野党分断に八面六臂の活躍。安倍政権最大のキーマン菅官房長官
安倍政権のキーマン中のキーマンといわれる菅官房長官の動きに注目が集まっている。菅氏は現在の政界には珍しく、水面下での政界工作を得意する政治家である。安倍政権はますます長期政権化の可能性が高まっているが、政務における最大の功労者は菅氏といってよい。最近ではあまり聞かれなくなったが、まさに政界の寝業師という形容がふさわしい人物だろう。
このところ安倍政権は、最大の懸念材料であった保守系野党勢力の切り崩しに成功している。
みんなの党の渡辺代表は2013年11月14日、安倍首相らと会食を行ったが、この会食が同党が特定秘密保護法案へ賛成する転換点になったといわれている。同党の方針転換に反発した江田前幹事長は12月9日、自らに近い議員とともに集団で離党届を提出し、新党である結いの党を結成した。
特定秘密保護法案の扱いを切り口に、みんなの党の内紛を表面化させ、党を割ることに成功したわけであり、政局的な観点からすれば安倍政権にとって大きな収穫であった。
続いて首相は12月23日、日本維新の会の橋下徹共同代表と東京都内のホテルで会談し、来年の通常国会に向けて意見交換を行った。維新の会も内部がまとまっておらず、野党再編の火付け役になれる状況にはない。何より、石原慎太郎共同代表が後ろ盾となっていた猪瀬前東京都知事が辞任したことが大きく影響しており、石原氏は現在、身動きが取れない状況にある。首相との会談はこうしたタイミングでセットされた。
結果的に有力な野党の動きをすべて分断し、野党勢力の統合を封印する形になっているが、一連の工作について絵を描いているのが菅氏だといわれる。2013年中に進めるはずだった集団的自衛権の憲法解釈を2014年に延期することを首相に進言したのも菅氏といわれており、政局や世論を見極める勘は冴え渡っているようだ。
管氏は最近では珍しいたたき上げの政治家である。秋田県から集団就職で上京、働きながら法政大学を卒業し、国会議員の秘書を10年以上も続けた。政治家としてのデビューは横浜市議であり、2期務めた後、1996年に神奈川2区から出馬。ようやく衆院に初当選している。
かつて自民党には党人派、官僚派という区分があった。一般的な派閥とは別に、ゼロからたたき上げた政治家のグループとエリート官僚出身のグループが形勢されていた。田中角栄氏や竹下登氏は、まさに党人派の代表といえる政治家だが、ややもすると頭でっかちになりがちな官僚出身者に対して、党人派の政治家は政界工作などに大きな力を発揮した。
現在ではこうしたグループはなくなり、議員の多くが二世か官僚出身になってしまった。その中において菅氏はかつての党人派といえる数少ない存在であり、管氏の行動力や政局勘は現在の自民党では突出している。菅氏がいなければ安倍政権は機能不全を起こしてしまうだろう。
党人派の多くは地方を地盤として、露骨なまでの利益誘導を行うことが多い。だが管氏は神奈川という都市部が地盤であることから、そうしたイメージはほとんどない。第一次安倍内閣では総務大臣を務めており、構造改革の推進者でもある。管氏は最後の党人派であると同時に、新しい時代における党人派の政治家なのかもしれない。
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