80歳の誕生日、顔のシワ取りをする代わりにタトゥーを入れてみた

年齢の壁を受け入れるより、ブルドーザーで壊してしまった方がずっと良くありませんか?
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「グラシエラ」は、私の右腕上腕二頭筋の一番上にいるタツノオトシゴのタトゥーです。まつげは濃く、バラ色の尻尾は内側にカールしています。

私は1日に3回、入れたてホヤホヤのグラシエラに、抗菌効果のある石鹸の泡を丁寧に塗って乾かします。

なんだか生まれたばかりの赤ちゃんを優しく世話するお母さんのようで、思わずニヤついてしまいます。

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COURTESY OF ELAINE SOLOWAY
タツノオトシゴのグラシエラ。80歳の誕生日の前に入れたタトゥーです

80歳の誕生日と、1年前にようやく泳げるようになったことを祝う自分へのプレゼントとして、グラシエラを入れました。

私のシワだらけの顔と真っ白な頭を見て「80歳の誕生日プレゼントは、タトゥーではなく整形手術の方がいいのでは?」と思った人もいるかもしれません。

そのほうが、若々しく見えるようになるよ、とかもっと男性の気を引けるようになるよ、と思っているのかもしれません。

しかし、1番目の結婚相手と離婚し、2番目の配偶者と死別した後、私は自分が本当にやりたいのかどうか分からないことはやらないと決めました(それに、私のタトゥーを目にして苦々しい顔をしている同年代の男性を見ると、それが本音なら楽しくシングルで生きた方がずっといいとも感じています)。

決して、シワ取りやまぶたのリフトアップ、頰のたるみ改善をした友人を羨んでいるわけではありません。

そういったことは一人一人の選択で、私自身は一度もやってみたいと思ったことはありません。それに、自ら進んで病院に行きたがる気持ちも私にはわかりません。

ちなみに、グラシエラを入れる時には麻酔なしだったのですが、全然怖くありませんでした。なぜなら、以前にもタトゥーを入れたことがあるからです。

私はずっと、タトゥーは芸術的だなと思っていました。それにタトゥーをいれる人は勇気があるなあと尊敬していました。だから60歳の誕生日に、自分でもタトゥーを入れたのです。

60歳のタトゥーは、二人の娘、フェイスとジルへの尊敬の念を表現しました。

二人は才能と大胆さを兼ね備えた女性です。ハートと音符のタトゥーに、二人の名前を入れました。

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COURTESY OF ELAINE SOLOWAY
60歳の誕生日に入れたタトゥー。ハートのデザインに、フェイスとジルの名前が入っている

一方、80歳のタトゥーには別の意味が込められています。

私は常々「周りがどう考えるかは関係ない」と思って生きています。それでも、タトゥーを入れる前、社会に対してうんざりする気持ちも感じていました。

私は小柄です。身長145センチ、体重45キロの体は、群衆に紛れると見えなくなってしまいます。しかし、姿が見えている時には、年齢のせいもあるのか、よく「可愛いらしいですね」と言われます。

褒めたつもりで、言ってくれるのかもしれないけれど、私には「可愛い」が褒め言葉には聞こえないのです。

頭がよくて、仕事ができる自立した女性ではなく、子猫か子犬のように扱われているようで、軽く見られているようにさえ感じてしまうのです。

だから私は80歳のタトゥーを、エイジズム(年齢差別)についての会話を始めるために入れました。私と同年齢の女性たちがどう見られ、どう扱われているのかを、もっと社会で考えたいという願いを込めて。

残念なことに、エイジズムの最大の原因となっているのは、同年代の女性たち自身です。

なぜ彼らは、年齢を聞かれて答えたがらないのでしょう?なぜ、見た目を変えなければいけないと感じるのでしょう?

そういった1つ1つの行動が、高齢の女性たちが自分のことをどう感じているのかを表していると思うのです。年齢を重ねた人たちの多くが、年齢を誇りに感じるのではなくごまかそうとしています。

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COURTESY OF ELAINE SOLOWAY
タツノオトシゴのタトゥー

もちろん、若いことや若く見えることが有利な働く場面は数えきれないほどあります。

仕事を探す時やマッチングサイトで出会いを求める時は、きっと若い方がうまくいきやすいでしょう。それが自分の年齢や見た目をごまかす原因にもなっているのだと思います。

しかし、その壁を黙って受け入れるのではなく、ブルドーザーで壊してしまった方がずっと良くないでしょうか?

タツノオトシゴのこのタトゥーに込められた意味を聞かれた時、私は「目標を達成するのに、遅すぎることはない」と答えます。

そしてこの考え方は、年齢を重ねた人にとって必要不可欠なものだと思います。

私は水泳の他に、スペイン語とピアノも学んでいます。スペイン語はたどたどしい会話ができるようになり、ピアノはロジャース&ハートの曲を弾けるようになりました。

水泳もスペイン語もピアノも、上達するには日々の練習が欠かせませんが、練習は私にとって、楽しみでもあります。

とはいえ、私はシニアオリンピックに出場するために水泳を練習しているわけではありません。

ゴールは上達ではなく、月並みの能力を身につけられればいいと思っています。うまく息つぎしながら、クロールできればいいのです。

スペイン語も「por favor repita lentamente(もう一度、言って下さいますか?)」とお願いしながら話せれば満足です。

ピアノは誰かに聞かせるためのものではありません。一人で、スタンダードナンバーを弾きながら、陽気に歌って楽しんでいます。

重要なポイントは、シワ取りをしても、泳げるようにも、スペイン語が話せるようにも、ピアノが弾けるようにもならないということです。

シワだらけの顔と真っ白な頭、そしてタツノオトシゴのタトゥーの入れた私は、ありのままの自分で、やりたいことをして生きています。私はそんな生き方がとても気に入っています。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

エレイン・ソロウェイ:作家・ブロガー。「The Division Street Princess」などの著書がある。ゴールデングローブ賞とエミー賞を受賞した「Transparent」は、ソロウェイの娘、ジルとフェイスが執筆。同作品には、ソロウェイの人生の一部が描かれている。