いている場合が多い。また、独身男性が増える一方、少子高齢化で兄弟の数は減っている。いざというときに、夫が、男性が介護を行うということは十分に考えられる。場合によっては夫も妻も、両方介護を行うことがあるかもしれない。そんな時に、在宅勤務の制度が勤め先にあれば、仕事を続けられる」

Open Image Modal

■育児中の人にも、在宅勤務の普及へ

もちろん、育児中の人にとっても、在宅勤務は仕事を続けられる方法の一つとして、重要な位置づけになる。政府は育児中の人を対象に、在宅勤務を普及する方針で、現在は月11日以上働くと貰えない育児休業給付を、時間単位でも認めるように変更することを検討する。

在宅勤務で1日の労働時間を4時間程度に抑えながら20日間働いても、給付の対象になるなどの案もあり、制度が認められれば、給料と育児休業給付の両方を受け取ることが可能になる。

Open Image Modal
Open Image Modal

※育児休業給付は2014年4月より支給額が変更されています

なお、育児休業給付は、夫と妻の両方が支給対象になっており、2人同時に取得することも可能だ。

子育て、介護、ワーク・ライフ・バランスなど、在宅勤務によって改善が期待される点は多くある。一方、IT関連以外の様々な産業での実施はまだ進んでいないなど、分野・企業規模を問わずに誰でもテレワークができるような 「ノウハウ」「設備」「社内の制度」の整備も急がれる。政府は今後、子育て・介護のためのテレワーク活用好事例の事例集を作成し、広く周知することも予定しており、普及が期待される。

【関連記事】

Also on HuffPost:

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています