9月12日、複数のメディアにより、経産省が「電動アシスト付ベビーカーは軽車両であり、車道を走行すべき」と発表したとする記事が配信され、話題になっています。
・電動アシスト付ベビーカーは「軽車両」...車道を通行し、警音器を設置 グレーゾーン解消 (レスポンス 9月12日 9:15配信)
・「電動アシスト付ベビーカーは車道へ」 経産省の発表が「再検討を」と炎上 (しらべえ 9月12日17:30)
たとえば「レスポンス」は次のように伝えています。
電動アシスト付ベビーカーを使用する場合、道路交通法上、車道または路側帯(軽車両の通行を禁止することを表示する道路標示によって区画されたものを除く)の通行が求められる。道路運送車両法上、「軽車両」の保安基準(警音器の設置)に適合する必要があるとしている。 出典:レスポンス 9/12(火) 9:15配信記事より
記事の文面を読むと、「全ての」電動アシスト付ベビーカーが軽車両となり、車道を走行しなければならなくなると感じられます。わたし自身はじめて読んだときはそう思い、驚きました。
ただ少し調べてみると、上記の理解、すなわち「全ての電動アシスト付ベビーカーは軽車両となる」というのは誤解だと分かりました。
電動アシスト付きベビーカーは、条件を満たせば歩道を走行できる
発端となった経産省のニュースリリースは、9月7日に発表された下記のものです。
照会のあった電動アシスト付ベビーカーは、道路交通法第2条第3項第1号の「小児用の車」に該当せず、同法第2条第1項第11号の「軽車両」に該当する。 出典:経産省ニュースリリース(2017年9月7日)
確かに『「軽車両」に該当する』との記述がありますが、文頭に『照会のあった』との語句があります。つまりこのリリースは、ある「特定」の電動アシスト付きベビーカーに関して言及しているにすぎません。
では、電動アシスト付きベビーカー全体に関してはどうなのか?これに関しては、実は、2015年1月27日に警察庁交通局より以下のような見解が示されています。
駆動補助機付乳母車の取扱いについて(警察庁丁交企発第7号 平成27年1月27日)
少し長いですが、該当部分を引用します。
駆動補助機付乳母車のうち次に掲げる要件を備えたものについては、法第2条第3項第1号にいう「小児用の車」として取り扱うこととする。
(1) 車体の大きさが次に掲げる長さ、幅及び高さを超えないこと
長さ 120センチメートル
幅 70センチメートル
高さ 109センチメートル
(2) 原動機を用いない乳母車と同様の使い方を想定したものであり、かつ乳児等を載せるための機能を有するもの
(3) 原動機として、電動機を用いること
(4) 最高速度が6キロメートル毎時を超えないこと
(5) 鋭利な突出物がないこと
(6) ハンドル等から手を離した際には原動機が停止すること
なお、上記の条件に反する小児用の車であって原動機を用いるものは、自動車又は原動機付自転車と解されるので留意されたい。
要は、「サイズが大きすぎない」「速度が早すぎない」などの条件を満たす電動アシスト付きベビーカーは、「小児用の車」となり、歩道を走行できるということです。
今回のケースでは、ある事業者から問い合わせがあった特定のベビーカーに関し、条件に照らして考えたところ、「軽車両」に該当するとされたということのようです。(経済産業省の担当者に電話で確認したところ、上記の理解で正しいとのことでした)
リリースを出す・読むことの難しさ
というわけでここまでの内容をまとめると、下記のようになります。
・「電動アシスト付きベビーカーは全て軽車両となる」というのは誤解である
・車体の大きさ、機能、速度(時速6kmを超えない)などの条件を満たすものは歩道通行が可能
さきほども触れましたが、わたし自身、記事を読みニュースリリースを読んだ段階では「これは問題だ」と思い、対策を求めなければと感じてしまいました。誤った理解を広めないために、きちんと根拠を調べる。その重要性を改めて確認しました。
(2017年9月13日「Yahoo!ニュース個人(市川衛)」より転載)