テクノロジーで会議時間が1/12に! 仕事術の進化とプログラマーの関係

現代社会は時間の奪い合いである。
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TO GO WITH AFP STORY-TECHNOLOGY-US-IT BY HELENE LABRIET-GROSS Silicon Valley's capital city San Jose, California as seen in this aerial photo is undergoing an urban development revolution calculated to keep it as the thriving heart of a region renowned for technological innovation.The city is working to reverse a trend in which promising startups take root in suburbs and neighboring cities such as Mountain View, Sunnyvale, and Cupertino -- the homes of Google, Yahoo and Apple respectively. Districts brimming with high-density housing are now blossoming near downtown office towers. There are 32,000 units in or near the city center and 'enterprise incubation centers' have sprung up to nurture start-ups in the areas of software, bioscience, environment and market access. (Photo credit should read HELENE LABRIET-GROSS/AFP/Getty Images)
AFP via Getty Images

終電間際の住宅街

疲れ顔のサラリーマンが、とぼとぼと自宅マンションに帰る。

「ただいま」

「あなた、また残業だったの?」

「ああ、会議会議で嫌になるよ」

「会議で何を話すの?」

「いろいろだよ」

「いろいろって?」

「もう、疲れてるんだからもう勘弁してくれよ。ビールだビール」

こんな光景、いまどきの日本では珍しくもないのかもしれない。

しかし私は不思議でならない。

なぜ残業をしなければ終わらないような仕事量を管理職が割り当てているのか。

かつて高度経済成長期の日本、ホワイトカラーの仕事とは、デスクワークだった。

もっと言えば、紙とペンによる仕事だった。

FAXすらない。

全ての書類は郵送かハンドキャリーであり、書類とは手で書くものだった。

エリートの条件はまず字が綺麗なことだった。そうでなければ筆耕(ひっこう)という、清書専門の人員を使った。

郵便の宛先を書く専業の仕事があり、郵便が届くには早くて一日、普通は数日を要した。

「モーレツサラリーマン」「過労死」と言われていた時代、人は恐ろしく非効率的な方法によって仕事をしていたのである。

90年台に入りワードプロセッサとFAXが普及すると、状況は一変した。

郵便はFAXになり、世界中どこにいても瞬時に書類を届けることができるようになった。

宛先を書く仕事はなくなり、筆耕もなくなった。

かわりにタイピストという職業が生まれ、そしてすぐに誰でもキーボードが打てるようになってその職業もなくなった。

一方、普通のサラリーマン達がワープロで打ち出した文章をFAXで書類をやりとりしている頃、電子メールだけで全ての仕事を完結させる人たちが居た。

言うまでもなく、それはそうした技術を開発したプログラマー達である。

電子メールの歴史は古い。

実はインターネットの前身であるARPANetよりさらに古く、1965年にマサチューセッツ工科大学で開発されたMAILBOXというアプリケーションに遡る。

1965年といえば、まだワープロは存在せず、みんなが筆耕に頼っていた時代である。

電子メールが進化してemailと名付けられたのは1972年。マイクロコンピュータの登場が1976年だから、それよりも遥かに早くプログラマー達は電子メールを使っていたことになる。

むしろ業種によっては未だにFAXを使わないとコミュニケーションができない場合もあるだろうが、今ではemailなしの仕事など到底考えられない。

emailが日本の仕事で当たり前のように使われるようになったのは、たかだか15年ほど前の西暦2000年前後だから、1965年に電子メールを活用していたMITのプログラマー達はたっぷり35年ほど時代を先取りしていたということになる。

今、シリコンバレーの最先端のプログラマー達はemailではなくSlackと呼ばれるチャットアプリを日常的に使っている。

おそらくそう遠くない未来、日本のビジネスマンもごく普通にチャットで仕事上のコミュニケーションをとるようになるだろう。

実際、筆者の会社では定例会議や報告会議の大部分をチャット化したことによって、それまで1時間かかっていた会議を5分程度まで短縮することに成功した。

これによって1人あたりの時間を1/12に節約できたし、10人の会議であれば、120倍効率的に会議を終了できたことになる。

しかもこの方法を導入したことによって議事録は自動的に生成されるし(なにしろチャットだから)、不明点は明確になるし、議事録には文字だけでなくて写真や図なども残せるのでいいことづくめである。

いずれ近い将来、日本中の会社が当たり前のようにチャットで会議をするようになるだろう。

現代社会は時間の奪い合いである。

会議のように大勢の時間を拘束する仕事を、我々プログラマーは「ボトルネック」と呼ぶ。

プログラマーにとってボトルネックを解消したり、効率化したりすることは日常的な思考の道筋にある。

そしてプログラマーは自らの職場環境をプログラミングという道具によって変えることができる。したがってプログラマーは自らの裁量がある職場で働く限り、最も効率的に仕事を進める術を知っていると言えなくもない。

どれだけ賢くても、環境を変化させる能力を持たない人間には、効率化を進めるとしても限界がある。しかしプログラマー達は、常により効率的に、常に無駄なく、常にミスなく、常に最速で仕事を終える方法を模索し、それを実現するために熱心に情報交換を重ねている。

実はプログラマー達は、普通のビジネスマンが想像もしないような、極めて効率的に仕事を終えるための道具を無数に持っている。

既存のアプリケーションに実装されているうんざりするほど大量の機能は、プログラマー達が日常的に呼吸するかのように使っている道具のごく一部の機能を取り出して、誰にでも使いやすく希釈したものにすぎない。実際のプログラマーが使う道具は、もっとずっと効率的である。

ただしプログラマーが自らの仕事を効率化するために生み出した数々の道具は、やはりあくまでもプログラマーのための道具であって、それがそのまま普通の仕事に活かせるわけではない。

クロスメディア・パブリッシング社から、そうした「プログラマーだけが使う秘密の道具を、ごく普通のビジネスマンでも理解できるように噛み砕いて説明した本を書いてはくれまいか」という依頼を受けた時、なるほどその視点は面白そうだと感じた。

そうして、勢いに任せて書いたのが本書『最速の仕事術はプログラマーが知っている』である。

(ちなみに、かなり傲慢なタイトルに感じられるかもしれないが、これは出版社の戦略として私が引き受ける前から決まっていたことなので何卒容赦して欲しい。)

もしあなたが残業で悩んでいるとしたら、仕事の進め方が非効率的であると考えているとしたら、ぜひ書店で手に取り、少しでも盗めるテクニックがないか立ち読みでも良いので探していただきたい。

【近著】

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最速の仕事術はプログラマーが知っている(クロスメディア・パブリッシング 刊)

ビル・ゲイツ(Microsoft)ラリー・ペイジ(Google)、ジェフ・ベゾス(Amazon)マーク・ザッカーバーグ(Facebook)といった経営者は、みんなプログラマー出身者。プログラミングから学べる思考法こそ、彼らのビジネススピードの原動力なのです。KISS原則 = 「とにかくシンプルにしろ」、DRY原則 = 「同じことは書くな」、YAGNI原則 =「必要になってからつくれ」......プログラマーの世界には、こうしたムダを削ぎ落とすための数々の原則や仕組みがあります。本書ではそこから導き出される実践的な仕事術を、国家認定天才プログラマーであり、経営者でもある著者が伝授します。