政府の受動喫煙法案が、まるで骨抜きになる中、東京都がどういう条例を出してくるか、が密かに注目を集めています。
【瀕死の受動喫煙防止法案】
東京都といえば、2年後にはオリンピックのホストシティとなる都市。
近年のオリンピックでは、どの都市も屋内禁煙。スモークフリー(煙のない)オリンピックを実現させています。
しかし、このまま政府の受動喫煙防止法案で行くと、東京都では100平米以下の居酒屋が9割なので、ほとんどの居酒屋でタバコ吸い放題となり、まるで意味のない状況になるわけです。
受動喫煙被害によって年間1万5000人が命を落としているにも関わらず、年間3231億円も余計な医療費がかかっているにも関わらず、国会議員の皆さんにとっては、あまり優先順位は高くないようです。
さて、そこで東京都はどう出るのか。
国に合わせて受動喫煙し放題の東京で、モクモクオリンピックを開催し、外国人から顰蹙を買うのか。
それとも、ダメダメな国の向こうを張って、未来の日本を指し示す、あるべき政策を勇気を奮って創り出すのか。
我々、民間有志(渋谷健司 東京大学教授・中室牧子 慶應大学准教授・為末大・フローレンス駒崎)で、その辺りの問いをぶつけてみました。
【ガラパゴスになってはいけない】
都知事は会議室に入ってくるなり、僕を見て仰りました。
「スクールバスに乗せてもらえない、医療的ケア児のための看護師付きのスクールバスの予算化を頑張ったんですよ」
厳しい立場に置かれた障害のある子ども達のことが、気になっていたのでしょう。子どもの前での喫煙を禁止した、子どもの受動喫煙防止条例を国に先んじて進めているのも、そうした個人的な思いが背景にあるだろうことが推察されました。
渋谷健司教授が医師の立場から、中室牧子先生が経済学者の立場から、エビデンスに基づいた受動喫煙の被害と、屋内禁煙にしても飲食店の売り上げは減らない、というプレゼンをされました。
また為末さんからはアスリート達の立場から、受動喫煙を撲滅しなくてはいけないこと。そして僕からは東京都の喫煙率は既に18.3%まで下がり、約82%の人たちは非喫煙者であるという背景状況もお伝えしました。
小池知事は、そうした話を熱心に聞かれていました。
そして僕たちの話を聞き終わった後に、東京都がオリンピックホストシティとしての責任を果たさねばならないこと。世界から隔絶されたガラパゴスになってはいけないこと。とはいえ様々な独自ルールを掲げている自治体条例との整合性をきっちり取っていかなければならないことなどをお話しされました。
具体的にどういう条例にしていくのか、というところは、もちろん発表前なのでお話ししては頂けませんでしたが、少なくとも我々民間有志の屋内禁煙への想いを伝えることはできたのではないかと思います。
【これは東京だけの問題ではない】
東京都の条例がどうなるか、は東京だけの問題ではありません。
首都東京都が決めたルールは、必ず地方にも影響を与えていきます。その意味で、日本全体に関わる問題なのです。
東京以外に住む皆さんも、ぜひこの東京都の受動喫煙条例について、注目してください。
受動喫煙で亡くなる人々を一人でも減らしていく仕組みを創ること。
それがオリンピックとともに、私たちが次の世代に残せるレガシー(遺産)なのではないか、と思うのです。
(2018年4月10日「Yahoo!個人(駒崎弘樹)」より転載)