ロシア外相、北方領土を「日本に渡さない」 発言の狙いは?

ロシアのラブロフ外相は5月31日、日本とロシアの間で懸案となっている北方領土問題について、「我々は(日本に)クリル諸島(北方領土)を渡さない。平和条約(締結)を日本側にねだることもしない」と発言した。
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Russian Foreign Minister Sergey Lavrov speaks to the media after a meeting between Russian President Vladimir Putin and Japan's Prime Minister Shinzo Abe in Sochi, Russia, Friday, May 6, 2016. (AP Photo/Pavel Golovkin, pool)
ASSOCIATED PRESS

ロシアのラブロフ外相は5月31日、日本とロシアの間で懸案となっている北方領土問題について、「我々は(日本に)クリル諸島(北方領土)を渡さない。平和条約(締結)を日本側にねだることもしない」と発言し、北方領土問題でロシア側からは譲歩しないとする立場を示した。毎日新聞などが報じた。

ロシアの新聞「コムソモリスカヤ・プラウダ」のインタビューで、読者からの質問に答えたときの発言だ。ラブロフ氏は「第2次大戦で島が(ソ連に)移り、歴史にピリオドが打たれた」と述べ、北方領土が第二次世界大戦の結果ロシア領になったと日本側が認めることが交渉の前提だという考えを強調した

一方でラブロフ氏は、日本とソ連の国交を回復させた1956年の日ソ共同宣言について「平和条約締結後に初めて歯舞と色丹を日本に引き渡す問題について検討できると書いてある」と発言。その上で「ロシアは、ソビエトが負ったすべての義務に忠実だ」と述べた

■ラブロフ氏の狙いは?

日本とロシアの両政府は、5月6日にソチで会談した安倍晋三首相とプーチン大統領の合意に基づき、6月に東京で高級事務レベルの平和条約交渉を予定している。ラブロフ外相の発言は、9月の下院選前にロシア世論の動揺を抑える狙いがあるとみられる。また、日本側が安倍晋三首相とプーチン大統領の親密な関係を通じて領土交渉を加速しようとしていることを強くけん制するものという見方もある

ロシア側では30日、ロシア国防省の高官らが北方領土の択捉島と国後島を訪れ、軍の関連施設の整備状況を視察。時事ドットコムニュースによると、ロシアはオホーツク海での潜水艦運用や北極海航路のルート確保などのため北方領土を含む千島列島を重要拠点と位置付けており、6月に日ロ間の平和条約交渉を控える中での訪問は日本の懸念を呼びそうだと報じた。

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