2017年から4年間、NHKの報道番組『クローズアップ現代+』の司会を務めてきた武田真一(たけた・しんいち)アナウンサーが、3月18日の放送で降板した。同日、番組の公式Twitterに掲載されたメッセージ動画の中で武田アナは「やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います」と無念さをにじませた。
放送の最後でも武田アナは同様のあいさつをしたが、「やり残したことがある気もしますが」という台詞は入っていなかった。
武田アナの降板をめぐっては、自民党の二階俊博幹事長へのインタビューで不興を買ったのが原因とする週刊誌報道が出ていた。
■二階幹事長が不快感をあらわにしたことも
指摘されている放送は1月19日の『クローズアップ現代+』。武田アナは二階氏に新型コロナ対策について聞いた。「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった。
武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日。『週刊文春』2月25日号では、二階幹事長へのインタビューが「菅政権の怒りを買った」のが理由とみる局内の声を報じている。
一方、NHKの正籬聡放送総局長は「公共メディアとして自主自律は生命線。誰かに何か言われたからということは一切ない」と圧力の影響を否定した。
武田アナは、4月2日からスタートする全国放送の新番組「ニュース きん5時」(金曜午後4時50分)でキャスターを務める予定だ。
■武田真一キャスターの動画メッセージ全文
4年間、本当に有り難うございました。この4年、私の心に刻み込まれたのは、社会の中で懸命に生きている皆さまの声です。それは決して希望に満ちた声ばかりではありませんでした。
大切な人を亡くした。明日の暮らしが見えない。災害や新型コロナで思いがけず人生を狂わされた。私たちの周りには多くの課題があることを思い知らされてきました。私に何ができるんだろうか?ずっと自問してきました。
せめて皆さまの声を私の心に深く浸して、分かろうと努力しよう。皆さんの声を私の心と共振させて、さらに大きな波紋にして社会に伝えよう。それが何かの糸口になるのではないか。
そう考えてきましたが、いかがだったでしたでしょうか。やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います。現代の断面をクローズアップし、よりよい未来の材料を見つけてプラス。「クローズアップ現代+」はこれからもひるまずに伝え続けていきます。新年度は3月30日からのスタートです。是非ご覧ください。
■武田アナの直筆メッセージ
『クローズアップ現代+』の公式Twitterでは武田アナから番組視聴者に向けた直筆メッセージも掲載している。