店頭で看板がわりに置いていた大事なぬいぐるみが、なくなった。どうやら盗まれたらしい。
だがその数日後、新しいぬいぐるみがそっと置かれていた。
誰が置いたのかは不明だが、予想外の心温まる出来事に、店主は喜んでいる。
◇
「事件」が起きたのは、東京・末広町駅近くにある居酒屋「大衆酒バル さけときどきぶた」末広町店。串焼きやもつ煮込み、お酒などがメニューに並び、最近オープンしたばかりだ。
店頭には、オープン準備期間から、映画『テッド(TED)』に登場するテディベア、テッドのぬいぐるみを置いていた。
ぬいぐるみの持ち主は、同店の店長・ケンさんだ。
ケンさんには4人の子どもがいる。2016年9月に妻だった女性と離婚し、今は子どもたちと別々に暮らしているという。店頭に飾っていたTEDのぬいぐるみは、子どもたちから「お店に置いておいてね」とプレゼントされたものだった。
ケンさんは子どもたちの言葉を守って、ぬいぐるみを看板がわりに飾っていた。
しかし、お店をオープンしてからたった3日後に、ぬいぐるみがなくなってしまったという。どこかに移動させた覚えもなく、誰かに盗まれてしまったのだろう。
「うわぁ、マジかと思って...さすがにショックだったので、『誰か持っていった人がいたら返してください』と貼り紙に書いて、お店に貼ってたんですよ」
店頭に置いていたテッドのぬいぐるみ。
すると、ぬいぐるみがなくなってから2週間ほど経った7月下旬の夜。ケンさんは思いがけないプレゼントを手に入れた。
いつものように接客をしている最中、お店の外に、紙袋が置いてあることに気づいた。
紙袋にはテッドのぬいぐるみと、『よかったら新品なので使ってください』と書かれた手紙が入っていた。名前は書かれておらず、誰が置いていったかはわからないという。
「ここ最近でめっちゃ嬉しかった話です」と話すケンさん。
今は店頭に、新しい"看板クマ"となったテッドのぬいぐるみを置いている。ぬいぐるみにつけた貼り紙には、以下のように、ケンさんのメッセージがつづられている。
「TED盗まれたんですが
昨日、名無しの誰かが
新TED置いていってくれました!!
Love 末広町!!
本当に嬉しかったです!!」
新しいテッドは、お店の繁盛を優しく見守りつつ...いなくなってしまったテッドの帰りを、待っているかもしれない。