夢はふつう、その人の精神状態を表すと考えられています。人生上のできごとや、誰かとの関係性についての感情や、あるいは単純な記憶が、夢となって現れているというわけです。
けれども、身体の状態を教えてくれる夢というのも存在するようです。たとえば、実際には眠っているのに、夢を見ている内容を実際に身体で行動してしまう、「レム睡眠行動障害」と呼ばれる症状があります。この症状と、ある種の認知症とのつながりの可能性について注目した研究が、最近発表されました。
この研究は、米国神経学会の年次総会で発表されたものです。「レム睡眠行動障害」を起こす傾向があり、なおかつレビー小体型認知症の危険因子をかかえた男性は、この型の認知症にかかる可能性が5倍になることがわかりました。レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症のほかにも、それと似た似た症状であるパーキンソン病とも関連性があるとされています。
夢からわかる身体的な健康状態についての手掛かりは、これ以外にもたくさんあります。いくつかの例から、夢は癌を予知し、結核の危険を知らせ、心臓発作を事前に忠告までしてくれる場合がある、という人たちがいます。
ある種の夢の中にある手掛かりが、実際の身体的兆候を知らせていると解釈できるという説の科学的証拠は乏しいのですが、夢を見る回数が増えたり、内容が奇妙だったり、何度も繰り返されたりすることが、身体の健康状態を知る上で重要な意味を持ち得ることを示す証拠はいくつかあります。
熱と悪夢
具合が悪いという兆候を無視するタイプの人は、奇妙な悪夢を見て、夢と身体のつながりに納得できるかもしれません。米国の病院「メイヨー・クリニック」によると、体調不良が悪夢の引き金になることがあり、発熱を伴う場合は特にその傾向が強いそうです。身体からのメッセージに耳を傾けないできた人は、奇妙な悪夢を見た翌朝、身体が何を伝えたかったのかについて考えてみてください。
ストレスと悪夢
DoctorOz.comの記事によると、ストレスは時おり、飛行機に乗り遅れたり、大きな波が接近してきたり、といった夢で姿を現すことがあるようです。また、特別に奇妙な夢を見ることを通して、スローダウンすべきだということに気づく場合もあります。
血糖値と悪夢
WebMDの記事によると、糖尿病患者が血糖値の深刻な低下を起こした時には、悪夢やうなされるような夢を見る場合があるそうです(血糖値の深刻な低下状態は「低血糖」と呼ばれ、インスリンなどの薬物の過剰摂取によって引き起こされます)。
妊娠と悪夢
イスラエルの166人の妊婦に対して行われた研究では、精神的に苦しい夢を見る人ほど、産後の鬱にかかる可能性が低いということがわかりました。また、イタリアで行われた290人の女性を対象とした研究では、夢が長く(そして不快)であることと、陣痛の時間が短いこととの関連性が発見されました。
精神科医やセラピストを訪問すべき時もある
WebMDの記事によると、双極性障害は、一部の患者に妙に生々しい夢や奇妙な夢を引き起こすことが知られているそうです。また、ベトナム戦争から帰還した米兵に関する研究についての米国退役軍人省の報告によると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患う帰還兵の52%は、かなり高い頻度で悪夢を見ています。対照的に一般市民では、悪夢を頻繁に見ているのはわずか3%です。悪夢を見たり、非常に生々しい夢を頻繁に見たりする人は、医者に相談してみることを考えてもいいかもしれません。
[US版で2013年3月27日に掲載した記事を翻訳しました]
[Sarah Klein 日本語版:丸山佳伸/ガリレオ]
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