3館目の「TSUTAYA図書館」が多賀城市にオープン 武雄市や海老名市との違いは?

これまでのTSUTAYA図書館とは何が違うのか?
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猪谷千香

宮城県多賀城市に3月21日、新しい市立図書館が開館する。レンタル大手TSUTAYAやTポイントカードなどの事業を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が指定管理者となる「TSUTAYA図書館」で、佐賀県武雄市、神奈川県海老名市に続いて全国で3館目。スターバックスコーヒーや蔦屋書店などの商業施設を併設、貸出カードとしても利用できるTカードも導入されている。

武雄市や海老名市では、既存の建物を改修してリニューアルオープンさせていたが、多賀城市では、東日本大震災の復興のシンボルとして位置づけるJR仙石線多賀城駅前の再開発ビルに新設された。多賀城市立図書館は、これまでのTSUTAYA図書館とは何が違うのだろうか? 開館に先立ち、3月20日に行われた内覧会をレポートする。

■現場の声を聞きながら、独自分類を改善

多賀城市立図書館の正面玄関を入ると、まず蔦屋書店の商業ゾーンが広がる。1階にはスターバックスコーヒー、コンビニエンスストアが入居、2階はレンタルコーナーとなる。3階はレストランとなっている。市立図書館は正面玄関から入って左手にあるゾーンで、1階から3階まで書架が並ぶ。2つのゾーンは、吹き抜けによって区分される。

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左側が図書館ゾーン、右側が商業ゾーン

入館すると必ず蔦屋書店のフロアは通過しなければならないが、図書館ゾーンに一度入れば、館内では商業ゾーンに足を踏み入れることはない。武雄市や海老名市では、商業ゾーンと図書館ゾーンの区分が不明瞭だという批判があったが、多賀城市では「ゾーニングをはっきりとさせた」(CCC広報)という。

TSUTAYA図書館の大きな特徴に、従来の図書館にはない「ライフスタイル分類」などの独自分類がある。この分類についても、これまで「本を探しづらい」などの声が上がっていたが、今回、独自分類は踏襲しているものの、分類の基本となる記号に改善が加えられている。

海老名市では、著者名の頭文字を記した「著者記号」が1文字だけだったため、多数の著者が同じ分類となってしまい、本を探しづらかった。そこで、多賀城市では著者名前の頭文字を2文字に増やしている。

多賀城市立図書館には、自治体直営時代の職員15人のうち、11人が継続して雇用された。現在も職員65人のうち、5割が司書資格を持つ。こうした現場司書の声を聞きながら、配架スピードをあげるため独自分類を改善したという。

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たとえば、作家、天童荒太さんの本の著者記号は、海老名市のルールでは「テ」だが、多賀城市では「テン」となる。

また、TSUTAYA図書館の空間演出として、蔵書の多くを開架にして一覧させる高層の書架が多用されているが、多賀城市立図書館でも採用されている。多賀城市教育委員会によると、建物は東日本大震災の経験をふまえ、通常の耐震基準を越える耐震性を持つよう、建築された。高層書架には落下防止のポールを渡し、CCCが実験を行って東日本大震災レベルの地震でも本が落下しないことを確認しているという。

■問われる多賀城市立図書館の「手腕」

開館に先立ち、内覧会では記者会見が開かれた。菊地健次郎市長は、その中で「本・音楽・生涯学習など、出会いや交流を通じてともに学び合うことのできる場として新市立図書館、そして、蔦屋書店、カフェやレストランなどの商業施設が併設し、およそ45万冊という圧倒的な冊数を誇る『知の拠点』が誕生します」と挨拶。「東北随一の文化交流拠点の始動」と期待をかけた。

また、これまで武雄市や海老名市で図書館を手がけたCCCデザインカンパニー行政サービス企画カンパニー長、高橋聡さんは、「図書館のポイントは4つあります。コンセプトは『家』。誰もが集まれる場所にする。多くの文化情報、地域の文化情報に触れられる場にする。子どもにも末永く図書館を利用してもらえるよう、児童サービスの充実を目指します」と説明する。

高橋さんは、多賀城市立図書館の目標として、「我々が運営上目指していくのは、東北随一の文化交流拠点。ぜひとも、家族の方と一緒に気兼ねなくご利用いただける図書館になり、残念ながら震災によって離れ離れになってしまった方々にとっては『家』ととらえていただき、集まっていただける図書館になるよう努力していきたい」と語った。

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菊地健次郎市長(左)とCCCデザインカンパニー行政サービス企画カンパニー長、高橋聡さん。

武雄市や海老名市での課題を反映させた3館目のTSUTAYA図書館。全国では、CCCと図書館を造る計画が進んでいる。岡山県高梁市では、3月18日、建設中の市立図書館の指定管理者をCCCとする議案を可決した。一方、地域住民や図書館関係者からの反発も根強い。

愛知県小牧市ではCCCなどとの新図書館計画の是非を問う住民投票が2015年10月に実施され、反対票が上回り、計画は白紙撤回された。また、山口県周南市でもCCCと新図書館建設計画が進められているが、反対する住民らの署名運動に発展。周南市議会で2月、計画の是非を問う住民投票条例案が否決されるなど、物議を醸している。

多賀城市立図書館が今後、他の自治体におけるTSUTAYA図書館計画に与える影響は少なくない。CCCでは現在、武雄市、海老名市での課題をふまえ、図書館に詳しい外部の専門家と協力しながら、運営の向上をはかっており、その手腕が今後、問われる。

■多賀城市立図書館とは?

2016年3月21日にJR多賀城駅前にCCCを指定管理者として、移設オープン。365日9時〜21時半開館(旧図書館は年254日9時〜17時開館)。蔵書数は23万冊で、うち開架は約20万冊(旧図書館は蔵書数19万冊、うち開架は10万冊)。面積は1011坪(旧図書館は466坪)、フロア座席数は約300席(旧図書館は約50席)、学校司書を含めたスタッフは65人(旧図書館は学校司書含め28人)。年間120万人の来館者数を目指す。

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