テッド・クルーズ氏、共和党全国大会でトランプ氏支持を明言せず ブーイングの嵐となった理由は?

「自分の良心に従って投票してください」
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US Senator Ted Cruz of Texas speaks on the third day of the Republican National Convention in Cleveland, Ohio, on July 20, 2016. / AFP / Timothy A. CLARY (Photo credit should read TIMOTHY A. CLARY/AFP/Getty Images)
TIMOTHY A. CLARY via Getty Images

アメリカ大統領選の共和党候補指名をめぐって、実業家のドナルド・トランプ氏と争っていたテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)が7月20日夜、共和党全国大会の晴れ舞台でブーイングの嵐に見舞われた。自身が指名をめぐって争ったトランプ氏を、党の大統領候補として支持することを拒んだためだ。

スピーチは全く異なる調子で始まった。クルーズ氏は歓迎を受けながら登場し、保守的な主張を展開して拍手喝采を浴びた。

「アメリカを第一に考える出入国管理制度をつくるべきです。そして、私たちの安全を守る壁をつくります」と、今や公式な共和党大統領候補となったトランプ氏の政策を考慮しながらクルーズ氏は言った。

しかしスピーチが進むにつれ、クルーズ氏がトランプ氏の名前を出さないことに、会場の観衆が明らかにざわつき始めた。クルーズ氏は「ニューヨーク州代議員団の熱意に感謝します」と言ってスピーチを続けたが、顔にはかすかな笑いを浮かべていた。

やがて不穏な空気は、完全なやじに変わった。クルーズ氏は聴衆に「自分の良心に従って投票してください」と述べた。このフレーズは、共和党の主流はグループが、トランプ氏を大統領候補として推薦しないよう代議員たちに呼びかけてきた時に使われた言葉だ。そしてクルーズ氏が、「共和党は、1人の特定の候補者、または一つのキャンペーンのために、闘っているのではありません」と発言した時には、ブーイングまで発生した。

トランプ氏の子供たちは、自分たちのVIP席から傍観し、顔色を変えることなく、拍手を送ることもなかった。

このスピーチが最終段階に入った時、クルーズ氏は完全に聴衆を敵に回していた。満員の会場からは、「支持しろ」という叫び声が飛び交った。ジョン・アントニエッロ共和党スタテンアイランド支部長が、これに油を注いだ。

「クルーズ氏は、トランプ氏を支持すると言っていないようですね」と、アントニエッロ氏はハフポストUS版に述べた。「クルーズ氏は、背後にあるテレプロンプターに振り返ったりしてごまかしていた。トランプ氏支持を言うつもりはなかったことは明白だ」。アントニエッロ氏は大きな声で繰り返し言った。「トランプ氏を支持しろ」

状況がこれほど混乱していなければ、その瞬間はもっと高揚していたはずだ。人々の目はトランプ氏がいるブースに向けられた。トランプ氏は上手くタイミングをはかり、かつての対立候補だったクルーズ氏への注目を完全に奪い去った。

クルーズは舞台に立ったままだったが、完全にお株を奪われた。

クルーズ氏は賢さを鼻にかけてしまって嫌われてしまったと評論家たちは言った。だが実際は、20日夜に起きたドラマは、驚くようなことではなかったはずだ。共和党全国大会でより盛り上がった場面は、早くも2020年のアメリカ大統領選に向けて共和党のエリートたちが凌ぎ合いをしたことだ。その中で、最も非難を浴びたのがクルーズ氏だった。

トランプが今回の大統領選に敗北したら、クルーズ氏が2020年の大統領選候補として名前が浮上する立場にいる。2016年の予備選で彼は2番目に多い選挙人を獲得し、共和党で最も実績のある保守派議員として、イデオロギー的に中道に移ることなく、トランプ氏の敗北から共和党の有権者が前に進める機会をもたらす。

しかしクルーズ氏は用心深く、つまらないおしゃべりをしただけだった。クルーズ氏が登壇するずっと前から、本人自身が書いたと言われているスピーチ原稿の中で、クルーズ氏がトランプ氏を正式に支持する文言が一切ないことは事前にリークされていた。その理由は、当然のことながら、トランプ氏陣営が大統領予備選の間にクルーズ氏を執拗に攻撃していたことだ。

トランプ氏はクルーズ氏の妻をからかったり、多くのスキャンダルを抱えていることを示唆したり、クルーズ氏の父親がリー・ハーヴェイ・オズワルド(ケネディ元大統領の暗殺犯)と親交があると言ったりした。しかしもうひとつの理由として、トランプ氏が敗北した後に、トランプ氏を選択して後悔している共和党員の頼みの綱として、自分が再登場することを狙っていたからだ。

あるワイオミング州選出の議員は、「その男を賞賛しましょう。正々堂々としています。耐え抜き、自分の立場を守り通した彼の一貫性に対して、私は彼を賞賛しなければなりません」と述べた。彼はクルーズ氏と元々深い繋がりがある。「同時に私は、彼が善良な共和党員であり、共和党の主流に戻って来ることはわかっています。彼は決して孤立してはいないのです」

しかし、クルーズ氏がトランプ氏を支持しないことが早い段階でリークされたことで、クルーズ氏はトランプ陣営に対し、混乱に備える時間を与えてしまった。

「彼はその会場で、大混乱を引き起こすチャンスを握ったのです。そして大混乱を引き起こしました」と、トランプ氏の支持者の一人で、ニューヨークの不動産業者「バッファロー」のカール・パラディーノ氏は述べた。

ニューヨークポストの前オーナーで、ニューヨーク州のピーター・S・カリコウ議員は、クルーズ氏がトランプ氏を支持しないことに驚きはない、と述べた。

「彼のばかげた行動に驚かされることはありません」と、カリコウ氏は語った。

会場がクルーズ氏のスピーチを受けていらだちを募らせ始めたため、ハイディ・クルーズ夫人がセキュリティー・スタッフに付き添われて退場しました。あるトランプ支持者が彼女に向かって「ゴールドマン・サックス!」(編注・ハイディ夫人はゴールドマン・サックス副社長)と叫んでいました

共和党の重鎮ニュート・ギングリッチ元下院議長は、クルーズ氏のスピーチは会場が考えるよりもトランプ氏を支持する内容であったと信じていると述べ、影響を最小限に抑えようとこころみた。

「テッド・クルーズ氏が言っていたのは、誰もが良心に従い憲法を支持するどの候補者に対しても投票できるということです」と、ギングリッチ氏は語った。「今回の選挙では、憲法を支持する候補者は1人しかいません。ですからテッド・クルーズ氏が述べた内容を言い換えると、アメリカ憲法を守りたければ、今年の大統領選挙で投票できる唯一の候補者となり得るのはトランプ氏とペンス氏の組み合わせだけだということです」

編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた嘘ばかりつき極度に外国人を嫌い人種差別主義者ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサ―(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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