これから夏にかけて出荷の最盛期を迎える夏野菜の代表の一つであるトマト。世界中で親しまれている野菜ですが、「生で食べる」のがポピュラーなのは日本ぐらいで、世界的に見ると加熱調理して食べることが多いそうです。
このトマト、完熟したものは柔らかくなってしまうので、傷めることなく上手に保存するのはコツがあるそうです。詳しい話を、野菜ソムリエプロの吉田謹子さんに伺いました。
トマトが赤くなると医者が青くなる
「トマトはアンデス高地が原産といわれ、日本で食用にされはじめたのは明治時代とされています。その後、昭和に入ってから本格的に栽培されるようになった、比較的歴史が新しい野菜の一つです。
『トマトが赤くなると医者が青くなる』といわれるほど栄養価が高く、風邪の予防や疲労回復、美肌効果のあるビタミンC、皮膚や粘膜、目の機能維持、細胞の成長・分化を助けるといわれるビタミンAやβ-カロテンなどが含まれています。
また、独特の赤い色素リコピンは、強い抗酸化作用があるといわれています」(吉田さん)
生で食べるピンク系、加熱調理の赤系
トマトには生食に向くものと、加熱調理に向くものがあるそうです。
「世界的には加熱調理して食べるのが主流です。そのため、日本では生で食べたときに食感と食味が良いものが品種改良されてきました。
たとえば一般的な大玉の『桃太郎』は生食用で、皮が薄くて全体的に色が白っぽく、酸味が少ないピンク系のトマトです。
一方、皮も果肉も赤く、うま味が強い赤系は調理用で、味が濃く加熱するとうま味が増す特徴があります。最近、赤系もたくさん出回るようになっています」(吉田さん)
トマトの上手な保存法
トマトは少し時間が経つと柔らかくなってしまいます。
「トマトは収穫後も追熟する野菜で、青いうちに採ってもしばらく置いておくと赤く甘くなります。そのため、購入してから時間が経つと追熟して柔らかくなりすぎてしまうということもあり、それがトマトの保存を難しくする一因です。
そこで、まだ青いトマトは追熟させながら保存、赤いトマトは過度に追熟しないように鮮度を適度に保ちつつ保存する必要があります。
まだ青いトマトは、水分が蒸発しないようにポリ袋に入れて10~15℃(冷暗所など)で保存します。
このときヘタを下にします。トマトはヘタの周りの果肉が固いので、ヘタを下にした方が圧迫に強く傷みにくいためです。こうして何日かすると赤くなり、甘みが出てきます。
すでに赤いトマトの場合は、過度な追熟を避けるため、ポリ袋に入れてしっかり口を閉じ、ヘタを下にして7~10℃(冷蔵庫の野菜室)で保存します。トマトは冷やしすぎると風味が落ちるので気を付けましょう」(吉田さん)
ちなみに、ウェザーニュースが実施したトマトの保存に関するアンケート調査では、「ヘタが下」という人が37%で、「ヘタが上」の22%を上回る結果でした。
気にしていないという人も4割いて、より傷みにくい状態で保存するために、今回紹介した保存法を試してみてはいかがでしょうか。
食べきれなければ冷凍を
「ヘタを取り除いてから皮つきで丸ごと冷凍できます。料理に使う際には水をかけるとつるっと皮がむけ、包丁でも切ることができるので非常に便利です。
トマトはサラダやパスタ、スープなど、料理の応用範囲が広いので、安くなっていた時などに買って冷凍してストックしておくことをおすすめします」(吉田さん)
栄養豊富なトマトを有効活用して、この夏の猛暑に備えましょう。
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