「サステナブル・ブランド国際会議 2020 横浜」では、「セクターを超えた連携が加速する変革の可能性」をテーマにランチ・セッションが開催され、ミライロの垣内俊哉社長と、一般社団法人RCFの藤沢烈・代表理事が登壇した。自身も障がいを持つ垣内社長は障がい者の視点から「バリアを価値に変えていくことが必要」と話し、藤沢代表理事は復興支援の考え方から、「企業が地域のプロトコルを理解してほしい」と呼びかけるなど、社会の連携を促すために何が必要なのかを議論した。(松島 香織)
障がいを価値に転換するために必要なことは
垣内社長は「バリアフリーとはマイナスをゼロにすること。だがこれからは、価値に変えていくことが必要」と力を込める。そして、社会や企業が向き合うべきバリア(障害)として、「環境」「意識」「情報」を挙げた。
環境のバリアには、障がいのある当事者の声が必要であること、意識のバリアについては、高齢者や障がい者に対して企業の対応は無関心か過剰かの二極化していると指摘する。その原因を「多くの違いを理解していない」ことと分析し、自身が提唱し、障がい者が講師となりコミュニケーションの取り方などを教えているユニバーサルマナーを紹介した。
情報のバリアについて、「店の前に段差があるかどうかの情報は発信されている。だが、本当に必要なのは段差の有無でなく『段数』。何段もあれば、車いすやベビーカーを担がなくてはいけない」と垣内社長は話す。更に電動車いすユーザーにとっては「コンセントがあるか」、視覚障がい者にとっては「相手に現金を数えてもらうのは申し訳ないから、クレジットカードや電子マネーが使えるか」、といった情報が必要だという。
「連携とは異質なものと出合うこと」
藤沢代表理事は、災害復興になぜ企業が取り組むべきかについて、「行政は『復旧まで』支援するが、その時期は地域産業の転換期にあたる。民間だからこそ柔軟にノウハウが提供できる」また「行政は公正が求められ、一地域のみを支援することができない。だが、企業であれば突出した取り組みが可能」だと話した。
更に、行政、企業、NPOなどの組織がお互いの強みを活かして社会的課題の解決を目指す「コレクティブインパクト」と、企業が自治体の事業に寄付することで減税の対象となる「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」を取り組みのポイントとした。
「東日本大震災では約1000 社が東北を支援するために自治体を訪れたが、8割はうまくいかなかった。東北地方では特に地域との関係性がないと、仕事が出来ない。都市部と仕事の進め方が違うがノウハウは欲しているので、企業が地域のプロトコルを理解してほしい」と話し、特に若い世代に「現場を見ることを大切にしてほしい」と力を込めた。
ファシリテーターを務めたあずさ監査法人の芝坂佳子さんは、「連携とは異質なものと出合うことから始まる。日本は同質性や協調性を重んじて自分と違うものは避ける傾向があるが、気づきになれば前向きなエネルギーになるのではないか」と話した。
垣内社長は「従来、障がい者への対応は社会貢献の域を出なかった。だから長続きしなかったし、広がらなかった。ひとつのビジネスとして取り組むことで障がい者の雇用と消費が進む」と、多様な組織が連携して生み出だされた社会性と経済性があってこそ、社会は変わるのだと期待感を示した。
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