10月30日に「いまだからエレクトロニクス、変わるエレクトロニクス! テクノロジー × ビジネス - エレクトロニクスの新世界」開催以降、世界経済が不透明感を増すなか、新たな需要を取り込むには、相応の研究開発と事業化努力が必要です。
日本では11月17日、「政府・与党 研究減税 サービスにも AIなど活用後押し」という記事が日本経済新聞の一面を飾りました。
日本の研究開発が進むか、と期待させられたこのタイトル。実は企業を支援する研究開発税制(2014年約6700億円)全体の税収は変えず、企業ごとの増加割合に応じて減税率に差をつけ、飲食や小売りなどサービス業の生産性を上げて労働力不足を補う、という建てつけでした。
モノとコトの融合が進むなか、研究開発税の使い方としては、製造業とサービス業をひとつとして捉え、生産性を上げるという観点は理に適っているのかもしれません。
日本経済におけるサービス産業の割合は、国内総生産(GDP)ベース、就業者ベースともに7割を超える(引用:統計局)なか、生産性はなかなか向上していません。一方で、かつて「モノづくり」先進国日本の花形だった製造業はGDP比が下がりながらも生産性を上げ、モノとコトが一体となって新たな価値や技術、イノベーションを生み出して産業全体に波及効果をもたらす"サービス化"を進めています(参照:経済産業省)。
特にリーマンショックを経た2010年ごろから、世界的なスマートフォン、ソーシャルメディアの普及を経て、コンピューティング能力と情報メディアが個々人の手のひらに入った今。個々のヒト、モノ、サービスの活動がデジタルデータとしてつながる世界は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)という概念的な言葉に集約され、そこで起こる経済変革は「デジタルトランスフォーメーション」等と呼ばれています。
IoT時代の典型的なビジネスとして、個人の遊休資産の貸し借りで成り立つUberなどのカーシェアリングや、AirBnBなどの民泊に代表されるシェアリング・エコノミーがあげられます。情報技術(IT)を生んだインターネットはさらに、広がるIoTの枠組みのなかでこれまで独立していた装置や機器の制御技術(OT)もつなぎ、企業のあり方を変えようとしています。
例えばイタリアでは、旧国鉄のTrenitaliaが、鉄道運行に車両のメンテナンス予測データを活用し、サービス改善、顧客体験の向上を目指して、Uberの出現で揺れる運輸業界のなかで勝ち残ろうとしています(参照:2016年11月4日 DIAMOND online)。
ITとOTに融合は同時に、サイバーセキュリティ防御のニーズを高めます。情報(IT)端末を足掛かりにサイバー攻撃がはじまり、そこから制御(OT)システムを狙う事故が増えるなど、セキュリティ対策の重要性は未曽有の高まりをみせています(引用:2016年11月2日 ITpro「電気やガスもサイバー攻撃の標的」、サイバーディフェンス研究所の名和氏)。
IT、OTがつながりそこに紐づく人も働き方が変わる。さらには、イノベーションを民主化する「オープン・イノベーション」の取り組みや、リバース・イノベーションの枠組みづくり(GEヘルスケアVscan、UHC機器開発協議会(HEART)など)といった、これまでの組織的、地政学的、概念的な枠組みを超える動きが増えています。
本記事はコウタキ考の転載です。