シリアで化学兵器が使用されたと見られる問題をめぐり、国連安全保障理事会は4月12日、アサド政権に全面的な調査の受け入れを迫る決議案を採決した。しかし、アサド政権を支持するロシアが拒否権を行使したため廃案となった。中国は棄権した。
決議案は、4日のシリア北西部での攻撃で化学兵器が使用されたか調査するために、シリア側に空軍基地への立ち入り受け入れを迫るなどの内容。米英仏3カ国が主導し、日本など10カ国が賛成した。
イギリスのマシュー・ライクロフト国連大使は、ロシアが「国際的な同胞よりも、殺人的で野蛮な犯罪者」を支持していると非難。「生きられなかった子供の写真を見て、どうやって拒否権を行使できるのか」などと述べた。
発言するイギリスのライクロフト国連大使(KENA BETANCUR/AFP/Getty Images)
これに対し、ロシアの、サフロンコフ次席大使は「決議案は客観的な調査を行う前から犯人を決めつけている。一方的だ」「ロシアを侮辱することを受け入れられない」などと反論した。
シリア内戦中に、ロシアが拒否権を行使したのは8回目となった。
国連安保理は2013年、シリアに化学兵器の廃棄を義務付ける決議を、全会一致で採択した。もし今回の化学兵器使用が事実だとすれば、シリアは国連決議を無視したことになる。