アメリカのオバマ大統領は9月15日の声明を発表、連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長の有力候補だったサマーズ元財務長官の起用を断念する方針を示した。同氏が議長候補となることを固辞する考えを表明したことを受けた措置としている。47NEWSが伝えた。
時事ドットコムによると、サマーズ氏は大統領に電話で要請。短い書簡も送った。その中で、もしサマーズ氏が指名されたとしても「不本意ながら、私の(FRB議長)承認過程ではいずれにせよ手厳しい批判を招き、FRBや政権、最終的には経済回復のためにならないという結論に達した」と説明した。
サマーズ氏のFRB議長起用をめぐっては、共和党、民主党双方から反対の声が上がっていた。
アメリカ上院共和党ナンバー2のジョン・コーニン院内幹事は12日、報道官を通じて「サマーズ氏の行動記録を振り返ると、景気刺激のための財政出動と増税を促進しており、これはテキサスの価値観にそぐわない」と語り、サマーズ氏指名に反対を表明。
上院銀行委員会メンバーのジョン・テスター議員(民主、モンタナ州)も13日、広報担当者を通じて「テスター議員は銀行委で反対票を投じる意向だ」と述べた。
オバマ大統領はサマーズ氏の意向を受け入れた上で、サマーズ氏について「大恐慌以来の最悪の経済危機に直面した際の私のチームの重要な一員だった。彼の経験や知恵、リーダーシップによって、経済は成長を取り戻した」と称賛。今後も助言を求めていく考えを明らかにしている。
サマーズ氏は1954年生まれ。16歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)入学。28歳の史上最年少でハーバード大学教授に就任。世界銀行のチーフエコノミストなどを経て、1999年にロバート・ルービンの後任としてアメリカ国財務長官に就任(2001年退任)。2001~2006年ハーバード大学学長。オバマ政権ではNEC(国家経済会議)委員長を2年間務めた。
サマーズ氏の金融政策には、これまでも批判が起きていた。ロイターのコラムニスト、ジェームズ・セフト氏は次のように述べる。
第一にサマーズ氏は金融規制を骨抜きにしたり、あるいは実効性のない金融規制を策定してきた歴史を持つ。この歴史は少なくとも、1990年代末のデリバティブ規制への反対やグラス・スティーガル法廃止の支持にさかのぼる。同法を廃止し、「大きすぎて潰せない」金融機関がはびこる今日の世界の創設に手を貸すことになったグラム・リーチ・ブライリー法を、サマーズ氏は1999年、いかに称賛していたことか。
(ロイター 2013/07/19「コラム:次期FRB議長、サマーズ氏かガイトナー氏なら悪夢に」より)
※グラス・スティーガル法 アメリカの1933年銀行法のうち、銀行業と証券業の分離について規定した部分。銀行の扱える証券を限定列挙して規定しているので、近年の金融・資本市場の実態にそぐわないといわれている。
※グラム=リーチ=ブライリー法 1999年11月12日に成立。グラス=スティーガル法20条と32条およびこれに関連する1956年銀行持株会社法の当該条項を撤廃することで、銀行・証券・保険の相互参入を可能にするものであり、その狙いはアメリカ金融サービス産業の国際競争力の強化であった。
サマーズ氏の傲慢な性格がネックとの指摘もある。女性蔑視発言でハーバード大学長を追われたことだけでなく、財務長官時代には議会軽視の発言を繰り返し、非難を浴びた。「サマーズ氏に謙虚さを求めるのは、マドンナに貞淑であれと希望するようなものだ」とも言われたと報道されている。
他の有力候補には、ジャネット・イエレンFRB副議長らの名前が挙がっている。
サマーズ氏のFRB議長指名辞退について、以下のような声が上がっている。
「『サマーズ・エンド=夏の終わり』を目にすることができてこんなにうれしいことはない」バリー・クリミンズ(政治風刺作家)
「サマーズがFRB議長レースから離脱したと聞いてうれしい。もう、政府にはウォールストリートのメガ億万長者はいらない!」アリ・ヴァン・ジー(ホスピス看護師・作家・編集者)
「大統領の政党が上院を支配しているのに、大統領が意中の人物をFRB議長に選べないなんてショッキングだ」ロバート・スタイン(元上院予算委員会チーフエコノミスト、First Trust Advisorsチーフエコノミスト)
ハフィントン・ポストUS版でも、「SUMMERS OUT」と題して、サマーズ氏FRB議長指名辞退のニュースをトップで伝えている。