『鉄腕アトム』主題歌の作詞、谷川俊太郎がギャラ明かす 「思い切って◯◯万円と言ったら…」

空をこえて、ラララ、星のかなた」でお馴染み。
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詩人の谷川俊太郎さん=2018年1月12日、東京・千代田区
Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

詩人の谷川俊太郎さん(86)が1月12日、東京・千代田区で開かれた『広辞苑第七版』の発売記念イベント「広辞苑大学」に登壇しました。

谷川さんは自身の詩作活動を紹介するなかで、自身のギャラに関するエピソードを披露し、会場の観客を沸かせました。

■「谷川、儲かってるんじゃねえか?と言われる(笑)」

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Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

1952年に詩集『二十億光年の孤独』でデビューした谷川さんは、詩作や絵本の創作、海外作品の翻訳などを手がけ、日本を代表する詩人として活躍してきました。

谷川さんの経歴を紹介する中で「マザー・グース」や「スヌーピー」シリーズなど翻訳作品の話に。聞き手の赤田康和さん(朝日新聞記者)からは「だいぶ売れたのでは...?」との質問が。

これに谷川さんは、ためらうことなく答えました。

「マザーグースは合計いくらになったか、よくわからないですが...。普通、出版社から印刷部数などか来るはずなんですよね。それがパラパラと来るから、(売れた部数)を合計をしたことがないわけ」

「特にスヌーピーは翻訳権料が2%とすごく少ない数字なんですよね。だから、みんな「谷川儲かってんじゃねえか?」と言うんだけど、みんなが思うほど儲かってません(笑)」

あまりに正直すぎる告白に、会場からは笑いこぼれました。

■「鉄腕アトム」の主題歌、ギャラは◯◯万円だった。

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自作の詩を朗読する谷川さん
Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

谷川さんは、故手塚治虫さん原作のアニメ「鉄腕アトム」の主題歌の作詞も手掛けました。

「鉄腕アトム」は日本初の国産テレビアニメシリーズで、東京オリンピックの前年(1963)に放送がスタート。高度経済成長にあって、ロボットと人間の共存、科学合理主義への疑問をテーマにした同作は大ヒットしました。

「♪空をこえて、ラララ、星のかなた」。その歌詞に子供たちは、科学と宇宙への夢を馳せました。

谷川さんに作詞を依頼したのは、手塚さん本人だったそうです。

「あれは手塚治虫さんが電話をかけてきて『(歌詞を)書いてみないか』みたいなことを言われて...。まだ若かったので『あの手塚さんから電話がかかってきた!』と感激しましたね」

アニメとともに主題歌も人気に。歌詞の印税も相当なものになったのでは...。

そんな質問に、谷川さんは「僕が著作権を持っていたら、いま時こんなところ来てませんよ(笑)。(フランスの)カンヌあたりで泳いでいたと思います」冗談交じりに述べた上で、こう語ります。

まずね、(作詞をしても)虫プロダクションがお金のことを全然言ってこないの」

そこで若き日の谷川さんは、自身の印税がどのくらいになるか計算してみたそうです。

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Kei Yoshikawa/HuffPost Japan

「その頃、テレビでは地方局でも放送されていて。(計算したら)年間1億円という数字になった。でも僕、(資金難だった)手塚さんのプロダクションから1億円は取れないと思って。恐る恐る『著作権を買い取ってください』と言ったんです」

「思い切って、『50万円でどうですか...?』って言ったら、パって、すぐ小切手が出ましたね。あとで友達からは「バカだバカだ」と言われましたが(笑)」

「でも、虫プロダクションって倒産しているんですよね。その時に僕は金取れないと思いました。だから僕は満足してます(笑)」

国民的アニメの主題歌のギャラの顛末をあっけらかんと語る谷川さんに、会場からはまたも笑い声があがりました。

「鉄腕アトム」放送時は30代だった谷川さんも現在86歳。そんな谷川さんの「現在」に焦点をあてた展覧会「谷川俊太郎展」が13日から東京・初台の東京オペラシティでが開催されます。

詩は「いま、ここ」を描くもの、と語る谷川さん。「鉄腕アトム」の舞台となった21世紀を迎えたいまも、創作意欲は衰えていない様子です。これから、どんな詩を紡いでくれるのでしょうか――。