ぼくがソーシャルテレビ推進会議という勉強会を運営していることはここで何度も書いてきた。思い返せば、みるぞうやTuneTVなどテレビを観ながらTwitterするためのアプリが登場したり、「天空の城ラピュタ」放送時での"バルス事件"などがあり、ソーシャルテレビについていろんな方々と情報共有したくなったのだった。
TuneTV登場がほぼ2年前。そしてその頃ぼくは『テレビは生き残れるのか』を出版した。
その頃からすると、ソーシャルテレビはずいぶん進んだもんだ。ソーシャルテレビと捉えていいかはわからないけど、テレビ番組を観ながらスマートデバイスを操作することで、テレビの幅が大きく広がる、そんな事例がどんどん出てきた。
先週はまた、新鮮な事例が2つもあったぞ。TBSの「生ジンロリアン」と日テレ「音楽のちから」での1つの企画だ。
「生ジンロリアン」はいわゆる人狼ゲームをテレビ番組化したもの。いままで何度かTBSで放送してきたのを今回は"生"で放送し、視聴者に参加してもらおうというところは初の企画だ。人狼が誰かを視聴者の投票で決めさせるのだ。
放送中にスマホやタブレットで公式サイトにアクセスすると、投票用画面に誘導される。今回の9名の参加者の名前が並んでいるので、その中で人狼だと思う人物を押すと"投票中"と表示される。
投票はリアルタイムで集計されて放送中のテレビ画面に表示される。
純粋にひとりの視聴者として楽しく参加したけど、考えたらこれ、すごいなと思う。深夜とは言えものすごいトラフィックだったろう。でも問題なく処理してテレビ画面に表示していた。視聴者からすると、自分が人狼を直接選べる感覚が味わえて参加感100%だ。
見ていて面白かったのが、一度誰かに集中しはじめるとどんどんその人への投票が増えていくこと。いちばん多いのは誰?って思いながら見るので、誰かがいちばんだとついついその人に投票したくなっちゃうんだ。
それと、その時々でいちばん喋ってる人の票が増える傾向もあった。まあ、それがテレビということなんだろうね。
とにかく"参加してる感じ"がちゃんと味わえるのは面白かったよ。
もうひとつの「音楽のちから」。土曜日に午後から始まって夜まで延々続けられた歌番組。その中でインタラクティブな仕掛けがあった。
21時から司会の嵐が唄いはじめた。それとともに、スマートフォン上であらかじめ選んだ楽器で、リズムを刻む。画面に♩マークが上から流れてくるので、下に着地する瞬間にスマホを押すとパン!と音が聞こえる。次から次に上から流れる♩マークに合わせてパン!とやっていく。これは「太鼓の達人」みたいだ。
ぼくはマラカスを選んだらこんなキャラクターが出てきた。
この仕組みはスマホじゃなくても楽しめる。テレビ受像機のリモコンでdボタンを押してデータ放送に入ると、スマホと同じようにリズムを刻める。うちの妻はスマホを持っていないのだけど、リモコンでも十分楽しかったようだった。
この番組は嵐の司会だし、このインタラクティブな仕掛けはゴールデンタイム、21時ごろだった。だからものすごい数の人が参加してるんじゃないか。実際、ものすごい数で、132万人だったそうだ。
そんな数のトラフィックをこなすなんてどうなってるんだ?
とにもかくにも技術の進歩なのか意識の変化なのか、こういう試みはすっかり"有り"になってきた。もはや、テレビ局の一部の物好きな人たちの隠れた実験などではなく、プログラムの一部になってきているのだと思う。
テレビはすでに、インタラクティブなメディアになっているのだ。
などと思っていたら、こんなニュースが飛び込んできた。「ネット見れるパナの新型テレビ、民放がCM拒否」まあざっとこのリンクから記事を読んでくださいな。
最初に読んだ時、相変わらず頭のカタいテレビ局の中枢部の人びと、という感想を持った。でもことはそう単純ではないらしい。この記事から受ける印象ほど、頭ごなしな話でもないみたいなのだ。また、テレビ放送が放送として整えねばならない技術ポイントがあって、そこをクリアできているのか的な要素もあるとかないとか。例えば大元隆志さんはこんなことをASSIOMAに書いている。
このニュースの議論は大事だけど、これはテレビに出す情報に関する話だ。でも今日紹介したような事例を考えると、スマホを使ったダブルスクリーンの方がテレビ受像機のスマート化より話が早いんじゃないかという気がする。
いずれにせよ、テレビのインタラクティブ化はもはやはじまっている。どんどん進んでいる。次は、これをどうビジネスにするかだろうね。今年の後半は、そういう議論が高まるんだろうな。
コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家
境 治
sakaiosamu62@gmail.com
(※この記事は、2013年7月8日の「クリエイティブビジネス論!~焼け跡に光を灯そう~」から転載しました)