復興予算の流用がまた発覚。今度は、電力会社の原発停止による負担穴埋めに100億円−−−。
28日付朝日新聞朝刊によると、電力会社が原発の代わりに火力発電所を稼働する際、借り入れの利子を補給する「火力発電運転円滑化対策費補助金」に90億円、原発停止で養殖施設に温水が供給されなくなったことを受け、国が新しいボイラーの設置や電気代を負担する「温排水利用施設整備等対策交付金」に10億円の計約100億円が、復興増税などで集められた復興予算から社団法人や自治体が管理する「基金」へと移されていたという。
このうち、「火力発電運転円滑化対策費補助金」は中部電力に対して計19億円、「温排水利用施設整備等対策交付金」は中部電力浜岡原発から無料で温水を提供されている「静岡県温水利用研究センター」のコスト負担として静岡県の基金を通して4億円が実際に支払われた。経産省は復興予算の使用理由について「国の要請で原発を止めたから」と説明しているという。
■書籍のデジタル化事業にも流用
また、東京新聞は被災地向けの書籍の緊急電子化事業に使われるはずの復興予算が流用されたと報じている。この事業は経産省による「コンテンツ緊急電子化事業」と呼ばれるもので、東北で中小出版社が東北関連の電子書籍を作る際に費用を国が半額補助し、電子書籍市場の活性化と復興を図るという目的で始まった。
東日本大震災の影響により被災地域では、出版関連事業者の生産活動が大幅に減退し、被災地域の書店等が失われたことにより地域住民の知へのアクセスが困難になっている。被災地域において、中小出版社の東北関連書籍をはじめとする書籍等の電子化作業の一部を実施し、またその費用の一部負担をすることで、黎明期にある電子書籍市場等を活性化するとともに、東北関連情報の発信、被災地域における知へのアクセスの向上、被災地域における新規事業の創出や雇用を促進し、被災地域の持続的な復興・振興ならびに我が国全体の経済回復を図ることを目的とする。
(経産省・コンテンツ緊急電子化事業特設サイト 「本事業の目的」より)
書籍デジタル化の目標は約6万タイトルだったが、中小出版社からの申請が伸び悩んだため大手出版社に協力を仰ぎ、なんとか目標数を達成。このため、中小のための予算のはずが全体の6割が大手出版社の作品になったという。また、デジタル化した書籍の3割以上が被災地域以外で作られ、金額では25%になる。同ホームページには、経産省からの補助金の利用達成率として「99.7%」という数字が出されている。
これらの流用は被災地支援という本来の目的から大きく外れているばかりか、復興予算を何が何でも使いきろうという思惑すら見えてくる。
復興予算の総額は25兆円で、東日本大震災の復興を促進しようと特別に設けた予算だ。このうち10.5兆円は「復興増税」として所得税や住民税などの増税でまかなわれる。これまでに、被災地以外でのインフラ整備など復興とは直接関係のない事業への流用が次々と発覚し、その総額は1兆円にのぼるとされている。流用の詳細を国はまだ説明しておらず、返還される金額も1千億円程度にとどまる見通し。
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