「お前は白人だ。ミャンマー人じゃない」と言われて。タンポンのアートで高校生が伝えたかったこと

なぜ国によって、生理に向けられるまなざしが違うのか。
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Lucca Chortsen

月に1度、やってくる生理。

だが、向けられるまなざしは、国によって様々だ。

ネパールでは、生理中の女性を汚らわしい存在とみなす。血が出ている間、女性が屋外の小屋に隔離される「チャウパディ(Chhaupadi)」という慣習が、最近まで法律で罰されることなく続いてきた

かたやイギリスでは、生理用品の企業が、従来の使われていた青い液体ではなく、生理を表す赤い液体をナプキンに流す動画を作り、話題になった。「生理は隠すべきもの」といった偏見をなくすのが目的だという。

なぜ国によって、生理に向けられるまなざしが違うのか。

ミャンマー在住のデンマーク人高校生、ルカ・インゲマン・コートソンさん(18)はその問いを、タンポンをつなげた銃弾ベルトを赤く塗ったマネキンの肩からぶら下げたオブジェで表現しようとした。

ルカさんに、作品に込めた思いを聞いた。

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Lucca Chortsen

一体の女性のマネキンに銃弾ベルトがかけられている。よく見ると、銃弾は金色に塗られたタンポンでできていて、見る人に衝撃を与える。ルカさんは授業で、この作品を作り、学校主催の展覧会で発表した。

デンマークでは、小4になれば、先生から「スポーツするときは、タンポンにするといいよ」と教えてもらえます。でも、ミャンマーでは、タンポンを使うと処女を失って「純粋さ」がなくなるといまも信じられていますし、生理中の女性はお寺に入ってはいけないとされています。

デンマークで育った私からすると、ミャンマーでは過度に「生理」がタブー視されていて不思議でした。

私からすれば、男性の髪が伸びるように、女性にも生理があります。それは多くの人にとって自然現象であるはずなのに、国によって、「生理」への受け止め方が全く違う。あまりの違いに、ちょっとおかしささえ感じてしまいます。そんな思いを抱いたのが、作品作りのきっかけでした。

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マネキンには、傷跡をたくさんつけた。ルカさんは、生理痛に苦しむと、体をかく癖があるという。
Lucca Chortsen

タンポンと銃弾ベルトの組み合わせは、「男性っぽさ」と「女性っぽさ」を掛け合わせたものだという。

アメリカのアクション映画「ランボー」に出てくる銃弾ベルトとミスユニバースに出てくる優勝者が肩にかける「タスキ」、2つをイメージしてこのタンポンベルトを作りました。

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アクション映画「ランボー」より
Corbis via Getty Images
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ミスユニバース優勝者
Steve Marcus / Reuters

タンポンが銃弾に見えるように、糸を切っています。ただ、タンポンっぽさを完全に排除したくなかったので、半分は糸を残しています。「男性っぽい」銃弾と「女性っぽい」タンポンを交互につなげています。

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4月1日の学校が主催する展覧会(IB(国際バカロレア)Visual Arts(美術)の授業の一環)で作品を発表した。
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なぜこうした掛け合わせにしたかというと、女性の問題は、男性の問題でもあるということを伝えたかったからです。男性が気にしなければ、女性はオープンに語れるし、男性が「汚らわしい」と感じれば、女性も話しにくくなります。

だがルカさんは「ミャンマー人の考え方に『評価』を下したいわけではない」という。そう話す背景には、この国で暮らす葛藤を通じて得たものの見方があるという。

私は3年ほど前、父の転勤に伴い、デンマークからミャンマーに来ました。

インターナショナルスクールと家を往復する生活は、まるで透明なシャボン玉の泡の中に住んでいるようです。透明だから外で何が起きているのか目で見えるけど、理解できない。だからこの国で3年も暮らしながら、現地の生活が今もよくわからないのです。

そんな状況から脱するために、現地の展示会に行ったり、詩のクラスに参加したり、たくさん本を読んだりしています。でも、「お前は、白人だ。ミャンマー人じゃない」と言われたこともあります。見た目でどうしても判断されてしまうのです。だからこの国では、自分が「よそもの」だとよく分かっています。

今回の作品も、ミャンマーの人たちの考え方に「評価」を下したいわけではないんです。この国の「生理」に対するまなざしを「考え方の違い」ととらえて表現しただけで、なんらかの「答え」を用意しようとしたわけではありません。ただ、そこに住んで見聞きしたこと、感じたことを大切にしたいのです。アートは解が1つではありません。他の人が作品を見たときに抱いた見方も、一つの答えであり、大事なものなのだと思います。

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Lucca Chortsen

ルカさんは、アートはこの国と自分をつなげるものだ、という。

ミャンマーに来てから、とても孤独な思いをしました。母国では社交的だった自分が一気に内気になってしまいました。誰も知らないこの土地で、わたしは何をしたらいい? といつも自分に問いかけていました。

でも、アート作品をつくるときは安心できました。自分を表現し、それを誰かが見て、評価し、何かを学びとっていく。また、たくさんの刺激を受けることができました。ミャンマーのアート作品からも多くを学んでいます。

「生理」に関する考え方さえこれだけ違う、ミャンマーで、アートは唯一と言っていいほど、異国から来た私と、この国をつなげるものだったのです。

ルカさんは、今年の5月にミャンマーのインターナショナルスクールを卒業する。彼女はここでの経験を胸に、母国に戻る予定だ。

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