「サザエさん」の銅像に税金? 東京都が45年で約1千万円課税方針

「えっ、サザエさんに税金?」東京都が、世田谷区桜新町にある「サザエさん」の銅像に対し、45年間で1千万円近くの償却資産税をかけることがわかった...
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時事通信社

「えっ、サザエさんに税金?」東京都が、世田谷区桜新町にある「サザエさん」の銅像に対し、45年間で1千万円近くの償却資産税をかけることがわかった。

東京新聞は以下のように伝えている。

組合に納税通知書が届いたのは六日。税金は固定資産税のうち、土地と家屋以外の事業用の資産に掛けられる「償却資産税」。商店街なら広告塔や看板などにも掛かり、銅像は無税の「美術品」ではなく、「街のPRの道具」とみられた形だ。同税は資産の評価額に1・4%の税率で課税され、専門家によると初年度の税額は約五十五万円。耐用年数で価値が減少し、四十五年間で計約九百八十万円になるとみられる。

東京新聞 2013/06/12)

桜新町を管轄している東京都主税局の世田谷都税事務所は「税法にのっとって課税した」と説明している。

■桜新町のシンボル

桜新町は、「サザエさん」の原作者である故長谷川町子さんが1946年から1992年に亡くなるまで住んだ街として知られ、「長谷川町子美術館」もある。街のメインストリートに「サザエさん通り」と名付けるほど、サザエさんと深いつながりのある街だ。

こうした縁で昨年3月、東急線桜新町駅の西口、北口、南口周辺にはサザエやカツオなど磯野家とフグ田家の計12体の銅像が設置された。地元のシンボル的な存在となっていて、観光で訪れた人が像と記念写真を撮ることも多い。

桜新町商店街振興組合の坂口賢一理事長は、銅像完成に際して、「全国区であるサザエさんの銅像を見に多くの方が桜新町にいらっしゃると思う。サザエさんの銅像をきっかけに桜新町を知ってもらい、桜新町の良さを多くの方に知ってもらえればと思っております」とあいさつ。地域振興の要としての役割に期待していたが、今回の課税通知を受け「全く想定外で驚いた」と地元で困惑が広がっている。

■「償却資産税」とは?

銅像にかけられる税金は固定資産税のうち、土地と家屋以外の「事業用の資産」にかけられる「償却資産税」というもの。時の経過によってその価値が減少する「減価償却」によって、記録や計算、表示する必要がある「償却資産」について課税される。

埼玉県のホームページによると、償却資産とは

「会社や個人で工場や商店などを経営している人、その事業のために用いることができる構築物、機械、器具、備品等」

を示し、構築物では舗装された路面のほか広告塔や看板など、機械ではクレーンやブルドーザー、駐車場の機械設備、ボートなどの船舶や飛行機、また検査工具や事務机、自動販売機なども対象になるという。

東京都は桜新町商店街を「事業主」とみなし、サザエさんの銅像を使って「街のPR」をし、何らかの利益を得ていると判断したとみられる。一方で、書画や彫刻、工芸品といった美術品は時の経過で価値が減少しないとみなされれば課税対象からは外される。

ツイートでは「なぜ課税されるの?」といった疑問が出ている。

■自治体の所有物なら非課税

東京都内にはサザエさん以外にも多くの銅像が街に設置され、観光PRに一役買っている。これらへの課税状況はどうなっているのか。

たとえば、JR亀有駅周辺にある「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する「両さん」、京成金町線柴又駅の「男はつらいよ」の「寅さん」の銅像はいずれも葛飾区の所有物のため、「会社や個人が事業のために用いるもの」にはならず、非課税扱いになっているようだ。

サザエさんの像は商店街の組合が所有、維持管理もすると世田谷区との間で協定を結んでいるため「償却資産税」の対象になったようだ。

税法の規定を厳密に適用すれば銅像は課税対象になるようだが、地元の人たちの心情を考えると「美術品」に含めたり、区への所有者変更を検討するなど、対応の余地もあるのではないかとも思える。いつも明るいサザエさん一家も、この話を聞いたら少し暗いムードになってしまうかもしれない。