作曲などを数多く手がける音楽家の坂本龍一さんが10月25日、12月11日に全世界に向けてピアノ・ソロコンサートを配信することを発表したことが話題だ。
ピアノソロ公演はどのような形で実現されるのか。坂本さんのコメントとともに紹介し、がんと共に生きる坂本さんのこれまでの歩みを振り返る。
見せたいのは「演奏する坂本龍一」の姿
「Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022」の公式サイトによると、配信されるコンサートは生演奏でなく、演奏を事前に収録したものとなるという。
体調面などを考慮して1日に数曲ずつ収録された演奏とその映像を、十分な時間をかけて編集したものが配信される見込みだ。
収録が行われたのは東京・NHK放送センターの509スタジオ。坂本さんにとっては「YMO」として活動していた1980年代に何度も演奏や公開収録を行った思い出の場所という。
配信映像は約60分の演奏で、同日は109シネマズのプレミアムサウンドシアター「SAION」で全2回にわたってライブビューイングも開催される。
坂本さんはコメントで「ライヴでコンサートをやりきる体力がない――。この形式での演奏を見ていただくのは、これが最後になるかもしれない」と語っている。
がんとともに生きる坂本龍一さん、これまでの歩み
坂本さんは2014年7月に中咽頭癌の罹患を発表。
2015年には山田洋次監督作品「母と暮せば」とアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督作品「レヴェナント:蘇えりし者」の音楽制作で復帰したが、2021年に直腸癌の罹患を発表し、現在も闘病を続けている。
自身の音楽を通じて、社会にメッセージを届けている坂本さん。
2020年には映像配信サービス「dTV」で一夜限りのプレミアムライブ『Ryuichi Sakamoto: PTP04022020 with Hidejiro Honjoh』を無料生配信にて緊急開催した。「コロナに負けず、頑張ってほしい」 という意思による開催だった。
2022年3月、JR新宿駅南口でウクライナ侵攻反対を訴えるライブイベント「No War 0305」が開かれた際には「こんな理不尽なことが許されていいはずがない。世界中で何億人という人間が注視しているのに止められないもどかしさ。多くの人が何かできることがないかともがいている。僕もその一人だ」とコメントを寄せていた。