私は、フルタイムワーキングママとしての自分の経験から、「働くママに笑顔を」をコンセプトに、ワーキングママのためのベビーシッターサービスmormor(モルモル)を運営し、さまざまな環境下でお仕事に子育てに頑張るワーキングママと接してきました。
核家族化やご近所付き合いの希薄化、ハードワークのパパ。働くママの負担は大きく、預け先をみつけるのも一苦労...。
仕事・子育て・自分の時間とワーキングママライフをめいっぱい充実させ、未来のワーキングマザーが希望を持てるような背中を見せるためのハードルはまだまだ高いのが現実です。
ヒントを探ろうと、お母さんが当たり前に働けていて、幸福度も労働生産性も高いスウェーデンに視察に行ってきました。
そこで出会った人々の声を紹介します。初回は、育児休暇中のパパ、マグヌスさんです。
2 回目の育児休暇取得中パパ、Magnus(マグヌス)さん(年齢などは取材当時)
年齢: 40 才
職業: 大手アパレル会社勤務
家族構成: 妻(38 才、外科医) 子供 2 人(1 才、3 才)
結婚歴: 4 年 (2 年間のサムボ婚(事実婚)を経て結婚)
育休取得状況:
夫(現在 5 か月間の育休中。第一子誕生時も 5 か月取得)
妻(第二子で 13 か月取得)
——お仕事内容を教えてください。
今の大手アパレル会社で働き始めて3年目。世界(特にアジア)に向けたオンラインマー ケットを開く業務を担当。日本にもよく出張していたよ。
——現在育児休暇中ですが、どんな生活ですか?
保育園に通う長男の送り迎え、次男の子育てと家事全般が今はフルタイムで自分の仕事。 会社の同僚や上司は一切仕事の電話やメールをしてこない。どうしても用事がある場合には、まず「今電話して大丈夫か?」と確認してくれる。逆に自分は仕事のことが気になってメールをチェックしたり、職場がすぐ近くなので立ち寄ったりすることはあるけれど、同僚も上司も、育児休暇中の自分の生活を尊重してくれているとすごく感じる。
ただ、それは今、育休期間だから。子どもが病気の時に数日間休める子どもの看護休暇制度もあるけれど、その場合はどうしても仕事の電話やメールが入ってしまうので、家で看病しながら仕事をすることになり、すごくストレスを感じるね。
——育児休暇を取ることに抵抗はありませんでしたか?
妻の妊娠を会社に伝えたところ、快く育休の取得を勧めてくれた。実は1年を勧められたけど、さすがに1年は長いかな、と思って自分の判断で 5カ月にした。やはり1 年も取るとキャリア上不利になる面があると思うけど、男性の育休取得自体はこの会社では普通だし、キャリア形成上、全く不利にならないね。だから喜んで育休を取ったよ。
今回は夏に1カ月、冬に4カ月と分けて取得した。ちなみに上司も3カ月育休を取得、上司の上司も取得していた。
それから、経済的な面でも、スウェーデンでは手厚い育児休暇保障がある。
国からの育休中の給与保障(50%)に加えて、会社からも支給(30%)があるから、休暇中も80%は給与保障がされるんだ。スウェーデンは税金が高いけれど(給与の半分くらいは税金として引かれている)、これまで払ってきた税金が、今、自分に戻ってきていると感じている。
子育てに理解がある会社には本当に感謝しているから、かなり忠誠を尽くして仕事に取り組んでいるよ。優秀な人材を確保するための手段として、男性の育休制度を充実させている会社も増えている。
同じスウェーデンの企業でも育休に理解が低い会社もあるが、若い世代が多い業界や会社では男性の育休はかなり一般的なことだと思う。でも、他国の会社、例えばドイツの会社などは、「パパの育休って何?」という感じだと聞くよ。
——子育て中の社員として、職場で気をつけていることはありますか?
とにかく効率的に働くことを徹底している。特に我が家は妻が外科医ということもあって、子どもの病気や急な呼び出しでのお迎えや、看護休暇を取るのは自分の役割。
今はアジアの国とやり取りをする仕事が多いから、 時差もうまく利用しながら効率的に仕事をまわす工夫をしている。
——ベビーシッターを頼むのが恥ずかしいという方もいたのですが、マグヌスさんはどう思いますか?
毎日シッターに子育てをさせている、となるとちょっとどうかと思うけど、特別な日や必要に応じて利用する分には全然抵抗はない。
——子育てのストレスはありますか?
いつも感じているよ。(笑) 今は、下の子の夜泣きがひどくて大変。
離乳食タイム。この日は市販のベビーフードでした。
——家事や育児の分担でもめることはないですか?
家事は50:50。特別に役割分担しているわけではないけど、家事の分担で喧嘩になったことはない。現在は自分が育休中だから家事や料理、子育ての大部分を担っている。妻が帰宅する時には食卓に夕食が整っている状態だから、彼女はとてもハッピーだと思うよ!この 1 週間は特に頑張ったから、いつまで続くか分からないけどね。(笑)
——マグヌスさんの両親の世代はどうでしたか?
両親(70代)の世代は今と全く違う。当時の主流の通り、母は専業主婦。父は外で働いて家のことは一切しないという家庭だった。そんな家庭に育ったけれど、自分には「女性だから」「男性だから」○○すべきという 感覚はない。だって、私の妻は私と同じように外で働いて稼ぎ、自立している。どちらも働いて、どちらも家事ができるんだから、どうして男性も家事をやらないの?と思う。 今、ストックホルムではそんな考え方を持つ男性が多いし、パパの育休も浸透してきているけれど、それはスウェーデンで一番大きな都市だからこそで、且つ、我々の世代になったからこそ、実現している特別な状況だと思う。
それに、スウェーデン人であるということも影響していると思う。実際、毎週掃除に来てくれているアルメニア人の女性の夫は、共働きでも家事は何もしないらしいよ。
——スウェーデンでは、どうして一世代で社会全体の意識が変わったのだと思いますか?
育った家庭環境を思うと、自分もかつての父親のように家事や育児は何もしない夫になっていたかもしれない。どこでどう意識が変わったか、具体的には分からないけれど、 教育の違いではないかな。
男女平等という社会常識の変化、社会的な教育とでもいうか。 70 年代のフェミニズムの影響もあると思う。
事実、今の女性は自分で稼ぎ、とても自立している。夫婦のどちらも仕事を持ち、お互いに自立しているとなると、性別に関係なく、家事も分担するのが当たり前だと自然と思うはず。
我が家の場合、妻は医者でとても忙しいから、家事や育児を分担せずに全てやってもらうなんて到底不可能だし、もちろん彼女も「男性だから・女性だから」という考え方はしていない。そういった女性は、結婚の必要性をあまり感じていないかもしれないし、 そんな女性と結婚しようと思うと、男性側も育児や家事を当然担うという考え方でないと難しい。
ただ、個人的には、それは結婚する相手にもよるかもしれないとは思う。今でも中には、 昔の考えのまま、専業主婦を望む人もいると思うから。
ちなみに私の両親はその後離婚して、父は再婚したんだけど、再婚相手の女性は働いて いて、再婚後の父は家事をするようになったみたいなんだ。彼も変わったんだね。
——今後の人生の目標は?
現在は、家族が一番大事。家族旅行に出かけたり、一緒にたくさんの時間を過ごしたい。もちろん、仕事も 大好きだから良い仕事もしたいけど、出世したいという意味ではなく、家族との時間も確保しながら、ベストを尽くしたい。 幸せな家族でいることが自分にとって何よりの目標。
——これからパパになる人へメッセージをお願いします。
パパの育休取得を強く勧めます! 子供と親密な絆を作れるし、子育てがどれだけ大変な仕事なのか、やれば分かる。「育児休暇」っていうけど、全然「休暇」じゃないよね。家事や育児が立派な「仕事」 なのだと分かった。パパの育休を取ることで、僕たち家族はこれまで以上に「チーム」になったよ。
◇ ◇
ストックホルムの街中では、平日の日中にベビーカーを押す、育休中のお父さんたちの
姿をたくさん目にしました。日本では浮きそうなこの光景もストックホルムでは日常風
景。
共働き世帯が片働き世帯を超えている今、昭和の性別役割分業の価値観では家庭がまわ
らなくなっているのが事実。現代の家庭生活を成立させていく上では、どうしても、男
性の家庭進出が必要です。そのために、これから親になる世代には性別問わず夫婦で協
力して家事・育児を含めた家庭生活を担っていくものとして意識を変えていかなければ
いけないと感じました。
マグヌスさんのお話を聞いて感じたのが、育った家庭環境に関わらず、たった一世代でライフスタイルも価値観もガラッと変わるし変えられるということ。
共働き世帯は夫婦それぞれが自立している分、今一度、二人の家族観・仕事観をすり合わせて、自分たち家族にとってベストな形を模索していかなければならないと思いました。
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8/26(土)渋谷キャストにてスウェーデンの育休パパのポートレート<Swedish Dads写真展>を開催します!
スウェーデンの写真家 Johan Bävmanが手掛ける、25人の育休パパのリアルな姿を切り取ったポートレート<Swedish Dads>。日本でも少しずつパパ育休の取得が伸びてきました。夫婦にとって、「ちょうどいい育休のカタチ」を考えるきっかけとして、たくさんの方にご覧いただけたらうれしいです!
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渋谷ポジティブアクション
日程:8月26日(土)11時半~16時半
会場:渋谷キャスト
※写真展は渋谷キャスト内イベントスペースにて、16時まで