「天国に行くとき、最後のお別れを最愛の人と手をつないで迎えたい」同性婚が認められたら、できること。

同性婚訴訟の原告カップルたちが、提訴を終えこれから始まる裁判への思いを語りました。
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提訴後に会見を開き、現在の心境について語る原告ら
Huffpost Japan/jun tsuboike

本当の自分の気持ちを隠して生きる。本当の自分でいることが「おかしいこと、いけないこと」だと思って生きる。

そんな世界を変えて、好きな人と堂々と一緒に暮らし、そして結婚できる世の中にする第一歩が2月14日、踏み出された。

同性間での婚姻ができないのは憲法違反であるとして、全国4地裁に一斉提訴をした原告の同性カップルたち。

入院するときに、家族として同意書を書ける。

家族として、自分が亡き後に子どもを託せる。そして最期の瞬間は、最愛の人と手をつないで迎えたい━━。

東京地裁へ訴状を提出した当事者たちが、訴訟について、そして結婚とは何かを記者会見で語った。

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いままでを振り返って今回の同性婚訴訟について話す中島愛さん(左)とクリスティナ・バウマンさん
Huffpost Japan/jun tsuboike

配偶者ビザがあれば、これから先も一緒に暮らせる

ドイツで結婚したクリスティナ・バウマンさんと中島愛さん。現在学生ビザで滞在するクリスティナさんは、学校に通う期間が過ぎれば日本に滞在することはできない。

この現状を「アンフェア」だと中島さんは語る。

私たちはドイツで結婚しているのに、2人が同性というだけで日本では関係を認められていません。そして、ティナさんには配偶者ビザが出ないため、日本で一緒に暮らすことも容易ではありません。これは一言でアンフェア。私たちは不平等な扱いを受けています

 今回の流れについては「本日裁判所に提訴して、改めて日本という社会でも同性婚を認めてもらう大きな一歩になってほしいと事の大きさと共に責任を感じています。私たちだけでなく、社会的に認められず不当な扱いを受けている仲間たち、そして応援してくれる家族や国内、そして海外にいるたくさんの友人のためにも今回の提訴が日本のLGBTQの認識を変える流れの一歩になり、将来的には日本でも同性婚ができることを強く望んでいます」と思いを寄せた。

 一方、クリスティナさんは「普通の夫婦」という言葉を使って、「普通」である状態を手にできない立場を説明した。

私の祖国では、私と愛さんは正式に結婚しています。私たちは心から尊敬しあい、一時の恋愛感情だけで結婚を望んでいるのではない。日本の国を相手に訴訟を起こすことはとても衝撃的に見えるかもしれませんが、私たちの願いは法的に認められ、安心して幸せに一緒に生きていく『普通の夫婦』のように結婚したいということだけです

そして、日本への思いを次のように語った。

私は、日本が大好きで、愛さんと一緒に日本に住むことを決めました。ずっと日本で暮らし続けたいし、将来は日本がドイツのようなオープンで住みやすい国になってほしいと思っています

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バレンタインデーにちなんで「結婚の自由をすべての人に」をテーマにしたチョコレートが用意された
Huffpost Japan/jun tsuboike

ゲイであることを隠して生きてきた。最期は最愛の人と迎えたい

佐藤郁夫さんは、30代までずっと自分のセクシュアリティを隠して生きてきたことを振り返った。

会見では、顔や名前を出せないパートナーに代わって、パートナーの思いを代読した。

顔出ししないで原告になっていますが、本当はパートナーと一緒に、いつも通りに並んでいたい。それができないのが現状です。でもこの裁判で勝って、最後には顔を出して笑って終わりたいと思います

そして、パートナーについて「隣にいるはずの僕のパートナーが記者会見にはいません。会社や家族にカミングアウトしていないからです」と説明した。

佐藤さん自身も、ずっと自分の性的指向を「おかしいこと、いけないこと」と思い込んで過ごしてきた。

僕も30代くらいまで、ゲイであることを隠して生きていました。ゲイであることはおかしいこといけないことだと思ってずっと生きていたのです。学校や会社では、本当の自分のことを話せなくて苦しかった。生きていくうえで居場所がなくなること、繋がりが失われることが一番きついです

いまはオープンにして生活できているが、訴訟を決めたときの思いを「あの時と同じような気持ちを若い世代の人たちに感じてほしくない。そう思って原告になりました」と語った。

佐藤さんは、HIV陽性者だ。以前の「不治の病」というイメージから、コントロールできる病気という認識に変わってきたものの「服薬をすることで長生きができる時代になりましたが、それでも死が近くにあると感じながら生きています。僕が天国に行くとき、最後のお別れを最愛の人と、手をつないで迎えたい。臨終の場には家族しか入れないので、その願いはいまのままでは叶えられないかもしれません。ぜひ応援してください」と呼び掛けた。

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写真はイメージ画像です
nito100 via Getty Images

少数者=“数が少ない”という意味。劣っているという意味はないはずなのに…

相場謙治さんと古積健さんは、原告ではなく顔や名前を出して本当の自分の気持ちを言えない全国の性的マイノリティの人々に思いを寄せた。

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ハンカチで目頭を押さえる相場さん
Huffpost Japan/jun tsuboike

 相場さんは「この訴訟を通じて全国の多くの方々に、セクシュアルマイノリティの人たちが抱える苦難であるとか、困難を知っていただきたいと思っている。ここにいる原告団だけでなく、全国にいるセクシュアルマイノリティの人たち、その人たちのためにも我々は戦っています。特別な権利が欲しいわけではありません。我々は平等なスタートラインに立ちたいだけなのです」と力を込めた。

そして国へは「裁判官の皆さまには、平等な、公平な判断の元、必ず勝訴を勝ち取って、国には同性婚を認めてもらいたいと思います」と訴えかけた。

古積さんは、「仲間たちの尊厳を取り戻す長い旅」と表現した。

「私は、セクシュアルマイノリティ、日本語で言えば『性的少数者』と呼ばれるうちの1人です。少数者というのはすなわち、数が少ないということを単に表すものであって、誰かに対して何かかが劣っているという意味は含んでいません

「しかしながら、戸籍上同性同士のカップルは、異性同士のカップルのように婚姻を選択することはできません。これが私には『あなた方は劣っている』と言われているように思えてなりません。この裁判は私たち及び、ここにいないたくさんの仲間たちの尊厳を取り戻す長い旅だと思っています。私たちの大切な相手を思う気持ちというのが、異性間のそれと何一つ変わらないというのを、この裁判を通して皆さんに感じていただきたいと思っています」

原告それぞれの思いを聞きながら、相場さんは涙を浮かべていた。

「私とか他の原告の人たちの中で、顔や名前を出して原告になっている人もいるが、全国には差別や偏見を恐れて、カミングアウトできないという人もいるというのが現状です。その方々のためにもこの訴訟を通じて頑張っていきたい。皆さんの熱い思いや、今まで自分が経験してきたつらい思いとかが思い出された。そして全国の、言いたくても言えないという人たちの顔がすごく浮かんできて、感極まってしまいました」と話した。

異性カップルも結婚を考えていく機会に

大江千束さんは、同性カップルだけでなく、異性のカップルにも結婚について考えてほしいと語った。

現行の結婚制度であったりとか、あるいは家庭の中に本当に平等はあるのか、男女の平等はあるのかなということを同性カップルがそこに入っていくことで少し考えていく機会になったらいいかなと心から思います

パートナーの小川葉子さんは「日本社会の中では、同性愛者のゲイやレズビアンの方で、パートナーシップ制度で長く歩んでいる方がいらっしゃいますが、決して結婚という道は通れません。それはそういった法律がないからです。まずはスタート地点にも立てないような不平等があるということを伝えながら、これからの長い裁判の道のりを皆さんと歩んでいけたらと思います」と語った。

万が一のとき、パートナーに子どもを託したい

 3年前、乳がんを患った小野春さんは、その当時病院から「家族」として認められなかったことの大変さやつらさ、日常的な困難を説明した。

パートナーの西川麻実さんとそれぞれ以前の結婚で生まれた子ども3人と共に、5人家族で14年間暮らしてきた。法律婚ができないため、共同の親権を持つことができない。

半年間にわたる抗がん剤や全摘出の手術をした時も、病院で告知を受けるときも『家族のみ』と言われ、手術の同意書へのサインができるのかと立ち止まり、がんの治療だけでも大変なのに、気にかかることがとても多く、パートナーに子が託せるか心配で、死んでも死にきれない思いです。特別なことは望んでいません。ずっと家族として暮らしてきたので、法律上も家族になりたいと思っています」と小野さんは話す。

 

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手術同意書
syazwanted via Getty Images

西川さんは、異性と結婚し子どもを生んだものの、自身のセクシュアリティを偽ることの苦しさを語った。「私は子どものころから女性が好きだったのですが、家庭があってこその人生と思うような人間でもあります。異性愛者のふりをして結婚することに、家庭を持つ可能性を見出し、男性と結婚したこともありました。異性愛者のふりをし続けることは自分の根幹をいつわることであり、つらいことが多かったです」

「好きな人と法的に結婚出来ることというのは、家庭を築くための広くて舗装された幹線道路のようなものだと思います。この幹線道路が閉ざされた中でも、私とパートナーは道なき道を切り開きながらなんとか家庭を築き、子どもを育ててきました。しかし私は家庭を得たいがために、自分を偽りつらい思いをすることや、試行錯誤して大変な思いをすることは私の世代で、もう終わりにしたいと思っているんです

もしも、結婚できることが当たり前の社会だったら……

性的マイノリティにとって、結婚は幼いころから遠い存在だ。

氏名非公表のただしさんは「私は物心ついたときから結婚が出来ないものだと思って生きてきました。実はこの訴訟の話を聞いたときに、正直初めは自分にはもう関係ないことだと思っていました」と語り始めた。

原告になった経緯について「でも、もしも初めから結婚出来ると分かっていたら人生はどうだったろうかと、思いを巡らせてみました。おそらく家族や友人、会社の仲間たちから祝福される結婚式があり、2人で買うマイホームを考えるかもしれない。もしかしたら、子どもの成長を見守ることができるかもしれないし、どちらかが病気のときや介護状態になったとしても結婚していれば心強いだろうとか、とても言い尽くせません」と話す。

「そんなことを思ったら、これからの若い世代の人たちが誰もが結婚したい人と結婚できるという選択肢のある社会になったらいいと思います。性的指向はその人の変えられない個性の一つ。セクシュアリティに関わらず、ひとりひとりの未来はもっと自由に大きく思い描ける社会になってほしいと思っています」

 パートナーのかつさんは「僕は九州の街で育ちましたが、なかなか周りには本当の自分のことを言えずにいました。東京で一緒に暮らすようになり、いまは2人で幸せな毎日を送っています」という。

しかし「同性による結婚ができたらこの生活にもっと大きな安心が得られるのではないかと思っています。結婚したいと思う人の誰もが結婚できる社会になることを願っています」と語った。