「私たちの世界を変革する」持続可能な開発目標ってどんなもの?(第十回:目標7)

人々の暮らしを良くしていくことができるのではないでしょうか。

前回は、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」※の目標8についてご紹介しました。今回は、目標7について紹介したいと思います。

「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」:2016年から2030年までの15年間に、日本を含む世界のすべての国々が達成すべき目標。貧困・格差、気候変動などの課題について17の目標が定められている。「誰一人取り残さない」がキャッチフレーズになっている。

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目標7

「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保すること」

2011年、世界で再生可能エネルギーの生産量は、全体の20%以上を占めるようになりました。私たちの産業は石炭・石油といった化石燃料に頼って発展してきました。しかし、化石燃料の埋蔵量が有限であり、地球温暖化の原因となることから、世界は太陽光、水力、風力といった持続可能な再生エネルギーの普及・促進を目指しています。

目標7.2(目標7/ターゲット2)に「2030年までに、世界のエネルギーミックス における再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」と明記されていますが、特にヨーロッパでは、再生可能エネルギーに対する意識が高くなっています。福島原発事故の後、緑の党による働きかけ等もあり、ドイツでは2022年に向けて原子力発電を段階的に廃止することを決定しました。

一方、途上国は経済発展のために、今後より多くのエネルギーを必要としています。人口増加、一人あたりのエネルギー消費量が増加するにあたり、エネルギーへの需要が増加します。今後25年にわたって、エネルギー需要増加量の90%がOECD非加盟国からであると予測されています 。

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ⒸColin Crowley /Save the Children

途上国と先進国はエネルギー使用の方向性が異なる!

  • 先進国:持続可能なエネルギー消費を目指して、再生可能エネルギーの活用を促進している。
  • 途上国:再生可能エネルギー生産にコストをかけるより、環境の負荷は大きいが安価なエネルギーを利用して経済発展を目指す傾向にある。

この両者の立場の齟齬は、気候変動に関する国際会議で、対立として顕著に表れてきました。それが以下の主張です。

  • 先進国:地球温暖化対策に取り組むには途上国を含むすべての国家の協力が必要である。
  • 途上国:先進国は温暖化を引き起こした責任があり、排出削減の義務は原則として先進国が負うべきで、削減への対応の余地も先進国が上回る。

そうした立場の違いから議論が重ねられ、結果として「共通だが差異ある責任」という概念が導入されました。地球環境に対する責任は先進国と途上国がともに負うものの、その大小は異なり、また対処への能力にも差異があるという概念です。

再生可能エネルギーの利用率を世界中で高める必要があるが...

経済発展へのニーズが高い途上国に再生可能エネルギーの使用に注力を注ぐよう強く求めることは、正当化できるのでしょうか。

私たちが住む日本も、1960年代に高度経済成長を経験しましたが、それは四大公害を引き起こすなど、環境保全、ひいては人権への考慮がなされなかった一面があります。現在の途上国も1960年代の日本と同じ立場にあると考えられます。高度経済成長期の日本は、もし「経済発展より、環境を保全しろ」と国際社会から言われたら、反発したのでしょうか。

経済発展への途上国のニーズ、また、先進国がより大きな責任を負うという観点から、途上国に再生可能エネルギーの導入を独自に行うよう求めるのではなく、先進国が支援する必要性があることを明確化したのが、以下の二つのターゲットであり、先進国の支援のもと再生エネルギーの導入を促す文言が見られます。

7.a「2030年までにクリーンエネルギーの研究及び、技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化すること」

7.b 「2030年までに開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行うこと」

※目標とターゲットの全文はこちら

経済発展と再生可能エネルギーの問題は、すべての国家が同意できる明確な解を見出すために、これまでも国際的に議論が進められてきました。

エネルギー・環境問題を国家VS国家の視点から、人間一人ひとりの視点を考えてみる

目標7.1に、「2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する」と明記されていますが、1900年から2010年の間に、世界で電力にアクセスできる人口は17億人増加しました。しかし世界の5人に1人は、未だに電力へのアクセスがありません。

エネルギーは経済発展の基盤を支えるだけでなく、私たちの日常生活を支えるものでもあります。電力へのアクセスがないと、医療の提供や学習ができません。蛍の光を集めてその光で書物を読み、また雪の明かりで書物を読んだという「蛍雪」という故事がありますが、その時代から約1700年経った今も、同じような状況に置かれている人々がいることになります。

日常生活に必要なエネルギーは、産業用ほど大規模に必要ではありません。

先進国、途上国のどちらにとっても、電力にアクセスできない人をゼロにすることは、共通の課題であり、お互い協力して取り組むことができると考えられます。

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出典:solaroad

世界では革新的なアイデアで、再生可能エネルギーを作る方法が生み出されています。例えば、オランダでは、道路にソーラーパネルを組み込んで太陽光発電が行われています。また、途上国の電源網がない地域で、NGO等の活動により、小型のソーラーパネルを使用したランタンなどが用いられ、子どもたちの学習環境の改善や医療活動などに活用されている事例もあります。世界中は、革新的なアイデアであふれています。このようなアイデアを利用して、人々の暮らしを良くしていくことができるのではないでしょうか。

アドボカシーインターン

金子智広