ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ主演の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、12月29日深夜24時50分よりテレビ東京にて放送されます。
韓国の社会的背景や文化が多く織り込まれた本作をより楽しむために、知っておきたい5つの豆知識を紹介します。
キーワードは「水石」「半地下」「ジェシカ・ジングル」「チャパグリ」「パク家の豪邸」です。
『パラサイト』簡単あらすじ
失業中の父と母、大学受験に失敗した息子ギウと美大を目指す娘ギジョンの4人家族のキム一家。半地下に暮らす彼らは「普通の暮らし」に憧れていました。
そんな時、ギウは友人から、IT会社を経営するパク一家の家庭教師の代理を務めてほしいとお願いされます。大学在学の証明書の偽造から始まり、ギジョンとともに様々な「嘘」を重ねることに。キム家の貧しい暮らしに変化が訪れるが、ある出来事をきっかけに事態は急展開します。
1.象徴的な「水石」
主人公のギウ(チェ・ウシクさん)は、友人から「水石(すいせき)」と呼ばれる大きな石をもらいます。水石は鑑賞用として飾るもの。友人は「財運と合格運」をもたらすとし、ギウに贈ります。
ギウはこの水石に対して、「象徴的だ」という言葉を残し、劇中に何度も登場しては重要な役割を果たします。そして、大雨により浸水したキム一家の半地下で、水石が水に浮かんでいるようにも…。自らを偽り「パラサイト」するキム一家をまさに象徴するアイテムとも解釈できます。
2.韓国に実在する「半地下」の歴史
邦題「半地下の家族」にも使われている「半地下」とは?
韓国では、「家」が人々のヒエラルキーや階層を表すと言われています。主人公キム一家が暮らす「半地下住宅」は、主に低所得者が住む、韓国の一般的な住居です。
韓国における半地下住宅は、防空壕にルーツがあるそう。BBCによると、南北朝鮮の対立から、朝鮮戦争やテロ事件などを経て、防空壕として地下室が作られるようになりました。当初は一般的な住居としては使われていませんでしたが、住宅不足が深刻化し、「格安物件」として貸し出し始めました。
ポン・ジュノ監督によると、低所得者層の約10%が暮らしているという統計もあるそうです。
さらに2022年夏に、首都ソウルを中心に大雨が降り「半地下」の住宅で暮らしていた人たちが亡くなったことを受け、市当局は、半地下での居住を段階的に禁止する方針を示しました。
3.妹が歌う「ジェシカ・ジングル」
ギウの妹ギジョン(パク・ソダムさん)がパク一家のインターホンの前で、自分の「嘘の設定」を暗記するために歌うリズムは、韓国でよく知られる「Dokdo Is Our Land」の替え歌です。
日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)をめぐり、その曲名通り、「独島は我が領土」だと歌っています。
映画のヒットをうけ、北米などでは、「ジェシカ・ジングル(ジェシカ・ソング)」として広まっているようです。ちなみに、Netflixでも配信されている人気の韓国ドラマ『賢い医師生活』などでも、ジェシカ・ジングルのパロディと思われるシーンが登場しました。
4.パク一家の「チャパグリ」は高級肉入り
『パラサイト』のヒットを受け、日本でも話題になった料理といえば「チャパグリ」。輸入食品を販売するカルディなどでも売られており、SNSで作ってみる人が続出しました。
韓国で一般的に売られている「チャパゲティ」と「ノグリ」という2種類のインスタント麺を混ぜ合わせて作る料理。庶民的なジャンク風料理ですが、パク一家ではそこに高級国産牛肉を入れて格上げすることで、「富裕層」感が表れていました。
5.あの「パク家の豪邸」、本当に買えるの?
有名建築士が建てたという、IT社長であるパク一家が住む豪邸。物語の多くはこの豪邸で展開されており、撮影に使われた多くは、セットとして作られました。
高い所にあるパク家の豪邸と、半地下にあるキム家の住居。その2つの対比を印象付けるかのように、劇中ではこの「高低差」をいかした演出が多く見られます。
衝撃的な展開を迎えたラスト、ギウは「いつかこの家を父のために買おう」といいますが、それは可能なのでしょうか? 映画サイトBANGER!!!のインタビューで、ポン・ジュノ監督は試算したところ「彼(ギウ)の平均年収だと、あの家を購入するのに547年かかる」と明かしました。