彗星探査機ロゼッタ(Rosetta)が最後に地球に送信してきた写真が、このほど復元されました。ロゼッタはこの写真データを送信中に彗星にハードランディングし、機能を停止したため、データが不完全となっていました。
欧州宇宙機関(ESA)は、特徴的な"アヒルちゃん"形のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を探査するため2004年にロゼッタを打ち上げました。そして、およそ10年をかけて彗星に接近したロゼッタは、そこから2年間彗星を周回しながら観測を続け、搭載するイメージングシステムOSIRISを使って大量の写真を撮影しました。
ところが、その最後の1枚となった写真は、撮影されたのち、データを送信し終える前にロゼッタの任務完了のとき(彗星へのハードランディング)が来てしまい、未完の画像データが残されました。
ミッション完了当時、ESAの管制チームが使用していた画像処理ソフトウェアでは、この未完データを復元されず、チームもそのことに気づかなかったため、最後に完全な格好で受信できた画像データが「最後の1枚」として公開されました。
しかしその後ロゼッタのOSIRIS担当、Holger Sierks氏はサーバー上にまだテレメトリーパケットの断片があるのを発見し、それが「本当の最後の1枚かもしれない」と思ったとのこと。
そして9月28日、画像を復元する方法を見つけ出したチームは、(冒頭に掲載した)本当の最後の写真を公開しました。復元された写真は、地上約20mの高さから約1m四方の地面を撮影したものです。降下中の撮影のため、ややピンぼけした画になっているものの、水星の表面の岩場の様子を詳細に知ることができます。
ハードランディングとは言ったものの、実際の降下速度は約3.2km/hという低速でした。しかしそれでも探査機が機能を停止してしまうダメージを追うには充分だったようです。また仮に着陸後も探査機が行き続けていたとしても、太陽から遠ざかる彗星上で探査機が機能を維持することはできなかったと考えられます。
(2017年10月2日「Engadget日本版」より転載)